鹿の目に点ずる逆光の色葉 江戸家子猫【夏井いつき添削済】 *NHK俳句(11/19再)より
昨日の日曜早朝のNHK俳句(再)を観た。司会は岸本葉子 選者に夏井いつき さらに、ゲストが声帯模写の江戸家子猫であった。ベスト10が発表され、続いて3人の上位3句と特選が発表された。最後に、ゲストの江戸家子猫の句が披露され、これに夏井いつきの添削が施された。原句は忘れてしまったが、木漏れ日や・・で始まる、兼題【鹿】との取り合わせの句であった。これに対して容赦なく、まず『木漏れ日や』が削られ、『逆光』『色葉』『鹿の目』がアレンジされた破調(自由律とも) の句が生まれた。こうなると、本歌取りでも添削でもない、夏井のオリジナルの一句に《全体》が転換されることになる。夏井は、番組途中で季語の使用について原則法に加えて【他の季語との取り合わせ】【無季と知った上で表現】の2方法を教示していた。掲句は、その3番目に相当し、『鹿』に季感は無い。新たな季語『木漏れ日』を省き、『鹿』そのものを『逆光の色葉』の中に描出した。夏井に期待したいのは、鹿という【季語】そのもの消失である。それによって導かれる近代俳句はおろか、俳句形式そのものの捉え直しである。そこまで踏み出せば、21世紀の新しい【定型詩】のアイテムもほの見えて来るに違いない。・・・《続く》