名古屋市昭和区の地下鉄荒畑駅の北側、山脇町界隈を歩きました。どこにでもありそうな古い住宅街ですが、まだあちこちに昭和の香りが残っています。高度成長期以前の面影が残る町並は、日本の今につながる近代の原風景を見るようで、時間がたつのも忘れて歩き続けていました。
■戦前の古い住宅がまだあちこちに残っています
■丸窓がモダンな住宅
■玄関ドアが木製の古いアパート
■古い民家を利用した喫茶店「コメダ」(愛知県では有名なチェーン店)
■蔵がある街角の風景は落ち着きます
■右書きの戦前の水道局のプレート
第2回目100円古本ショップでございます。
今回もたった100円で、至福のひと時が過せる面白本を紹介いたします。
■東京ステーションホテル物語/種村直樹/集英社/1995年/定価1800円→買値105円
赤レンガの東京駅にあるステーションホテルについて、多方面にわたり綿密な取材をして書かれています。駅とホテルの歴史はもちろんのこと、ホテルゆかりのミステリー作品とともに、実際に宿泊した作家のエピソードなども紹介されています。近代建築はもちろん、鉄道とミステリーも大好きな私は大変楽しめました。
<松本清張と東京駅>
東京駅は多くのミステリーに登場しますが、特に松本清張が「点と線」で使った、東京駅13番~15番線ホームの空白の4分間は有名です。清張は「点と線」の連載が始まった昭和32年頃、東京ステーションホテルの客室を愛用しており、「点と線」の空白の4分間のプロットもこのときに思いついたのではと著者は推理しています。
最近は清張生誕100年にちなんで、映画やテレビドラマ化が盛んで、「点と線」はビートたけし主演でドラマ化されました。今年は「ゼロの焦点」が映画化されるようで、昭和30年~40年代が舞台の清張の作品が、半世紀を経てまたブームを迎えたのは面白いですね。過去にも映像化された作品はたくさんありますが、個人的には「張り込み」(昭和33年)、「ゼロの焦点」(昭和36年)、「砂の器」(昭和49年)がベスト3です。
昭和区桜山周辺は、戦前の洋風住宅がまだ比較的多く残っています。
その中でも和風住宅に洋風住宅が併設されているタイプは、比較的洋館の規模が大きく見所があります。
●洋風+和風住宅
洋館と和館が棟続きで、洋館が和館と同程度以上の規模のもの
■K邸/昭和12年頃/木造2階建
和館と洋館が並んで建っています。洋館は大きなアーチ窓が設けられ、タイル貼りです。
■H邸/昭和初/RC2階建
総タイル貼りで急勾配の大屋根に煙突が洋館らしさを演出しています。ドイツ人クンセの設計
●一部洋室住宅
洋館と和館が棟続きで洋館が和館以下の規模のもの。
大正~昭和にかけて開発された当時の新市街地(昭和、瑞穂、千種、天白区など)に建てられた、いわゆる文化住宅形式の住宅で、玄関脇に洋風の応接間を設けた。
■F邸/昭和初/木造2階建
グレーのドイツ壁に大きなアーチ窓、急勾配の赤の切妻屋根が映えます。
■陶生町の洋館
玄関部分をハーフティンバー風の壁にして、下部にマーブル調のタイルを廻しています。
洋館部分が前面に出ているので、洋風の雰囲気が強い外観になっています。
■玄関の横に一部屋だけ洋風の応接間を付けた、典型的な文化住宅タイプは結構残っています。
洋館までは建てられない当時の一般庶民の洋風生活への憧れが、小さな洋室にこめられているようです。
戦前からの古い住宅地も、マンションやハウスメーカーの金太郎飴的住宅が増え、古い洋風住宅は激減しています。そんな中で、古い洋館を残しながら改築しているお宅を拝見すると、嬉しくなってしまいます。
和風建築に西洋風の様式デザインをうまく取り込んだ古い住宅は、長い年月をかけて町並に馴染み、歴史的重みのある人に優しい自然な景観をつくりだしてくれます。
今回の探訪で、あらためて年代を刻んだ近代建築の良さを再認識できました。
平成12年に名古屋市は、近代建築の保存活用を目的として、市内の現存する近代建築を調査しています。その中に大正から昭和にかけての住宅開発群として、千種・瑞穂・昭和区の洋風住宅の現地調査があります。
今回はその時の現地調査の地図を片手に、名古屋市大病院の周辺を中心に、現存する洋風住宅を確認しながら歩いてみました。前回の調査よりほぼ10年が経過していますので、取り壊されマンションや駐車場、更地になっているものが多数ありました。現存する建物も改修や建て替えが多く、当時の外観を残しているものは半数くらいになってしまいました。
■市大病院西の洋風住宅/昭和5年
和風の外観ですが腰壁にスクラッチタイルを使用。
■洲雲町の一部洋館住宅
和風住宅に小さな洋館を設けたタイプで、主に応接間として利用されました。
一般庶民の洋風住宅の9割はこのタイプで、現存する洋風住宅もほとんどこのタイプです。
■汐路町の一部洋館住宅
和風住宅に小さいながら独立した本格的な洋館が付属しています。
■春山町の一部洋館住宅
「売物件」の張り紙が気になります。
このまま使われれば良いですが、取り壊しになる確立が高そうです。
■この十字マークの意味するところは?
4月12日(日)、春を通り越して初夏の陽気の中、名古屋市の天白、瑞穂、昭和区の洋館住宅を訪ねました。ついでにと言っては何ですが、国有形登録文化財の南山学園ライネルス館を撮影しました。
八重桜が満開で、ライネルス館のベージュの壁にピンク色の桜がひときわきれいでした。
■南山学園ライネルス館(旧南山学園本館)
名古屋市昭和区五軒屋町6
昭和7年(1932)
設計:マックス・ヒンデル
施工:大倉土木/RC3階建
■ライネルス館と桜並木
■ライネルス館正面
■建物上部の三角形(山型)の切込みが特徴。
■満開の八重桜
■正面玄関
■ライネルス館と棟続きの南山学園講堂
■講堂正面
■講堂玄関
■国登録有形文化財プレート
水木しげるの「ゲゲゲの鬼太郎」に出てくるこのキャラは、たいていさえないサラリーマンか、悪党二人組みのアニキの足を引っ張るドジな弟分です。
公共物への落書きは感心しませんが、発見したときは思わずにやりとしてしまいました。
採集場所:岐阜県坂祝町(2007年4月)
戦後になって180度変わったものに読み書きの方向があります。現在横書きは左から右が当たり前ですが、戦前は正反対の右から左でした。
戦後も65年になりますが、街角の古い看板や屋号に、まだ右から書かれたものを見かけることがあります。昭和20年の終戦以降、横書きはすべて左読みに統一されたので、右読み看板は日本が大転換した時代の生き証人といえるかもしれません。
しかしそんな時代の境界線をあらわす右読み看板が、街角から姿を消す日もそう遠くはありません。
■戦前のタバコ屋さんの看板(岐阜県下呂町)
下は戦後(昭和40年代頃)の看板(愛知県犬山市)
■タイル店
タイル店だけに壁面にも装飾タイルが(愛知県愛西市)
■紙専門店
電話二一九番が店の歴史を語る(岐阜県関市)
■再生病院
いかにも身体が回復しそうなネーミング(愛知県碧南市)
■消防信号ホーロー看板
火災現場の遠近を半鐘を叩く回数であらわした(滋賀県彦根市)
■防火用水
「水用」ではなく「用水」です。念のため(愛知県碧南市)
昔から本が好きでジャンルを問わず乱読してまいりました。
最近は散歩の途中で、大手古本チェーンの100円コーナー(税込み105円)で自分好みの古本を漁るのが楽しみです。
「えっつ、こんな本が100円!」と思わず叫びたくなる、わたしにとってのお宝本が結構見つかります。
と言うわけで、古本屋の100円コーナーで見つけたわたし好みの古本をご紹介いたします。
今回は3月に偶然2冊同時にゲットした、私の大好きな路上観察系の本をご紹介します。
■超日常観察記/岡本信也+岡本靖子/情報センター出版局/定価1400円/1993年
名古屋を中心に、フィールドワーク(考現学採集)に人生をささげるご夫婦の日常観察記録。
路上で採集したあらゆるものを、写真ではなく精密なイラストを使って分類してあります。
そのイラストが実に良い具合で、路上観察大好き人間にはたまりません。
■東京路上探検記/尾辻克彦+赤瀬川源平/新潮社/定価400円/1989年
1980~90年代にブレイクした路上観察系の本。
路上観察学入門、考現学入門、超芸術トマソンなどと一緒に読むと、日常の散歩の楽しみが増すこと請け合いです。
昭和30年代頃まで、豆タイルと言う2~3cm以内くらいの正方形の小さなタイルが良く使われました。
家庭の浴槽や洗面台、流し台などはその代表で、「となりのトトロ」のサツキとメイの住む家の浴槽も、豆タイルが貼ってありました。最近は一般家庭で豆タイルを目にすることはほとんどありませんが、街角の昭和の香りが漂うレトロな商店の軒先で発見できます。ショーウィンドウを引き立てるために、ツルピカのタイルは見栄えが良く、装飾用として好んで用いられました。
■煙草屋
タバコ屋のショーウィンドウには豆タイルが定番です。
■銭湯
銭湯とくれば、やっぱりタイルはつきもの。玄関にも豆タイルを使い銭湯気分を盛り上げます。
■靴屋
ちょっとした街角ギャラリーです。
■写真館
スクラッチタイルと豆タイルのコンビネーションが見事。
■喫茶店
昭和レトロな雰囲気が漂います。
愛知県犬山市の桃太郎神社では、大塚さん似の桃太郎に出会えます。
採集場所 愛知県犬山市/2006年7月
岐阜県養老町 2008年5月
愛知県犬山市 2009年2月