今回は旧貞奴邸2階の紹介です。
2階の洋館部分は4つの部屋があり、郷土ゆかりの文学資料の展示室になっています。
◆階段を中心に部屋が配置されています
◆和室へ続く廊下
◆旧寝室
城山三郎(直木賞作家)の仕事場が再現されています
◆旧書斎のステンドグラス
◆旧支那室換気口
◆旧書斎の換気口と照明
~文化のみち二葉館探訪記~
今回訪れた「文化のみち二葉館」は、創建当時の姿に復元されていますが、洋館部分は移築というよりは、ほとんどの部分が新築されたようです。外観はきれいすぎて、どこかよそよそしく、テーマパークの洋館のようでした。せっかく本物の洋館を復元したのですから、時代の重みを感じさせる演出があっても良いのではと思いました。
わたしは10年ほど前ですが、取り壊される前の川上貞奴邸を訪れたことがあります。創建当時と比べると大幅に改修され、外観もかなり老朽化が進んでいましたが、古い建物には桃介と貞奴の暮らしていた頃の面影を十分感じ取ることができました。
建物の中に入ると、洋館部分は最新のディスプレイや展示物が並んでいますが、貞奴と桃介が暮らした頃の様子をうかがうものがほとんどありません。当時の二人の暮らしが偲ばれる家具や調度品を復元して、各部屋を再現すると言う演出もありではないかと思うのですが。
復元された洋館の大広間やステンドグラスより、創建当時のままの和室にある2畳の書斎に、貞奴の当時の暮らしぶりをうかがうことができました。和室の一番奥にある質素な小部屋には、貞奴が使った机や火鉢などが、当時のままの様子で置かれています。その小さな空間は、まるで彼女の隠れ家のようで、彼女が一番くつろげる場所であったことを肌で感じることができました。
創建当時からそこにある古い建物には、住人や、かかわった人々の記憶が刻まれています。人々はそこに歴史の重みと建物の持つ存在感を感じます。歴史的建造物を移築復元するということは、それにかかわった人々の記憶も一緒に復元しなければ意味がありません。
今回二葉館を訪れて、わたしは同じように明治村に移築復元された、森鴎外・夏目漱石邸を思い浮かべました。こちらは和風の質素な町屋ですが、玄関を入ると漱石が「吾輩は猫である」を執筆した当時の様子が、眼に浮かんでくるようでした。明治村に移築された建物は、歴史的建造物が持つ独特の重厚さと、雰囲気を大切にし、できるだけ手を加えず、当時のままの姿を再現しています。周囲の自然に溶け込みひっそりとたたずむ建物は、それだけで訪れる人に何かを語りかけてくれます。
二葉館が文化のみちの拠点として復元されたことは大変素晴らしいことですが、本物の洋館の魅力が伝わってこないのは、近代建築ファンにはちょっと残念でした。
※ステンドグラスに関しては、“名古屋のモダニズム/INAXBOOKLET”を参考にしました。
次回は撞木館を探訪します