かどの煙草屋までの旅 

路上散策で見つけた気になるものたち…
ちょっと昔の近代の風景に心惹かれます

西尾市立図書館おもちゃ館/旧岩瀬文庫児童館(愛知県西尾市)

2011-12-11 | 西三河の近代建築

西尾建築散歩 その5~西尾市立図書館おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館)

西尾図書館玄関すぐ脇の緑の木立の中に、白ペンキ塗りの下見板に青い瓦屋根の可愛らしい小さな洋館建築があります。
建物に「NISHIO CITY おもちゃ館」の看板がかかっていますが、もともとはすぐ隣にある岩瀬文庫付属の児童館として大正14年に建てられました。
木造平屋建てのアメリカ下見板張り、コロニアル・スタイルの典型的な大正時代の洋館住宅らしい建物で、日本最初の児童館だといわれています。
建築当初は子供のための児童書の閲覧室として使用されたため、窓台の高さなども子供に合わせて低くつくられています。
現在は登録有形文化財に指定され、子供の室内遊戯場として使われながら大切に保存されています。

 










スタジオジブリのアニメに登場しそうなかわいい洋館


 

◆西尾市立図書館おもちゃ館(旧岩瀬文庫児童館)/愛知県西尾市亀沢町474
 竣工:大正14年(1925)
 構造:木造平屋
 撮影:2011/09/25
 ※国登録有形文化財

 


岩瀬文庫書庫(愛知県西尾市)

2011-12-09 | 西三河の近代建築

西尾建築散歩 その5~岩瀬文庫書庫

名鉄西尾駅の北西、町の中心部からちょっと外れた亀沢町に西尾市立図書館があります。
図書館の敷地内の中庭に、コンクリートの建物に囲まれ、まるでタイムスリップして現代に現れたような煉瓦造りの大きな蔵と木造下見板張りの小さなコロニアル様式の洋館が建っています。

煉瓦造の3階建ての蔵造の建物は岩瀬文庫書庫で、地元の実業家岩瀬彌助が明治40年に設立した私立図書館の書庫として大正9年に建設されました。
構造は土蔵造をそのまま煉瓦造にしたもので、外壁には常滑の陶栄株式会社の製造した小口タイルが貼られ、書庫にふさわしい堅牢な建物になっています。

◆岩瀬文庫書庫/愛知県西尾市亀沢町480
 竣工:大正9年(1920)
 設計:西原建築工務所
 構造:煉瓦造地上3階地下1階
 撮影:2011/09/25
 ※国登録有形文化財


コンクリートの現代建築に囲まれた中庭には明治の香りが残る煉瓦建築が建っていました
煉瓦タイル張りの外壁は現在も美しく茶色に白の御影石が映えます




煉瓦タイルの壁に御影石の窓台と庇にはキーストーン風の洋風意匠が施される
防火のため窓にも鉄製の扉をつけています





玄関扉も鉄製で上部の古典様式風装飾が重厚な外観を与えています




玄関前に建てられた説明看板




(株)愛三工業所/旧メソジスト西尾教会(愛知県西尾市)

2011-12-07 | 西三河の近代建築

西尾建築散歩 その4~(株)愛三工業所/旧メソジスト西尾教会

カテキン堂から301号線を300mほど西に向かうと、左手にこじんまりとした急勾配の三角屋根の建物が見えてきます。
明治30年にメソジスト西尾教会として建てられた教会建築で、現在は愛三工業所の施設として使われています。

大きな妻屋根に尖頭(ゴッシク)アーチの窓はいかにも教会建築らしく、1世紀以上前の教会が本来の用途を変え、取り壊されることなく現在も使われているのは非常に珍しいのではないでしょうか。
これからも愛三工業さんが、100歳越えの老建築を一日でも長く取り壊さずに活用していただくのを願うばかりです。


◆(株)愛三工業所(旧メソジスト西尾教会)/愛知県西尾市鶴舞町29
 竣工:明治30年(1897)
 構造:木造平屋
 撮影:2011/09/25

 


質素な外観ながら明治期の地方の教会建築の姿を今に伝える貴重な建物



教会らしいゴシック風の上げ下げ窓は木製の窓枠のままです



いかにも明治の建築らしい屋根飾りも健在




カテキン堂/旧西尾郵便局(愛知県西尾市)

2011-12-03 | 西三河の近代建築

西尾建築散歩 その3~カテキン堂(旧西尾郵便局)

西尾の町の中心にある古い商店街本町通りを通る301号線沿いに旧西尾郵便局の建物が現存しています。
大正8年築の木造2階建て、明治期に建てられた擬洋風建築のような外観で、正面に大きな破風の玄関を設けています。

2005年に訪れた時にはすぐ隣の中善楽器の倉庫になっていましたが、現在はカテキン堂という甘味どころとして再利用されていて、西尾の名産抹茶を使った大判焼きやソフトクリームなどが手軽に味わえます。
倉庫として余生を送っていた大正の建物が、もう一度表舞台で第二の人生を送れるようになり、誠に喜ばしい限りです。

◆カテキン堂(旧西尾郵便局)/愛知県西尾市鶴ヶ崎町4-9
 竣工:大正8年(1919)
 構造:木造2階建
 撮影:2011/09/25


建物正面(道路側)~2階の切妻破風に大きな窓をを設け明り取りにしています




建物西側~当時のままの下見板張りで木製のドアものこっています




建物裏側は一部トタン張りに改装されています




玄関はむくり屋根風で明治期の擬洋風建築を思わせます




玄関の屋根には戦前の郵便局によく見られる〒(逓信)マーク入りの立派な特注鬼瓦が鎮座しています




2階の屋根には一対のシャチ?らしきものが載っています
尾ひれがないのでまるでバナナがそそり立っているように見えますが、見ようによってはかなり危ない




隣に駐車してあった丸ポストを乗せた抹茶色に塗られた年代物のコロナ
店の宣伝カーとして使っているのでしょうか?

 


油勘商店(愛知県西尾市)

2011-11-30 | 西三河の近代建築

西尾建築散歩 その2~油勘商店

西尾小学校の東側、古い町屋の並ぶ須田町線の通りにひときわ目を引く瀟洒なタイル貼りの事務所が建っています。
玄関扉や窓枠がサッシに変えられ外壁も比較的美しく保たれているため、そんなに古い建物には見えませんが、昭和11年竣工の築75年になる近代建築です。
表通りに面した東側正面の外壁には全面タイルが貼られ、1階部分の腰壁は花崗岩が貼られています。
外観は平面的で端正なデザインですが、玄関廻りはテラッコタの装飾が施され当時流行の表現主義的な指向も感じられます。
古い町屋や商店が並ぶ通りで、ひときわ異彩を放つ昭和モダンな雰囲気を感じさせる貴重な近代建築です。

◆油勘商店/愛知県西尾市須田町64
 竣工:昭和11年(1936)
 構造:木造2階建
 撮影:2011/09/25







玄関廻りのテラッコタが見どころ



隣の伝統的な日本家屋と対照的なタイル貼りの洋風建築


西尾劇場(愛知県西尾市)

2011-11-27 | 西三河の近代建築

西尾建築散歩 その1~西尾劇場(旧竜城劇場)

今回、西尾の町を訪れるのは6年ぶりです(前回は2005年)
6年前と比べ取り壊された近代建築もありますが、どこか懐かしい西尾の町並みは以前のままで、ゆっくり町歩きを楽しめました。

愛知県西尾市は西三河南部に位置し、古くから松平六万石の城下町として栄えました。
名鉄西尾駅の西側一帯は旧城下町の中心部で、城下町特有の細い路地や昔ながらの町並みが残っていて、昭和レトロな商店や戦前の近代建築も数多く残っています。

最初に訪れたのは西尾駅のすぐ西側の花ノ木町に残る昭和の映画館です。
前回訪問時もかなり老朽化が進んでいたので、とりあえず建物を確認して一安心。
文献によると昭和15年岡崎公園の西側にあった竜城劇場を現地に移築、建築年は不明ですが元々は芝居小屋として建てられたため、回り舞台や花道、桟敷席なども設けられていたようです。
戦後は演劇だけではなく映画上映、歌手の公演などに使われるようになり、昭和43年からは映画館として営業されています。

◆西尾劇場(旧竜城劇場)/愛知県西尾市花ノ木町4丁目12
 竣工:不明~昭和15年(1940)移築
 構造:木造2階建
 撮影:2011/09/25

 


まさに映画の黄金時代を今に伝える昭和レトロな映画館
昭和40年代頃まではこんな映画館が日本各地に存在しました






『これでいいのだ 映画★赤塚不二夫』を6月25日から公開中らしいが?もう3ヶ月のロングランです
ちなみに看板は手描きです!ニャロメとチビタが懐かしい~



角柱が並ぶファサードはかなりの年季が入っています
色のはげた「西尾劇場」の文字に哀愁がただよう



入場券売り場~周りに貼られた豆タイルが昭和を語る

 


丸丈・愛知県農業総合試験所農機具試験室(愛知県安城市)

2009-05-19 | 西三河の近代建築

■丸丈(旧外国領事館員の公邸)/大正12年(1923)/木造
  安城市池浦町池浦87-2

外観はかなり改装されているので、ちょっと見には大正時代の建物とは思えません。


■この部分はオリジナルに近いのではと思われます。



■愛知県農業総合試験所農機具試験室(旧愛知県農事試験場農機具実験室)
  大正14年(1925)/RC平屋/安城市池浦町境目1


■歴史様式の装飾はほとんどなく、モダニズム建築への志向が見受けられます。
 鉄製のサッシュに合わせた外壁の目地が、建物を取り巻く帯のように見え、唯一外観のアクセントになっています。



安城農林開校記念館・神杉酒造(愛知県安城市)

2009-05-17 | 西三河の近代建築
■愛知県立安城農林高等学校開校記念館(旧安城農林学校農場管理室)
  明治36年(1903)/木造平屋/安城市池浦町茶筅木1

 シンプルな木造下見板貼りの白ペンキ塗りの建物で、当時の洋館に多く見られるアメリカ下見板貼りのコロニアル様式。
 下見板貼りを日本に導入したのは、19世紀末に北海道開拓のために招かれたアメリカの技術者で、アメリカ下見は全国に普及し、明治の木造西洋館のメジャーな建築スタイルとして定着した。


■窓台より下はアメリカ下見、上はドイツ下見と2種類の下見板の貼り方を使い分けている。
 アメリカ下見の部分は板が重ね合わせてある分、ドイツ下見と比べ板の幅が狭くなっているのが分かる。


■門柱も時代が感じられる。



■神杉酒造(株)/昭和12年(1937)/木造/安城市明治本町20-5




■神杉酒造前の洋館
 建設年代不明ながらスクラッチタイルや、木製窓枠に昭和の匂いが。


旧明治郵便局(愛知県安城市)

2009-05-16 | 西三河の近代建築

安城市の和泉町に明治44年に建てられた洋風の郵便局舎が保存されています。隣には和風の職員官舎も現存しており、明治時代の局舎と官舎が当時のまま現存する例は、極めて珍しいと言うことです。
 
■旧明治郵便局局舎・官舎(現悟葉館)/明治44年(1911)/木造平屋
  安城市和泉町上之切20-5


■下見板貼りの簡素な外観ですが、玄関屋根の軒先にはペンダント飾りが下がっています。


■妻飾りに〒の文様が浮き彫りにされています。


■純和風の職員官舎


■鬼瓦にも〒がデザインされています。


■旧郵便局近くの古い木造下見板貼りの建物


■窓ガラスの格子のデザインがステンドグラス風でモダンです。


■安城建設高等職業訓練校
 建設年代は不明ですが昭和20~30年頃の雰囲気が漂います。


■玄関の柱に豆タイルが貼ってあります。

撮影:2009/5/10



養生館・永田医院(愛知県知立市)

2009-03-25 | 西三河の近代建築

碧南市の帰りに知立で途中下車し、戦前の木造建築を訪れました。


●永田医院耳鼻咽喉科/知立市内幸町平田/建築年不明




街中ではほとんど見かけなくなったレトロな医院。



●養生館(旧明治用水土功会事務所)/知立市西町新田




知立神社の境内に鉄骨に支えられて建っています。
現在は集会所として利用されているようです。




養生館の前にぽつんとたたずむ二宮金次郎を見つけました。
最近はあまり見かけませんが、戦前からある古い小学校の校庭の片隅には必ず立っていました。
背中に背負っているのは薪(本当は柴:雑木の小枝)ですが、今の子どもたちは知らないだろうなあ~


山中従天医館(愛知県碧南市)

2009-03-23 | 西三河の近代建築

●山中従天医館/碧南市東浦町/昭和5年 設計:大中肇

 大浜警察署を設計した大中肇のライト式建築が碧南に現存しています。
ライトと言えば帝国ホテルに代表される大規模な建築を思い浮かべますが、プレーリーハウス(草原住宅)と呼ばれる独自のデザインの住宅作品も有名です。深い軒にゆるい勾配の寄棟屋根を載せ、軒先の水平線を強調し、その下に縦長の連続窓を配して流れるような連続的な動きを表現しています。
 山中従天医館も当時流行のライト式を採用した医院建築で、現在も建設当時の外観を保ったまま、80年にわたり大切に使用されています。オーナーの建物に対する愛情が感じられ、建物を通じてその人柄が伝わってくるようです。



◆全景(南東面)


◆深い軒先、ゆるい勾配の屋根、連続した窓などが独自の空間を創り出しています。


◆玄関には茶褐色のスクラッチタイルや、幾何学模様の窓枠などライト風のデザインが随所に使われ
ています。



            ◆◇◆東海地方のフランク・ロイド・ライトの作品◆◇◆

●帝国ホテル中央玄関/愛知県犬山市明治村内/大正12年
  
 20世紀建築界の巨匠ライトの帝国ホテル中欧玄関部分が明治村内に移築保存されています。玄関ロビーに立つと、天才建築家が表現した空間にただただ圧倒されます。
 ホテル全体が保存されなかったのは悔やまれますが、玄関だけでも保存されたのは、多くの人がライトの作品に触れるきっかけになりました。近代建築の文化的価値が現在ほど認識されていない1960年代に、移築保存を決断した当時の佐藤栄作首相に感謝です。


◆帝国ホテル玄関正面
 どこかの古代の遺跡のようでありながら、懐かしさが感じられる不思議な空間。


◆2階からロビーを望む
 薄暗い洞窟のような囲まれ感が心地よい。


◆スクラッチタイルと大谷石の彫刻、多面体の照明器具など、まさに唯一無二の「ライトワールド」が広がります。


石川鋳造・新川中央病院(愛知県碧南市)

2009-03-22 | 西三河の近代建築

●石川鋳造(旧大浜火力発電所)大正12年/碧南市中松町




 大浜港から臨海公園沿いに北へ向かうと2本の大きな煙突が見えてきます。当初は火力発電所として建設された建物ですが、現在は鋳造工場として再利用されています。南北の妻壁に竣工当時の岡崎電灯の社章がそのまま残っていて当時が偲ばれます。



●新川中央病院(旧私立新川中央病院本館)大正3年/碧南市松江町




 碧南市の北西部に古い病院が残っています。建物は屋根に和瓦を使った折衷的な外観ですが、玄関ポーチはトスカナ式オーダーの石柱を6本立てて思いっきり古典様式しています。強調された玄関ポーチがアクセントになり、端正な外観ながら医療機関にふさわしい重厚な雰囲気が演出されています。
 現在は西側に新病院が建設されたため、職員の施設として利用されているようですが、記念館として末永く保存されることを望むばかりです。


 

●全愛知県赤煉瓦工業協同組合/碧南市新川町/建築年不明


 名鉄新川町駅の西側に赤煉瓦の箱のような建物があります。玄関脇の表札を見ると「全愛知縣赤煉瓦協同組合」とあり、なるほど納得です。戦前物件らしいのですが、赤煉瓦が美しく、非常によい状態で使われています。


磯貝電機・大浜漁業組合冷蔵庫(愛知県碧南市)

2009-03-20 | 西三河の近代建築

●磯貝電機(旧名古屋相互銀行碧南支店)昭和12~13年


川を挟んで旧大浜警察署の北側にあるシンプルな外観の建物。
現在は会社の事務所として使われていますが、左右対称の端正な外観はいかにも銀行建築。
玄関周りの簡略化された装飾に、様式建築の面影が残ります。



●大浜漁業組合冷蔵庫(旧大浜製氷会社貯氷庫)昭和2年頃






旧大浜警察署を掘川沿いに下り、大浜港に出ると、レンガ造りの倉庫がぽつんと建っています。
周囲は白い現代的な建物ばかりなので、その赤レンガのレトロな建物はひときわ目を引き、港の風景に潤いを与えてくれます。
旧大浜警察署のように、地域の歴史的建造物として再活用が検討されているようですが、長い年月を過してきた古びた外観は味わい深いものがあり、このまま港の片隅で静かに時を刻む姿を見てみたい気もします。


旧大浜警察署(愛知県碧南市)

2009-03-18 | 西三河の近代建築

 春の陽ざしに誘われて、3月15日に碧南と知立の近代建築を訪ねました。

名鉄三河線の終点碧南駅で降り、大浜港を目指します。大浜港を望む大浜地区は、古くから漁港の町として栄え、現在も細い路地に板塀の続く古い町並が残っています。大浜港に近い堀川沿いに建つ旧大浜警察署は、大正13年竣工の鉄筋コンクリート建築で、玄関脇の八角形の塔屋が目を引きます。当時流行のセセッション様式を取り入れたデザインで、刈谷を中心に活躍した大中肇の設計と言われています。
現在は町の拠点施設として再活用されるためのリニューアル工事中で、外観も新しく塗り直されていました。




●建物全景 
 八角形の塔が大正時代のレトロな雰囲気を今に伝えます。
 左端に見える石柱にはバロメートル(気圧計)が埋め込まれています。




●漁に出る船が利用した、石柱に埋め込まれたバロメートル(気圧計)
 



●塔は潮見台とも呼ばれ、当初は火の見櫓としても利用されました。




●建物裏手(東面)には新たに庭も造られ整備が進んでいます。




●玄関脇には「大濱警察署」と刻まれた白い石のプレートが埋め込まれています。
 幾何学模様をモチーフにしたデザインは、大正から昭和初に流行したセセッションの影響がうかがえます。