とぎれとぎれの物語

瀬本あきらのHP「風の言葉」をここで復活させました。小説・エッセイをとぎれとぎれに連載します。

16  白い蛇

2015-03-13 00:40:45 | 日記



 ある暮れ方、六地像さんが私に告げました。「今日、白いものがお前の足元から登ってくる。それを怖がって追い払ったりしないように」。私はどういうことが起こるかさっぱり分からないので、ただじっと待ち続けていました。「白いもの ? 何だそれは」そう呟いた途端、足元に絡み付いて登ってくる気配を感じたので、下を見ました。蛇だ !! 私は、ぞくっとしました。「おい、止めてくれ。私を何だと思っているのだ !!」


 「まさか、お忘れではないでしょうね」

 「誰だ !!」

 「ほほっ、私です。・・・京子です」

 「京子 ?」

 「そうです」

 「えっ、じゃ、姿を見せてくれ」そう言うと、蛇は次第に女に変身しました。

 「ああっ、京子 !!」

 「あの女に苦しめられているのを地下から見ていました。・・・私は子どもを殺したりしません。あの女の子ども、・・・そう、貴方の子ども。私は殺したりしません。病気で死にそうになったから、そのとき、子どものそばに私の幻を見た。・・・そうに違いありません」

 「私もそう思いたい」

 「思いたい ?・・・まだ疑っている」

 「いや、・・・つまり、・・・私も苦しいのだ」

 「苦しい ?」

 「苦しい」

 「ほほっ、それほどあの女が好きだった」

 「いや、別れたかった」

 「別れたかった ?」

 「そうだ」

 「子どもを産ませておいて、よくそんなことが・・・」

 「・・・」

 「あなたは電信柱、私は蛇。ほほっ、どっちもどっちですね。ほほっ」

 「何とでも言ってくれ」

 私がそう言うと、辺りの景色がぐるぐると回転し始めました。そして、遠くから鳥の鳴き声が響いてきました。

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