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朝方、私を呼ぶ声がして目覚めました。花りんはどこへ・・・。私は思いました。
見ると、なんと、大樹が道を挟んだ向こう側に聳え立っていました。白い幹がバラ色の光に包まれています。
「お父さん、ここで、私、ずっと見ててあげる」
「ええっ、ほんとに花りんかい ?」
「そうです。ここで生まれ変わりました。」
「妹の力だと思います」
「イモウト・・・」
「ええ、それからお母さんの力もあったかもしれません」
「私のような電信柱には、眩しすぎる・・・」
「もうどんなに怖いことが起こっても、お父さんが居なくなることはありません」
「しかし、私はいずれ朽ち果てる」
「お父さん、電線からなにか伝わってくるでしょう ?」
そう言われて私は体の感覚を研ぎ澄ましました。なんだ、これは !! 暖かい熱線のような電流が感じられました。遠くから流れてきている感覚でした。
「遠くのたくさんの電信柱が、お父さんを励まそうと・・・」
「繋がっている。暖かい。・・・ありがとう、皆さん」
私は、感謝の波長を送り続けました。
「しかし、くどいようだけど、私には根っこがない。いずれ朽ち果てる」
「はははっ、お父さん、そのために私は樹に変わったんです」
「どういうことだ」
「いずれ分かります」
花りんの樹の下に、いつの間にかさやかが来ていました。
「花りん、おめでとう。とうとうここに来てくれた・・・。ありがとう」
さやかの霊はそう囁きかけると、樹の回りを飛び始めました。私は、呆然とその姿を見ていました。
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