空の欠片紅葉はもう始まっている 廃坑の青極まれり秋冷来 雁の列ほどなく消えてわが道行く 龍之介忌の絶望「悲しみが止まらない」 雁渡る第五福竜丸健在なり これが青春新宿ゴールデン街丸焼けに 宇宙のどこか晩秋の崖ばかり ピサの斜塔最も遠き星に冬(再録) 新宿二丁目秋燕の巣はすでになく(旧赤線地帯。現在オカマバーなどが立ち並ぶ) ミスター・ビーンは一級道路警備士なり
晩秋のここから血しぶきの上がりけり 避難民の傲岸な眼に紅葉す 西東三鬼はいつ戦っていつ死んだのか 地を打てり花撃てり人間の虚空つづく 蟷螂には蟷螂の人生傍観す 地上のどこか暗王の御旗ひるがえる 夢から醒め地上に星のあるといふ(中島みゆき「地上の星」) あと一個ミニチュアの富士雁渡る まぼろしの巷晩秋の打ち続く 秋深く回転木馬解き放つ 私の死いかほどのもの雁奔る
クロワッサンの唇に貼り付く文化の日 俳句結社の主宰文化の日はゴロ寝 猫とゐる時間文化の日と信ず 動物にたとえれば何ですか文化の日 開戦の日終戦の日そして文化の日 頬杖はつかない文化の日とは限らない 渋谷センター街ボーイズ・アンド・ガールズ文化の日 矢立初めの顔抜き看板文化の日(千住大橋脇) 人間コントロール技術文化の日 文化の日赤旗祭りの八代亜紀
鉄塔のてっぺん冬鳥の落下せり 鴨無数高速道路の捩れけり 秋思果つ東京の空に双子星 けらつつき鉄砲柱の大揺れに 老蝶の背負ふ巨大な巌かな 草の王はじけて我も無かりけり ファクスの君恋しゆえ君殺め 恋空とは春の泥なり再生す 太陽に溶けて大海冬ざるる 月まつる天国と地獄うすれけり
ハロウィーン少年を追ふ君を見た ハロウィーンの南瓜永久に欠乏す ハロウィーンの篝火人体照し出す ハロウィーンの「ウイスキーがお好きでしょ」 ハロウィーン去って行く子の背の白さ ハロウィーン芭蕉の一句花向けに ハロウィーン新宿どこも無音なり ハロウィーン猫化けてなほ人間なり 天使すぎる堀北真希とハロウィーン 十月跳ねてハロウィーンと邂逅す