
著作者 gusdiaz
鳥が降りてきてから数分後、今度は山陰から二羽の鳥が飛び上がりました。私は、おやっと思いつつ飛んでいく方向を見つめていました。二羽の鳥は瞬く間に反対側の山陰に消えていきました。どうしたことだ。私は少し不安になりました。・・・もしかして。もしかして父親の鳥が娘を連れ去ったのかも知れない。娘を鳥に変えて、有無を言わせず・・・、というかその場のなりゆきというか、ともかく何かのきっかけで二人は意気投合したのかもしれない。父親の思いが娘に伝わり、そこで大変な出来事が起こったに違いない。
私は、母親の姿を見ました。母親は娘がなかなか帰って来ないので、山に向かって駆け出しました。悲壮な顔つきでした。
「さやか !! さやか !!」
えっ、さやか。さやか、さやか。・・・私は何度も頭の中で反芻しました。母親は山陰に隠れても叫びつづけていました。私は念力を集中して、山陰を透視する準備をしました。体中が熱くなってきました。すると、手前の山が消えて、山の裏側が見えるようになりました。滝が見えました。周囲は美しく紅葉していました。
母親は、滝つぼの前に佇んで、途方に暮れている様子でした。よく観ると、滝つぼの近くに小さなお堂があって、その中に墓らしきものが見えました。恐らく先祖代々のお墓が並んでいるに違いありません。私は、この母親が哀れに思えました。
「なんとかできないものか」
私は、しばらく思案していました。しかし、いい考えは浮かんできませんでした。
東日本大震災被災地の若者支援←クリック募金にご協力ください。