とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

全面戦争 !?

2013-12-08 23:59:43 | 日記
全面戦争 !?




グイド・レーニ (1575-1642) 「聖カエキリア」(1606) ノートン・サイモン美術館

 聖カエキリアはローマの殉教者で、音楽家の守護聖人。イタリア語ではチェチリア。2-3世紀ころの貴族出身の少女。ローマの貴族と婚約をした。婚約者とその兄弟ををキリスト教に改宗させ、洗礼を受けさせた。その結果、二人はローマの長官に処刑されてしまう。
 彼女は異教の儀式を拒否して、死刑を言い渡される。蒸し風呂で窒息死させる刑であったが、彼女は死なず、剣を三度降ろしても、彼女の首に傷がついただけであった。その後3日間生き延びて、貧しい人々に財産を分け与えた。
 絵画では、彼女はなんらかの楽器を持っている。これは結婚式の日に、様々な楽器の音に送られながら婚約者の家に向かったからである。カエキリアは音楽の守護聖人でもある。(「ヴァーチャル絵画館」より引用)


 ご縁劇場で突然起こった事件については新聞、テレビなどで全国に広く報道されました。佐久良はどうして襲われたのか、鈴木琢磨という俳優の怪我は、・・・などという内容でした。警察では本人を捉えた私たちも事情聴取されました。ところが、この事件の背景を私たちは知って、極度の恐怖に襲われました。
先ず琢磨の怪我の件ですが、救急搬送された県立病院では、焦げた衣服の割には火傷の程度がひどくなかったので、医師たちは驚いていました。側に居たスタッフたちの咄嗟の対応が良かったのか、それとも、神業を感じさせるバリアが瞬間的に張られたのか。私は個人的にはそういう風に思っていました。しかし、私は、彼の咄嗟の判断と勇気に感銘を受けました。私が側に居たとしてもああいう行動をしただろうか。そういう思いが私をずっと捉え続けました。病院には、真っ先にご縁美術館の坂本館長が駆けつけました。続いて華龍が着いて、間をおいて中村仙女が着きました。琢磨の両親も不安そうな顔で病室にいました。そうなるとマスコミもたくさん押し寄せ大変な混乱状態になりました。
 当の佐久良はしばらくみんなの前に姿を見せませんでした。取調べがあったにしても長すぎる感じがしました。ショックから回復するのに時間がかかったのだと個人的には思っていました。その間、犯人はどういう人物か、どういう犯行動機があったのか、ということについてマスコミはさまざまな記事を書き立てました。単なる熱狂的なファンの犯行というような内容を超えたものも出てきました。憶測が憶測を呼び起こして、あの夜の不思議な出来事と繋げて摩訶不思議な記事も出始めました。前の劇団の陰謀だという内容のものも出てきました。私もやきもきしていました。ところへ、三朗が電話してきました。

 お義父さん、劇団としても対応策を協議しました。当分の間、佐久良はこちらで保護することになりました。

 あっ、京都にいるのか。

 居ます、確かに居ます。しかし、それは誰にも言わないでください。

 わかった。・・・で、どういう事情を掴んだんだ。

 それは詳細には言えませんが、犯人の背後には前の劇団の団長がいることは事実のようです。愛情のもつれ、いや、いや、そんな単純なものではありません。事と次第によっては全面戦争になるかも知れません。

 何、戦争。

 ええ、・・・劇団創設以来から燻っていた勢力争いの火種がまた勢いを増して・・・。

 それと佐久良とどういう関係があるんだ。

 退団して他のテレビとか映画の方面に行けばこんなことにはならなかったと・・・。

 たまたま敵対していた劇団に移ったという・・・。

 まあ、簡単にそう片付けることも出来ませんが・・・。

 とにかく根が深い・・・。

 そうです。場合によっては無差別に・・・。

 そういうことになると、向こうの劇団の評判に傷がつくことに・・・。

 お義父さん、戦いには表に出ないものもあります。

 陽動作戦だけではない・・・。

 そうです。ですから、お父さんも何かの形で標的になる可能性があります。

 はははっ、俺は命はもう要らない、今まで何度も死んでいる。

 とにかく気をつけてください。

 それじゃ、二人の阿国のことは・・・。

 代役を立てることになりました。冒険でもありますが。

 誰を・・・。

 尾辻綾乃さんです。

 何!! 画家じゃないか。

 ええ、でも、市川劇団に所属していたこともあります。もう承諾していただきました。

 旨くいくかなあ・・・。

 新しい神話はもう動き出しています。必ず成功させます。

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