シベリアの獄いまは無し鳥雲に かつて地上は巨人の棲家鳥雲に メキタジン1錠で覚醒す鳥雲に ムー大陸の浮上見届け鳥雲に ゴミ屋敷に住む母のあり鳥雲に 万歩計のソーラー電池鳥雲に 鳥雲に俳人はいつ滅びしか 母の遺訓は全てを棄てよ鳥雲に 三島由紀夫の体験入隊鳥雲に スカイツリーに掌のあるごとし鳥雲に
復讐の民の片割れスミレ咲く これが俺の人生じゃないと永き日は 三月生まれの女マグダラで水を汲む イースター巨大な勇気ふり絞る 復活祭誰か虎さんに似ているか 夜半の春クレーン動かず空うごく 蝶の昼父は帰らずうすれけり 窓といふ窓こっぱみじんに鳥曇 夢に棲む少年涅槃で待ってるぜ 海を出て海に帰らずがうな鳴く 九州のどこかに巣箱と私の死 白木蓮とは木蓮の涙に他ならず
長谷川櫂はもう何も言うな震災忌 春寒しハーブにハーブ継ぎ足しぬ マジックミラーで覗く未来に俺はいるか どうにもならないマフラー春は寒過ぎる 震災忌とは死にそこないの青また青 薄氷のバリバリ風を閉じ込めている 東風吹かば粛々と芽立つなんてあるもんか とても切ない肉眼で見る晩春の俺の顔 おちこちに目醒めて百年の闇つづく 誰か太鼓を三陸鉄道の春は遅し 春ながらふすとーんと空の墜ちて久し 春愁の一つ目が通るまた通る 水音が聞こえる春田道真直ぐな
3.11の死の確かさを凝視せり 無謬なるもの大切に空うごく 綺羅星のぶちまけられて一本道 世紀の恋の一部始終をほふりけり 未熟ということ言葉にならず雲ながれ たましいの中心空洞に白髪婆 どうしても生きていたいと猫を追う フライパンのダンス誰もが生きている 火も空もただそこにある黙示劇 イスラムデー人間に杭打ち込まれ
マジックミラーで覗く未来に春はなし 人たりし一片の記憶春の闇 春疾風私の顔が砕け散る 春こんこんわが血は抜かれ塵となる そのことは誰にも言うな春告鳥 トンネルを抜ければ無風地帯がある 夢の続き渋谷109は円柱なり