雨の日、藤城清治美術館へ。館内は撮影禁止。入り口と敷地内の教会のみで写真を撮った。|藤城氏については、昔からいろいろな媒体で作品を目にしており、メルヘンな影絵作家とだけ思っていた。たしかに定番の妖精が登場する作品もかなりあるが、強烈に魅かれたのはメルヘンチックではなくシュールな作品群。「西遊記」「風の又三郎」「キリスト教」などのシリーズものを観るうちに、自分の瞳孔がどんどん開いていくのがわかる。作品の前から立ち去りがたくなることもしばしば。圧巻だったのは、震災関連シリーズ。とりわけ圧倒されたのは、気仙沼に打ち上げられた第18共徳丸の巨大作品。まるで自分も現場に居合わせたかのような気持ちになり、その痛ましさと美しさにため息が出る。|藤城作品を見ながら何度も思い浮かべたのは、今年1月に見た藤原新也の写真展のこと。藤原氏にも震災関連作品が存在する。影絵と写真だからもちろん手段は違うのだが、そのスケールの大きさや世界を見つめる鋭利的かつ慈悲深い視線がとてもよく似ている。思えば、藤原氏の写真展のタイトルは「祈り」だった。藤城氏の作品にも「祈り」が充溢していた。|ヤラレタ感が半端なく、勢いそのままにショップではがきを何枚も購入したが、いまそれを眺めても作品が放つあの神々しさはまったくと言っていいほど感じられない。ショップで画集も何冊か捲ったが、やはり「別物」だった。生の作品に向き合った時の衝撃は、記憶にしか残せない。だからこそ美術館での体験はかけがえがない。|藤城清治氏、御年99歳。遅まきながら、またひとり偉大なアーティストに巡り合えた。感謝。
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