太陽の塔の空洞冬つばめ 思春期を二度鳴く鶏で押し通す ブコウスキーの知らぬ晩春の空ばかり 寒つばめ黙示録第三章独唱す 盆梅や父の死顔の幸福論 山本耀司の黒より紺が好き春愁 高柳重信忌の天使が街にやって来た ヘッドギアぽろりと龍之介忌となれり 木犀と木星ボーダー上の遊星群 初蝶来人類は何度滅びたか
人は誰もただひとり閑けしや 呆けてなほ散歩大事や春うらら 誰も走らず誰も語らず長閑なり うららかや火を継ぐ者は火だるまに 獄門台より誰かゴロリと春うらら スカイツリー天戸開きは麗らかに 老人ホームのパソコン教室春うらら 長閑さやトヨペットクラウン走りだす 長閑けしとあるのみ船長日誌捨つ ヘブライは戸来と化せり春うらら
春分の日のアバターの空白さます 人も柱も東京アンダーグラウンド1995(地下鉄サリン事件20周年) 彼岸晴れどの空からも鬨の声 どうにもならぬ死にあと一歩安部完市忌(2/19) おいてけぼりの春の鳥たちもう鳴かぬ 春焚火東京への原爆投下は未遂 ○に/の道路標識 春燕またも去る てけてけとめけめけ春空の遠ざかる 春服のほうほうの体で帰還せり テンプレートの「春眠暁を覚えず」誰か消す
お彼岸の空に雲があれば足りる パーラミータよ彼岸は喰って寝るところ スーパーの半値で彼岸の花を買ふ 猫たちの巨大な空腹彼岸入り 彼岸入りひょうたん島のひょっこりと 仏壇通りの空の仏壇彼岸入 春の彼岸そのまた彼岸をただよへり 彼岸西風なにねがうなくおもうなく 彼岸晴れ空のぱちんとちぢこまる 彼岸婆まさか母とはわかるまい 彼岸冷算盤の珠は縦ならび
春焚火徴兵忌避の人の群れ 肉体の破片(かけら)に春の鼓動あり アーユルヴェーダ人間がいて象を撃つ 鉄柵を越えて鵜飼の火だるまに リンカーネーション永劫の春の激しさよ 鉄塔の螺旋階段春つばめ 平家蟹の甲羅は真紅の影を持つ 春の雨は巨人の涙か未来がない 剪定やまさかの純愛成就せず 前の世もランニング一枚失踪す 春の闇誰もが鳩に餌をやる 白木蓮遣らずの雨にすすり泣く 沈丁花たった一言さようなら