マイクロ波飛ぶ春眠のとこしえに 黒白で眼がグリーンの冬猫を見ませんか 浅春の摂氏21度マダイキテルカ(3月17日) 仲春の火となり炎となり消えてしまえ 脳内の大森で三鬼の火事を見た 春火事は始末が悪いとささやけり 蟹味噌をストローで飲むろくでなし 採尿の紙コップに自分と違うもの 時給870円も人生の一指標オザキの忌 モバゲーのホトトギス句会負けたが勝ち 猿蟹合戦の猿とは人間のことなのか 春深む書を捨てよ街に出よとはいつのこと(妻を捨てよ街に出よ) 筆ペンを芭蕉に持たせ春逝けり 杉田久女がチャットレディならやってみたい
春闌けて永山則夫は生きている 世界の終りに得るもの多し春の底 白球の絶望春空に果てはなし 春の灯や誰もが路上の神となり 殉死は無用の貼り紙あふれ鶴帰る 初燕六本木五丁目人の濃し 囀りやローリング・ストーンズの黒く塗れ 今夜まだ1本足りぬ春の歌舞伎町 春泥にまみれてをんな空見上ぐ ゲバラの日記の結末として亀鳴けり
何も背負っていないのに魂が重い いつか突き抜けた青 突き抜けられなかった白 窓を開く駐車場がそこにあるだけの一日 アトランティス人が霞を食べていた理由 地球に降って来た男に人生は無かった 空がいくつもある晩春急がねば 煙突の根っこにある湯船に浸かる
サクラサク夢醒めやらずサクラチル 鳩を撃つ理由鳩だけが知っている 痛飲す銀打ちの男の真中で 肉まんじゅう生きた証を頬張れり レトルト粥喉元過ぎれば白熱す ザボン漬け南海の孤島で売られけり 人工の初音永遠の海抜ゼロ 東京都足立区綾瀬出奔す その銀盤「三島由紀夫の体験入隊」撃たれをり 大銀盤滝現れてビショ塗れに 819の日花鳥風月絶滅す 高浜虚子の死んだ日こんなにも遠くなり
泥人形の言葉を発す鳥雲に 誰か筆を芭蕉に持たせ鳥雲に 見た夢のつじつま合わず鳥雲に 若者の句に秘蹟あり鳥雲に 鳥雲に震災の日は歩き通し 鳥雲に入るたびわが身軽くなり 鳥雲に明日から人間の貌でいる 鳥雲にGPSシステム稼働せり 鳥雲に網棚に新聞見当たらず 山本リンダの「どうにも止まらない」鳥雲に