黙祷を1分東日本大震災(5周年) ただ寒いだけの一日ヤンシュ来る 母の死はなかったことに浮氷 受験生何やら白き言葉吐く 3月10日いちにち違いの青い空(東京大空襲) 家売って遊んで独り春深し 黄沙降る地底に虚空のあるごとし 日輪の一つは我れに聖母月 陰間(ほと)照らす電子シャワーの禊ぎかな 受難日の友ともならん青男 強東風のさようならの碑灯さねば 鳥帰る憲法改正不発なり 頑なに空を拒みし春の鴨 贖いのそろそろ来るか燕の巣 人間も鳥なる証し抱卵記
春の雨無人の関東平野あり 口笛ひゅーの男がふたり春の雨 セキュリティ・ゲートを抜けて春時雨 いつかきっと死ぬのに何だ春の雨 見る前に跳んだのだよ俺は春驟雨 池上彰のその時あなたは春驟雨 ある町の達磨神輿に春の雨(双葉町の自主映画『ある町』) 春の雨仮面を取れば夢の中 人間をやめて鳥になる春の雨 止むまでのジグザグ運転春の雨 病む母に幽けき空と春の雨 松たか子の「元気を出して」春驟雨
雛祭この世の地獄語りだす 雛壇の最上段を黒く塗れ アイエス曰く次はニッポン雛祭り 雛段の巨大で高くて暗くて青い どの雛も見て見ぬ振りを決め込めり 三月三日の三三九度よベッキーよ どの雛も刃秘めたる雛祭 雛壇に告ぐやられたらやり返せ 紙の雛大白身法継続す 雛壇のだんだん遠くなる叩き壊せ 雛の闇久月コーナーいまどこに 阿部定こそ雛壇の主たれ頭(たま)を取れ
三月十日ちちんぷいぷい飛んで行け 三月や最後のジャズ喫茶どこか 三月の揺れ永劫の揺れ空の下 三月や確定申告もうやめた 三月やⅩジャパンの夢はるか 三月や手のひら地蔵あといくつ 三月や山と積まれし離縁状 三月やマツコ・デラックスと生き別れ 三月やリンゴの唄が現実に 三月の死者鞭打たれプカプカと 三月のガイドマップに潜入す 三月の1パック100円の大たまご
遅き日の力づくなる流離譚 帝あり三百六十歩のマーチあり 地表には廃れし柿の鈴生りに 人類は未熟と知りてオゾン去る 打独楽の打たれし身空重たかろ 花莚押立て踊るポンポコリン ゲッセマネの夜空に集う老燕 夢の島すべての空に海市もつ うららかや頭上に防空識別権 更紙にプロトンザウルス曝しけり(成人向け漫画サイト) 皇紀元年ゴルゴダの丘俯瞰せり また生きて火垂の墓の炎上す