数年前のある時、碍子が私の命を守ってくれました。電線は気ままですから、何でも通します。よい電流でも悪い電流でも。雷は電信柱にとって大きな脅威です。夏の嵐の日、隣の電信柱に落雷しました。電信柱は裂けて燃え出し、電線が青光りを発していました。しかし、私のところの碍子は強い電流を私から遮断してくれました。しかし、かなりの衝撃がありました。私はそのため気絶してしまいました。
ふと気づくと私に異変が起こっていました。遠くのものがよく見えるし、周りの気配がびんびんと伝わってくるようになりました。予知能力とまではいきませんが、少し先の気配も感じるようになりました。そこで、例の不思議な少女のことに話が戻りますが、私は菜の花畑に埋もれるようにして立っていたその姿を認めたとき、何故かしら胸騒ぎがしました。その感情は少し大人になって改めて見たときに繋がってしまいました。不幸な物語、とか言葉としては浮かんできましたが、私の中ではもう確かな思いとして傾斜していくのをどうすることも出来ませんでした。
「風よ、鳥よ、電線よ、私に知る限りを教えておくれ」
私はそう呟きました。すると、また、あの日のように空が掻き曇り、風が吹き始めました。そして、稲光もときどきキラッと突き刺さるように鋭い舌を伸ばし始めました。
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