銀の首輪
2025-02-04 | 詩
黒猫のハルシオンが
気だるそうに銀のネックレスを悪戯している
僕は風に吹かれてぼんやりと煙草を吸った
煙が白線の様に清潔な青い空に流れていった
こういうのってさ、嫌いなんだよね、おいら。
ハルシオンが不服そうにネックレスを指さした
なんだかさ、
縛られているっていう状態がさ、おいららしくないっていうかさ。
大体、猫って自由さの中にその存在意義が定義されているのにさ、
甚だ不愉快だよね。
そう云って黒猫は銀の首輪を外し
気楽そうに煙草に灯を点けた
存在意義って?
少年だった僕に黒猫はしたり顔で話し始めた
あんたにだってあるだろう?
薄れゆく記憶の中でどうしても失いたくない大切なものがさ。
そういうの存在意義って云うのさ。
大切なもの?
そう。
追い求めて探しあぐねた誰かの影や
街角の歌
街灯の下の不穏な夢の名残たち
サーカスのテント
決して訪れはしなかったあのパレード
それらはね、銀のネックレスでは到底辿り着けない領域の出来事なのさ
ねえ、
風の丘への道順は何処へ消えたの?
僕の問いには答えず黒猫はビールの缶を開けた
僕等は風に吹かれ
ただ黙ってビールを飲んだ
大きな木の下で
ただ酔っぱらった
それはまるで遠い記憶の様だった
あんたの大切なものはなんだい?
急に想い出したようにハルシオンが呟いた
大切なもの
壊れ物
僕等の精神の危うい均衡
物憂げな物語
怠惰で怪訝な日常の羅列たち
おいでよ
記憶の君がくすくす微笑んだ
風の丘
熱気球に乗って旅立った彼女彼等の物語
わずか数秒の中に永遠を夢見たあの日
僕等は夜の子供たちだったのだ
おいでよ
他愛の無い造形で
描写した世界の模倣
銀の首輪を見つけたのは君だった
そうしてその鍵は永遠に見つからない
黒猫が楽しそうに微笑んだ
行くかい?
おいらと一緒に
永遠の旅に
ワインのボトルと煙草を持って
我々は旅に出たんだ、きっと
白い煙がたなびく向こう
あの永遠の領域に於いて
旅に出たのだ
きっと
繋いだ手を離さないで
どうか
お願いだから
気だるそうに銀のネックレスを悪戯している
僕は風に吹かれてぼんやりと煙草を吸った
煙が白線の様に清潔な青い空に流れていった
こういうのってさ、嫌いなんだよね、おいら。
ハルシオンが不服そうにネックレスを指さした
なんだかさ、
縛られているっていう状態がさ、おいららしくないっていうかさ。
大体、猫って自由さの中にその存在意義が定義されているのにさ、
甚だ不愉快だよね。
そう云って黒猫は銀の首輪を外し
気楽そうに煙草に灯を点けた
存在意義って?
少年だった僕に黒猫はしたり顔で話し始めた
あんたにだってあるだろう?
薄れゆく記憶の中でどうしても失いたくない大切なものがさ。
そういうの存在意義って云うのさ。
大切なもの?
そう。
追い求めて探しあぐねた誰かの影や
街角の歌
街灯の下の不穏な夢の名残たち
サーカスのテント
決して訪れはしなかったあのパレード
それらはね、銀のネックレスでは到底辿り着けない領域の出来事なのさ
ねえ、
風の丘への道順は何処へ消えたの?
僕の問いには答えず黒猫はビールの缶を開けた
僕等は風に吹かれ
ただ黙ってビールを飲んだ
大きな木の下で
ただ酔っぱらった
それはまるで遠い記憶の様だった
あんたの大切なものはなんだい?
急に想い出したようにハルシオンが呟いた
大切なもの
壊れ物
僕等の精神の危うい均衡
物憂げな物語
怠惰で怪訝な日常の羅列たち
おいでよ
記憶の君がくすくす微笑んだ
風の丘
熱気球に乗って旅立った彼女彼等の物語
わずか数秒の中に永遠を夢見たあの日
僕等は夜の子供たちだったのだ
おいでよ
他愛の無い造形で
描写した世界の模倣
銀の首輪を見つけたのは君だった
そうしてその鍵は永遠に見つからない
黒猫が楽しそうに微笑んだ
行くかい?
おいらと一緒に
永遠の旅に
ワインのボトルと煙草を持って
我々は旅に出たんだ、きっと
白い煙がたなびく向こう
あの永遠の領域に於いて
旅に出たのだ
きっと
繋いだ手を離さないで
どうか
お願いだから