秋
2023-10-08 | 詩
「なにか楽しいことがきっとあるはずなのよ。」
少女がはっか煙草をくわえながらぶつぶつ呟く
僕はグラスのワインをぼんやり眺めていた
いまは楽しくないの?
僕の問いかけに彼女ははげしく意義を唱えた
違うわよ。もっと決定的に楽しいこと。
まるで氷河期が終わりを告げた時くらい劇的な何かのことよ。
たとえば?
たとえば・・・。
煙草のフィルターをくちびるで噛みながら少女は考え込む
たとえば飛行船の遊覧飛行。
思いついたように呟く。
ゆうっくり空を泳ぐの、まるで太古の鯨のように。
だって夏が終わって飛行船は飛ばなくなったでしょう?
夏が終わるのが、
少女ははっか煙草に灯をつけた
夏が終わるのが大体早すぎるのよ。時間はいつだってそうよ、
はやすぎるのが難点ね
でも秋がくる。秋だってそう悪くない。
秋は嫌いじゃないけれど、夏の海水浴ほどじゃないわ
そうかい?僕は泳げないから秋のほうがすきだよ
彼女は酔っ払いの僕のたわごとを完全に無視した
とにかく何か楽しいことよ。
好奇心で全身をいっぱいにしながら少女は手足をじたばたとさせた
秋にはサーカスがくるよ
サーカス?
やっとまともに相手をしてもらった僕は話を続けた
そう、サーカス。
ブラッドベリの小説に出てきそうな
とびっきり幻想的な奴。
彼女は懐疑的な眼差しで僕の話を値踏みした
双子のブランコ乗り。
ピエロの玉乗り。
猛獣使い。ライオンと熊が二本足で挨拶するんだ。
それ、悪くない。
めずらしく僕のグラスにワインを注ぎながら少女は目を輝かせた
チケットはどうなっているの?
焦らなくても知らせが来る。月夜の晩に窓から外に出ればいい。
窓?玄関じゃなくて?
違う。この場合どれだけ非日常的で馬鹿馬鹿しいかが問題なんだ
そうして馬鹿馬鹿しいほど馬鹿馬鹿しい順にサーカスのテントに入れる。
なら問題ないわ。
彼女は嬉しそうに答えた。
昼間から酔いどれてるあなたの存在ほど馬鹿馬鹿しい人生はないもの。
もっと馬鹿馬鹿しいことなんてもっとたくさんありそうだけど・・・。
大丈夫。あなたほど馬鹿馬鹿しい動物なんてそうはいないわ、
確信していいわよ。
そんなに僕は馬鹿馬鹿しい存在なのだろうか?
グラスの赤いワインを舐めながら
だんだんと頭が痛くなってきた
とにかく。
サーカスが来るのね?
そう、サーカスが来る。
なら秋も悪くないわ。
少女は満足げに微笑んだ
ねえ、僕はそんなに馬鹿馬鹿しいのかな?
心配しなくていいわよ、褒めてるんだから。
ねえ。
今は楽しくないのかい?
僕の問いに彼女は笑いながらグラスで乾杯した
悪くないわよ。あなたの馬鹿馬鹿しい話。
月の夜ね?
そう、青い月の夜。
窓から出て行けばいいのね?
窓からだよ。
すべての始まりは窓辺から。
さあパレードだ
あの夜の向こう
そこでまた始まる
野良猫たちが空き地に集いパレードを祝って
すっとんきょうな声で云う
秋だ
少女がはっか煙草をくわえながらぶつぶつ呟く
僕はグラスのワインをぼんやり眺めていた
いまは楽しくないの?
僕の問いかけに彼女ははげしく意義を唱えた
違うわよ。もっと決定的に楽しいこと。
まるで氷河期が終わりを告げた時くらい劇的な何かのことよ。
たとえば?
たとえば・・・。
煙草のフィルターをくちびるで噛みながら少女は考え込む
たとえば飛行船の遊覧飛行。
思いついたように呟く。
ゆうっくり空を泳ぐの、まるで太古の鯨のように。
だって夏が終わって飛行船は飛ばなくなったでしょう?
夏が終わるのが、
少女ははっか煙草に灯をつけた
夏が終わるのが大体早すぎるのよ。時間はいつだってそうよ、
はやすぎるのが難点ね
でも秋がくる。秋だってそう悪くない。
秋は嫌いじゃないけれど、夏の海水浴ほどじゃないわ
そうかい?僕は泳げないから秋のほうがすきだよ
彼女は酔っ払いの僕のたわごとを完全に無視した
とにかく何か楽しいことよ。
好奇心で全身をいっぱいにしながら少女は手足をじたばたとさせた
秋にはサーカスがくるよ
サーカス?
やっとまともに相手をしてもらった僕は話を続けた
そう、サーカス。
ブラッドベリの小説に出てきそうな
とびっきり幻想的な奴。
彼女は懐疑的な眼差しで僕の話を値踏みした
双子のブランコ乗り。
ピエロの玉乗り。
猛獣使い。ライオンと熊が二本足で挨拶するんだ。
それ、悪くない。
めずらしく僕のグラスにワインを注ぎながら少女は目を輝かせた
チケットはどうなっているの?
焦らなくても知らせが来る。月夜の晩に窓から外に出ればいい。
窓?玄関じゃなくて?
違う。この場合どれだけ非日常的で馬鹿馬鹿しいかが問題なんだ
そうして馬鹿馬鹿しいほど馬鹿馬鹿しい順にサーカスのテントに入れる。
なら問題ないわ。
彼女は嬉しそうに答えた。
昼間から酔いどれてるあなたの存在ほど馬鹿馬鹿しい人生はないもの。
もっと馬鹿馬鹿しいことなんてもっとたくさんありそうだけど・・・。
大丈夫。あなたほど馬鹿馬鹿しい動物なんてそうはいないわ、
確信していいわよ。
そんなに僕は馬鹿馬鹿しい存在なのだろうか?
グラスの赤いワインを舐めながら
だんだんと頭が痛くなってきた
とにかく。
サーカスが来るのね?
そう、サーカスが来る。
なら秋も悪くないわ。
少女は満足げに微笑んだ
ねえ、僕はそんなに馬鹿馬鹿しいのかな?
心配しなくていいわよ、褒めてるんだから。
ねえ。
今は楽しくないのかい?
僕の問いに彼女は笑いながらグラスで乾杯した
悪くないわよ。あなたの馬鹿馬鹿しい話。
月の夜ね?
そう、青い月の夜。
窓から出て行けばいいのね?
窓からだよ。
すべての始まりは窓辺から。
さあパレードだ
あの夜の向こう
そこでまた始まる
野良猫たちが空き地に集いパレードを祝って
すっとんきょうな声で云う
秋だ