あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 瀬戸内海(昭和34年)_中国新聞社

2009年01月31日 | Weblog
2009年1月31日(土) この週末も、今年の冬らしく強風の一日。 瀬戸内の波は、1.5mの予報。
家のベランダから双眼鏡で海の状態をチェックすると、実際に強い風が吹いている様子。

妻に、『今日の昼は、ラーメンでも食べに行くか』
***
向かうは黒瀬の『味よし』さん。 人気のある店で、私も以前からのお気に入りだが、このところ足が遠のいていた。
今日は、中華そばと、中華そばに『餃子(4個)』と『おむすび』が付いたセットを注文。

餃子とおむすびは、妻と分け合って食べる。
ラーメンの方は、なんだか以前と比べて少し出汁の味が変わっているような気が。。。 妻も、こんな味だったっけ?と言っていたので、おそらく気のせいではないのだろう。
『ごちそうさまでした』
***
『どっか回って帰る?』 『せっかくじゃけえ、”がんす饅頭”でも買って帰ろうか!』
ということで、少し大回りにはなるが、安芸津経由で帰る事にした。

このがんす饅頭は、二重焼きなのだが、養蜂場がやっている店で作っており、クリームに蜂蜜が入っているのが特徴。
独特のコクのあるクリームがおいしく、うちの家族が好きなおやつの一つである。
***
家に帰り、午後はコーヒーを飲み、がんす饅頭を食べながら本を開く。
『瀬戸内海_中国新聞社』、上下2巻。 昨日、飲み会のため広島市内に出た時に古本屋に寄り、偶然見つけた古書。

古書店で開いてみると、島の暮らしや、工業、農業、水産業などなど、昭和30年頃の瀬戸内海の島々を新聞記者達が取材した記事が掲載されている。
瀬戸内シーカヤック日記で訪れている、生名島や弓削島、豊島、大崎上島などなど、身近な島々の昔の様子を知るには絶好の資料。
上下2巻で5000円と少し値は張るが、古書との出合いは正に一期一会。 これは買わねばなるまい! という訳で手に入れてきたものである。

少し読んでみると、昭和30年頃の瀬戸内の島々には、まだ電気が通じていないため自家発電やランプで生活していた島や、電話や電報もほとんど使えなかった島、白米だけのご飯は少なくて、芋や大根などを混ぜていたことなど、当時の生活の様子がよくわかる貴重な資料である。

昭和32年といえば、ほんの50年ほど前。 日本海を漕いだ古代人ツアーでも感じた事だが、この数十年、百年で、本当に日本の、そして日本人の生活は大きく変わったのだということを、再認識させられた。
***
また、下巻を開いて驚いた事は、『瀬戸内海』を読んで、という宮本常一氏の書評が掲載されていた事。
その一部を引用させていただく。
*** 以下、引用 ***
中国新聞へ『瀬戸内海』が掲載されはじめたのは昭和32年12月20日からであった。そのはじめに企画に付いてもきいていたが、多分牧歌的なものになるのではないかと思っていた。そしてまた精精(原文ママ)半年もつづけばよいのではないかと思っていたが、ついに1年をこえ、34年の1月14日に至って幕を閉じた。
その初め、私は熱心な読者であったが、中途でよむことをやめた。読みすてにできる記事ではない。また毎日すこしずつよむ記事でもない。(中略)
新ためて(原文ママ)『瀬戸内海』を読む気になったのである。(中略)まったく読みごたえのある読物であり、寝転んで読むような手がるなものではない。しかし3日の間、よみ出してよみ終わるまで、私をしばりつけてしまうほどのものが、この記事の中にひそんでいる。
それは単に面白いからではない。考えさせられるのである。考えさせずにおかないのである。(後略)
*** 引用終わり ***
瀬戸内シーカヤック日記で実際に訪れ、私が知っている現在の島々の姿と、この本に書かれている50年ほど前の島の姿を対比させながら読んでいる。
もちろん今では電気は本土から送られており、電話もつながっている。 橋がつながり、本土と陸続きになった島もある。
しかしその一方で、高齢化や人口減少、船便の減少、商店の閉店、農林水産業の経営の難しさなどの課題は、本質的に50年前と変わっていない、あるいは島によっては更に深刻度を増しているということも、この本を読む事で理解することができた。

この本は、宮本常一を3日間しばりつけた程の、中身の濃い資料である。
あるくみるきく_旅するシーカヤック。 私もこれまで旅した島々の様子や人々の暮らしを思い描きつつしっかりと読み込み、これからの旅の視点に活かしてみたいと思っている。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする