秋の蚊やサルトルの嘔吐読んでみる 船団と呼んでも詮無し残る蟲 東京の死者0続きちちろ鳴く 蓑虫を虫とは思はず顕彰す 去る猫のやんごとなき飢え秋なかば マツコ・デラックス薔薇族(バラバ)の顛末聞いてみる キリストは三丁目の夕日知っていた 火を産ましめよ池田澄子は尽きていた ニュートラルは好まず涅槃図に飛び入りす 木守柿マダム・ブラバッキーの神智学 サルトルは157センチ梅真白 天国は無かったことに夕鶴忌(9月21日辺見じゅん忌) 神去月の貞操帯は重たかろ 猿岩石十日夜月は出ているか
序 俳句は形式であり、その形式は「空」である。その空なる形式を埋めるのが「様式」であり、その様式は変遷するが、形式は「空」だから滅びない。
人工島ツアーもう呼吸はしていない 三島忌の虚空はエイっとつかむもの 来る者は拒まずマグロの解体ショー 牛頭天王と思えば思うラムネ瓶 ラムネ飲む藤谷美和子を見た それから 濃りんどうあつめて人生を語り出す 泣くな妹よこんどは東京を捨ててみる 布団干すここがどこだかわからない 鳥獣戯画のズームアップに疲れている 夢の世の葱は暗くて蒼くて小さい 懸崖菊生まれるたびに流れをり 懸崖菊の崖のひとつに立ち竦む 俺だよ俺 私はいつも猫背でいる すすきはら高天原として淡し
大仰に足踏み鳴らす終戦日 薔薇族(イデア)とはハワイアン・センター遥かなり 萌えてみてはどうか冬蜂の死にどころ レイテ戦記まさかの勝利秋の蝶 ジャン・ポールの父はジャン・ポール秋深し(ジャン・ポール・サルトル) 菊花展人とも泥とも違うもの 生きしのち鮟鱇の虚空(そら)古びたり コスモスに続くコスモス茫とせり 石ころが空飛び回る報恩講 土でなくてはならぬ東北の鉦叩き カミオカンデ弁証法に理性なし ゴーリキーのどん底宙空にあったはず アカシアの雨降り止まず蘇生せり 朧月夜あき竹城のモンローよ
雲一つ無い青空とはこれ酉の市 一の酉マツコ・デラックスが歩いている 手締めまだ出来ぬ身の上酉の市 深みより光明覗く一の酉 蟻の大群いつしか我れも酉の市 裏表つらぬくあをさ酉の市 五郎丸が飛ぶように売れ酉の市 眼にするもの全てが句題酉の市 浅草は迷路のやうだ酉の市 酉の市跳ねて無数の夜空あり 浅草観音目と鼻の先酉の市 母すでに夢の中だけ酉の市 おかめ面の愛の巨大さ酉の市 AKB48の見たことのない景色酉の市 大熊手掲げて一番鶏が鳴く 浅草寺裏のネコカフェ酉の市