世界の旋律
2011-01-11 | 詩
灰色の霧の循環地点
街角の石畳に影を落としてはならない
存在を証明してはならない
螺旋階段を昇った古びた建物の屋上にて
天体望遠鏡で星の運行を観測しようと試みたが
街のスモッグに阻まれて叶わなかった
重く垂れ込めた雲の下
世界は灰色に合成着色され
白黒の世界は他の色合いに極度に冷淡だ
建物の屋上から地上を俯瞰した
天体の位置が不確かで
この丸い球体が本当に地球と呼ばれる物なのかは
あまりあてに出来そうも無かった
ふと
耳元にフルートの音色が届いた
僕は立ち上がり
その細い音色に向かって屋上をぐるりと一回りした
誰かが旋律を奏でている
それはまるで
瓶詰の中の手紙のように
こちら側へ流れ着きあちら側へ漂流した
耳をそばだてた
向こうだ。間違えない
屋上の端っこで誰かがフルートを吹いていた
白いワンピースを着た女性だった
僕は地べたに座り込み黙って音楽に身を委ねた
そうして唯時間だけが流れた
いや、時間が止まったのだ
音が止んだ
女性が振り向いて不思議そうに僕を見つめた
キミ、ずうっとそうしているの?
うん。
何だか気恥ずかしくなって僕はポケットの煙草を引っ張り出した
音楽が好きなのかな?
わりとね。
長い髪の女性はとても痩せていて何故か裸足だった
ねえ、此処は地球なんでしょう?
女性は不思議そうに肩をすくめた
私達は世界と呼んでいるけれどね。
キミがそう呼びたければそれはかまわないわ。
あなたはいつもこの屋上でフルートを吹いているの?
そう。
朝と昼と夜にね。
どうしてフルートを吹くの?
だって。
女性は柔らかな微笑みを浮かべた
だって私が音楽を創らなければ世界が朝と昼と夜を間違えちゃうからよ。
もう長いことお日様が昇らなくなったのよ。
此処はね、世界なの。
物語の中心点なの。
灰色の街角は誰かの心象風景から想像されたのよ。
それは。
女性は僕を見つめて黙り込んだ
もしかしてこの螺旋階段の屋上は僕の心象風景なの?
彼女は頷いた
もうお日様が長い間昇らない時間の止まった世界。
色の無い物語。
あなたの世界よ。
まるで終末の予感がする世界
感情が極度に鈍磨した世界
色の無い世界
僕は煙草に火をつけた
昔はこうじゃなかった。
昔はね。今は灰色の壁と沈黙の世界よ。
キミ、色は好き?
嫌いじゃないよ、たぶん。
それじゃあ、
色をつければいいわ。
もちろん、焦らなくてもいいのよ。
あなたが色を見つけるまで、
私が音楽を奏でて世界に朝と昼と夜を伝えてあげるわ。
それが私の役割なのよ。
女性の背中から光の羽が広がった
彼女はまるで天使の様だった
大丈夫。それが私の役割なのよ。
女性は僕の頬に軽くキスをした
「美わしき悦びに満てる
真の魂は
穢れること無し」
フルートの音色が優しく世界に響き渡った
灰色の世界に
街角の石畳に影を落としてはならない
存在を証明してはならない
螺旋階段を昇った古びた建物の屋上にて
天体望遠鏡で星の運行を観測しようと試みたが
街のスモッグに阻まれて叶わなかった
重く垂れ込めた雲の下
世界は灰色に合成着色され
白黒の世界は他の色合いに極度に冷淡だ
建物の屋上から地上を俯瞰した
天体の位置が不確かで
この丸い球体が本当に地球と呼ばれる物なのかは
あまりあてに出来そうも無かった
ふと
耳元にフルートの音色が届いた
僕は立ち上がり
その細い音色に向かって屋上をぐるりと一回りした
誰かが旋律を奏でている
それはまるで
瓶詰の中の手紙のように
こちら側へ流れ着きあちら側へ漂流した
耳をそばだてた
向こうだ。間違えない
屋上の端っこで誰かがフルートを吹いていた
白いワンピースを着た女性だった
僕は地べたに座り込み黙って音楽に身を委ねた
そうして唯時間だけが流れた
いや、時間が止まったのだ
音が止んだ
女性が振り向いて不思議そうに僕を見つめた
キミ、ずうっとそうしているの?
うん。
何だか気恥ずかしくなって僕はポケットの煙草を引っ張り出した
音楽が好きなのかな?
わりとね。
長い髪の女性はとても痩せていて何故か裸足だった
ねえ、此処は地球なんでしょう?
女性は不思議そうに肩をすくめた
私達は世界と呼んでいるけれどね。
キミがそう呼びたければそれはかまわないわ。
あなたはいつもこの屋上でフルートを吹いているの?
そう。
朝と昼と夜にね。
どうしてフルートを吹くの?
だって。
女性は柔らかな微笑みを浮かべた
だって私が音楽を創らなければ世界が朝と昼と夜を間違えちゃうからよ。
もう長いことお日様が昇らなくなったのよ。
此処はね、世界なの。
物語の中心点なの。
灰色の街角は誰かの心象風景から想像されたのよ。
それは。
女性は僕を見つめて黙り込んだ
もしかしてこの螺旋階段の屋上は僕の心象風景なの?
彼女は頷いた
もうお日様が長い間昇らない時間の止まった世界。
色の無い物語。
あなたの世界よ。
まるで終末の予感がする世界
感情が極度に鈍磨した世界
色の無い世界
僕は煙草に火をつけた
昔はこうじゃなかった。
昔はね。今は灰色の壁と沈黙の世界よ。
キミ、色は好き?
嫌いじゃないよ、たぶん。
それじゃあ、
色をつければいいわ。
もちろん、焦らなくてもいいのよ。
あなたが色を見つけるまで、
私が音楽を奏でて世界に朝と昼と夜を伝えてあげるわ。
それが私の役割なのよ。
女性の背中から光の羽が広がった
彼女はまるで天使の様だった
大丈夫。それが私の役割なのよ。
女性は僕の頬に軽くキスをした
「美わしき悦びに満てる
真の魂は
穢れること無し」
フルートの音色が優しく世界に響き渡った
灰色の世界に