静岡県は2月14日、平成26年度予算案の概要等をようやく公表した。
例年どおり空港関係を中心に予算調書の公文書開示請求を行い集計の計画であるが、現時点では詳細な内容(議案書)は公表されていないので、公表された重点事業分のみ先行して行うこととした。(請求内容は文末に掲載)
さて、平成26年度の静岡県当初予算案であるが、予算総額は対前年比3.6%(411億円)増と近年では大きく膨らみ1兆1,802億円という規模となっている。額は増えても内容的には県勢の成長を期待させるような特筆すべきものはなく、事業・対象の名称の違いだけで他県に比べて独創的なものは見当たらない。内容的には、本県らしい前年踏襲型の予算である。
まず、予算規模の推移を見てみよう。
<当初予算額の年度推移>
見てのとおり、ある意味積極的投資に舵を切った来年度予算の増は、景況感の良さや消費税の増税による税収アップを見込んでのことであるが、一方で平成26年度末の県債残高は引き続き増加の見込みである。
<年度末県債残高の推移>
県は先行きについて安心感を与えようと、「税制の中期見通しと健全化への取組」を併せて発表し、その中で、平成25年度末に2兆6,852億円(見込み)の県債残高が5年後の平成30年度末には2兆5,988億円にまで減るとの推計を示したが、これまでの失敗の反省のない、まさに前例踏襲型のお役所的推計である。
これは、5年前の平成21年に発表された「税制の中期見通しと健全化への取組」の結果を見れば一目瞭然である。
<県債残高の実績と当時の予測(推計)>(今回予測との比較のため一般財源総額一定パターンの2経済シナリオに基づく予測をグラフ化)
当時は経済や財政の状況予測に合わせ計6パターンもの推計を行っているが、現実には、経済が底ばいの条件であっても、その下での推計をも上回る県債残高の増加を招いているのである。
静岡空港の需要予測に象徴されるように、役所は過去について批判的検証はできない、してはならない組織構造となっている。ゆえに経済環境や自然環境などの外部条件に責任を転嫁した形だけの理由付けで失敗の責任を転嫁するのが常である。これなら誰も責任を問われないからだ。
今回の「平成25年度末に2兆6,852億円(見込み)の県債残高が5年後の平成30年度末には2兆5,988億円にまで減るとの推計」は、特に役所のおざなりな仕事ぶりが窺えるものとなっている。
下のグラフは平成25年を起点(0)として、県が県債残高、県税収(単年度)、地方消費税清算金(単年度、グラフ中には地方消費税収と表記)がどのように推移(増減)すると推計したかを見たものである。
<H25実績(見込み)からの増減額の推移>
県は5年後の平成30年度末までに県債残高が864億円減るとしているが、一方で、県税収入は平成26年度に280億円、平成27年度に819億円、平成28年度には1,134億円、平成29年度には1,329億円、平成30年度には1,536億円今よりも増えると見ているのである(累計で見れば5年間で5,098億円の増収)。地方に配分される地方消費税の収入の見込みも同様に、平成26年度に213億円、平成27年度に700億円、平成28年度には802億円、平成29年度には859億円、平成30年度には920億円今よりも増えると見ているのである(累計で見れば5年間で3,494億円の増収)、を加えればこれが健全化(行政改革)によってではなく、税収の大きな伸び期待によって支えられたフィクションであることが分かるのである。
つまり、県はこのような楽観的というよりも無責任な見込みを根拠として、開港初年度の実績を大きく下回っている空港状況を無視し空港ビルの拡張工事などに大盤振る舞いを始めたということである。
企業収益の向上は為替の効果によるところが大きく、人口減少・高齢化が進むと見込まれる環境の中で今後県内経済の成長が右肩上がりと見るのはあまりに楽観的・無責任すぎる。そのつけは将来世代だけでなく、現役世代にも及ぶことは容易に想像できるだけに、空港建設が静岡県衰退への転換点であったとすれば、この展望亡き増額予算は静岡県衰退への推進点であったと後世に評価されるであろう。
【文末資料】
先行請求の公文書開示請求内容(主要事業分のみ)、(追記:2月17日付け請求完了)
「平成26年度県予算案中の以下の事業予算に係る予算調書類(平成26年度当所予算編成要領の「様式編」及び「その他様式編」に規定の文書(附表含む)並びにそのほかに予算査定に用いた文書のすべて)
<空港関係>4,619,075千円
大規模災害時における航空燃料確保事業費(危機政策課)7,400
国際防災協力関連事業費 (危機政策課)3,000
地域外交展開事業費 (地域外交課)76,600
海外駐在員事務所運営費 (地域外交課)199,400
空港管理・周辺地域振興関連事業費(空港地域連携課・空港経営課)3,447,000
空港利用促進関連事業費 (空港利用政策課)552,200
観光誘客関連事業費(観光振興課)266,400
県内企業海外展開支援関連事業費(企業立地推進課)67,075
<文化関係>3,748,100千円
「富士山」後世への継承推進事業費(富士山世界遺産課)160,000
富士山世界遺産センター(仮称) 整備事業費(富士山世界遺産課)181,000
韮山反射炉世界文化遺産登録推進事業費(富士山世界遺産課)9,200
ふじのくに件p回廊創出事業費 (文化政策課)84,200
ふじのくに件p祭等開催事業費 (文化政策課)120,400
美術館運営事業費(文化政策課)424,000
グランシップ管理運営関連事業費(文化政策課)889,000
グランシップ安全対策事業費(文化政策課)866,000
グランシップ大規模修繕事業費(文化政策課)617,400
件p文化普及事業費(文化政策課)89,000
舞台件p振興関連事業費 (文化政策課)307,900
<その他>488,400千円
天竜浜名湖鉄道支援関連事業費 (交通政策課)110,700
都市高速鉄道高架関連事業費 (街路整備課)377,700」
例年どおり空港関係を中心に予算調書の公文書開示請求を行い集計の計画であるが、現時点では詳細な内容(議案書)は公表されていないので、公表された重点事業分のみ先行して行うこととした。(請求内容は文末に掲載)
さて、平成26年度の静岡県当初予算案であるが、予算総額は対前年比3.6%(411億円)増と近年では大きく膨らみ1兆1,802億円という規模となっている。額は増えても内容的には県勢の成長を期待させるような特筆すべきものはなく、事業・対象の名称の違いだけで他県に比べて独創的なものは見当たらない。内容的には、本県らしい前年踏襲型の予算である。
まず、予算規模の推移を見てみよう。
<当初予算額の年度推移>
見てのとおり、ある意味積極的投資に舵を切った来年度予算の増は、景況感の良さや消費税の増税による税収アップを見込んでのことであるが、一方で平成26年度末の県債残高は引き続き増加の見込みである。
<年度末県債残高の推移>
県は先行きについて安心感を与えようと、「税制の中期見通しと健全化への取組」を併せて発表し、その中で、平成25年度末に2兆6,852億円(見込み)の県債残高が5年後の平成30年度末には2兆5,988億円にまで減るとの推計を示したが、これまでの失敗の反省のない、まさに前例踏襲型のお役所的推計である。
これは、5年前の平成21年に発表された「税制の中期見通しと健全化への取組」の結果を見れば一目瞭然である。
<県債残高の実績と当時の予測(推計)>(今回予測との比較のため一般財源総額一定パターンの2経済シナリオに基づく予測をグラフ化)
当時は経済や財政の状況予測に合わせ計6パターンもの推計を行っているが、現実には、経済が底ばいの条件であっても、その下での推計をも上回る県債残高の増加を招いているのである。
静岡空港の需要予測に象徴されるように、役所は過去について批判的検証はできない、してはならない組織構造となっている。ゆえに経済環境や自然環境などの外部条件に責任を転嫁した形だけの理由付けで失敗の責任を転嫁するのが常である。これなら誰も責任を問われないからだ。
今回の「平成25年度末に2兆6,852億円(見込み)の県債残高が5年後の平成30年度末には2兆5,988億円にまで減るとの推計」は、特に役所のおざなりな仕事ぶりが窺えるものとなっている。
下のグラフは平成25年を起点(0)として、県が県債残高、県税収(単年度)、地方消費税清算金(単年度、グラフ中には地方消費税収と表記)がどのように推移(増減)すると推計したかを見たものである。
<H25実績(見込み)からの増減額の推移>
県は5年後の平成30年度末までに県債残高が864億円減るとしているが、一方で、県税収入は平成26年度に280億円、平成27年度に819億円、平成28年度には1,134億円、平成29年度には1,329億円、平成30年度には1,536億円今よりも増えると見ているのである(累計で見れば5年間で5,098億円の増収)。地方に配分される地方消費税の収入の見込みも同様に、平成26年度に213億円、平成27年度に700億円、平成28年度には802億円、平成29年度には859億円、平成30年度には920億円今よりも増えると見ているのである(累計で見れば5年間で3,494億円の増収)、を加えればこれが健全化(行政改革)によってではなく、税収の大きな伸び期待によって支えられたフィクションであることが分かるのである。
つまり、県はこのような楽観的というよりも無責任な見込みを根拠として、開港初年度の実績を大きく下回っている空港状況を無視し空港ビルの拡張工事などに大盤振る舞いを始めたということである。
企業収益の向上は為替の効果によるところが大きく、人口減少・高齢化が進むと見込まれる環境の中で今後県内経済の成長が右肩上がりと見るのはあまりに楽観的・無責任すぎる。そのつけは将来世代だけでなく、現役世代にも及ぶことは容易に想像できるだけに、空港建設が静岡県衰退への転換点であったとすれば、この展望亡き増額予算は静岡県衰退への推進点であったと後世に評価されるであろう。
【文末資料】
先行請求の公文書開示請求内容(主要事業分のみ)、(追記:2月17日付け請求完了)
「平成26年度県予算案中の以下の事業予算に係る予算調書類(平成26年度当所予算編成要領の「様式編」及び「その他様式編」に規定の文書(附表含む)並びにそのほかに予算査定に用いた文書のすべて)
<空港関係>4,619,075千円
大規模災害時における航空燃料確保事業費(危機政策課)7,400
国際防災協力関連事業費 (危機政策課)3,000
地域外交展開事業費 (地域外交課)76,600
海外駐在員事務所運営費 (地域外交課)199,400
空港管理・周辺地域振興関連事業費(空港地域連携課・空港経営課)3,447,000
空港利用促進関連事業費 (空港利用政策課)552,200
観光誘客関連事業費(観光振興課)266,400
県内企業海外展開支援関連事業費(企業立地推進課)67,075
<文化関係>3,748,100千円
「富士山」後世への継承推進事業費(富士山世界遺産課)160,000
富士山世界遺産センター(仮称) 整備事業費(富士山世界遺産課)181,000
韮山反射炉世界文化遺産登録推進事業費(富士山世界遺産課)9,200
ふじのくに件p回廊創出事業費 (文化政策課)84,200
ふじのくに件p祭等開催事業費 (文化政策課)120,400
美術館運営事業費(文化政策課)424,000
グランシップ管理運営関連事業費(文化政策課)889,000
グランシップ安全対策事業費(文化政策課)866,000
グランシップ大規模修繕事業費(文化政策課)617,400
件p文化普及事業費(文化政策課)89,000
舞台件p振興関連事業費 (文化政策課)307,900
<その他>488,400千円
天竜浜名湖鉄道支援関連事業費 (交通政策課)110,700
都市高速鉄道高架関連事業費 (街路整備課)377,700」