中央区との区境、山梨銀行と道路を挟んで向かい側に、魅力的な近代建築があります。1階部分は石貼り、2階以上はスクラッチタイル貼りのロマネスク様式の建物ですが、1階開口部のアーチやコリント式付柱の柱頭のさまざまな動物や人面の彫刻が素晴らしく、思わず足を止めて見入ってしまいます。
大正末~昭和初期にかけて、スクラッチタイルと同時にテラコッタ装飾が大流行しました。丸石ビルの玄関廻りには、様式建築の大きな魅力の一つである装飾がこれでもかとばかり施され、通り過ぎる人の目を楽しませてくれます。装飾皆無のインター・ナショナルスタイルとは真逆の丸石ビル。まさに「神は細部に宿る」という言葉通りの、見どころいっぱいの近代建築ファン冥利につきる近代建築です。
■茶系統のスクラッチタイルと連続するアーチで壁面を構成する典型的なロマネスク様式の外観
■6階(人造石洗出し)と頂部の同蛇腹(テラコッタ製)で外観に変化を与えています
■各種動植物のテラコッタ装飾が施された玄関廻り
石貼り部分は播州産の黄龍石や赤龍石を使用し独特の色調を出しています
■玄関脇には2頭のライオンがお出迎え
■アーチ廻りの動物たちを探すのも楽しい(わたしが確認できたのは、白鳥、ライオン、羊、鷲、など)
■玄関廻りはまるで動物園(ライオンの下でささえるヤギさんも忘れないでね)
■コリント式の付け柱の柱頭(キャピタル)には人の顔、リス、フクロウなどが刻まれています
■アカンサスの上にちょこんと座るリスは木の実を持っています
■美しい状態で保たれた建物に感謝。大洋商会さん、ありがとう!
■丸石ビルディング(旧大洋商会ビル)/千代田区鍛冶町1-6-10
竣工:昭和6年(1931)/昭和8年増築(1933)
設計:山下寿郎
施工:竹中工務店
構造:SRC造地上6階、地下1階
撮影:2017/08/11
※国登録有形文化財
動物のテラコッタ装飾といえば、かつて千代田区内幸町にあった大阪ビル一号館(昭和2年竣工)が有名です。
7階壁面には、ブタや鬼やライオンのテラッコタ装飾がズラリと取り付けられていました。(さぞや壮観だったことでしょう)
現在は建て替えられた日比谷ダイビルの壁面や隣の小公園に、解体時に救出されたブタや各種動物たちがひっそりと移り住んでいます。