2009年4月29日(水) 船瀬温泉の近くにある公園の駐車場で目を覚ました。 車中泊二日目の朝。
午前3時。 まだ外は暗い。 風の音は聞こえず、クルマの窓から見る空には星が瞬いている。 静かである。
ラジオを聞きつつ、夜明けを待つ。 今日は、HORIZON日和佐ツアーの前に、昨日漕ぐことができなかった『蒲生田岬』を漕いでみるつもり。
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5時前。 しだいに明るくなってきた。 幸い風も上がってこない。
クルマから降り、ニヤックを降ろして海岸まで運ぶ。 着替えてパドルとレスキュー道具だけ持って準備完了。
5時5分。 日の出前に浜を出た。

ちょうど、港から漁船が出港する時間のようだ。 多くの漁船が連なるように海に出て行く。 漁師町の朝。
いくつかの小さな岬を越えて灯台が見える場所まで来ると、日が昇ってきた。 気持ちのよい朝。
灯台の方に近付いていくが、日が昇ると徐々に風が吹きはじめた。 北寄りの風。 強くならないうちに戻ろうか。
出発した浜に戻ると、1時間とちょっと。 ちょうど良い朝のお散歩ツーリングになった。
シーカヤックを再びカートップし、道具を片付け、着替えて朝食を摂る。
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さあ、HORIZONの日和佐ツアーへ出発だ!
今日のメンバーは、男性3人、女性2人、そして尾崎さんと私。 タンデム2艇とシングル3艇のツアーである。

カヤックが初めての人、海で漕ぐのは初めてという人も居られ、まずはパドリングのレクチャーからスタートした。
今日は北風が強い。 沖は白波が立ちはじめている。 ロックガーデンを岸ベタコースで楽しみながら進んでいく。
それにしてもこのあたりは眺めが良い。 ダイナミックでスケールの大きな景色。 海もきれいだ。 コバルトブルーで潜れば熱帯魚もいるらしい。 まるで、伊豆やケラマで漕いでいるような感じさえ受ける。
『ここ、良いですねえ。 最高! 来て良かったですよ』

風待ちで上がった浜には漁師さんも来られた。 聞いてみると、ヒジキをこれから採るのだそうだ。 でも今年はヒジキが少ないらしい。 やはり海は変わりつつあるのだろうか?
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しばらく待ったが、風は落ちず、白波は増えていく様子。 お昼ご飯を済ませた後、『ちょっと別の浜に移動しましょう』ということになり、漕いで来たルートを戻る。 途中では、尾崎さんの案内でシーカヤックで入れる洞窟探検も堪能。

風裏でポカポカと気持ちよい浜に上陸し、ゆっくりと休憩。 洞窟を散策したり、ビーチコーミングをしたり、四方山話にも花が咲いた。 楽しい一時。
午後2時半頃、ツーリングが終了。 『いやあ、ここは本当に良い場所ですねえ。 景色も良いし、海もきれい。 最高のエリアですよ。 声を掛けてもらって本当に良かったです。 ありがとうございました』 『じゃあ、気をつけて帰って下さい』
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徳島まで戻り、高速道路に乗って今治へ。 今治に到着したのが7時半過ぎ。
うーん、今から帰ったら10時過ぎか。 飯喰って寝るだけになるなあ。 せっかくだから今治に泊まって、気になっていた『今治焼き鳥』を食べて帰ろう!
ケータイを取り出し、ビジネスホテルを予約。 そして家に電話。 『今、今治まで帰ってきた。 せっかくじゃけえ、今晩はここに泊まって明日帰るわ』 『いうことは、焼き鳥を食べて帰るいうことじゃね』と妻。
『そうそう。 二晩の車中泊で疲れたし、四国に来てから外食もしとらん。 せっかく来たんじゃけえ、名物の一つも喰ってみたいし、今日はビジネスホテルに泊まって焼き鳥にするわ』
チェックインしてシャワーを浴び、フロントで紹介された『鳥林』さんへ。

まずは、なによりの大好物である生ビールで一人乾杯。 そう、今晩は四国遠征ツアーの打ち上げである。
ご主人に、『何がおススメですか?』と聞くと、『そやねえ、皮とせんざんき、それからレンコン』との事。 じゃあ、それ下さい。

おいしい焼き鳥を堪能し、大好きなビールをたっぷりと飲み、お店のご主人、そして横に座られた老夫婦のご主人との四方山話を楽しんだ。 最高の打ち上げ。
『ごちそうさまでした。 いやあ、美味かったです。 特に皮が気に入りました。 こんな皮、いままで食べた事ないですよ』 『ありがとうございます。 また来て下さい』
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事前に計画も立てず、出発した4月27日の朝の天気予報と気分で決めた今回の四国遠征。
今治の七五三ヶ浜、徳島の田井ノ浜、蒲生田岬、日和佐と、三日間で4カ所のエリアを堪能し、様々な出合いもあった。
コンビニのおばちゃん、田井ノ浜近くの浜で出会った元漁師さんと、漁港でお話を伺った漁師さん。 そしてHORIZONツアーでご一緒させていただいたメンバーの方々。
別件で電話した尾崎さんからのうれしいお誘いで、予定外の徳島まで足を伸ばす事になり、そして強い北東風を避けるため偶然訪れた浜で出会った元漁師さん。 その元漁師さんから伺った話で興味を持ち、歩いてみた湊町でお話を聞かせていただいた漁師さんなどなど、一つの出合いが次の出合いに繋がっていった。 これぞ、風来坊一人旅の醍醐味であり、すべては縁(えにし)である。
『さて、どちらへ行かう 風が吹く(山頭火)』 旅するシーカヤック、次はどんな旅が、そして出合いが待っているのだろうか?