
■ 前置き
平成29年、白山が開山1300年の節目の年を迎え、様々な行事が行われた。その一つが、白山を開山した泰澄大師ゆかりの地をめぐる「白山の三馬場めぐり」であった。
三馬場とは、加賀(石川県)の白山比咩神社、越前(福井県)の平泉寺白山神社、美濃(岐阜県)の長滝白山神社を指し、いずれも白山信仰が盛んであった当時の登拝の拠点であった所だ。
「白山の三馬場めぐり」自体は、車で回ると1日で終わった。一方、登拝の道である禅定道を歩くとなると、これは容易ではない。私は、禅定道のすべてを歩けなくても、現在も登山道として残っている、加賀禅定道、越前禅定道(白山禅定道)、美濃禅定道(南縦走路)だけでも歩いてみたいと思ったのである。
平成29年8月、美濃禅定道(南縦走路)登拝。同年9月、越前禅定道(白山禅定道)登拝。
平成30年9月、加賀禅定道登拝を計画も、台風のため撤退。
令和2年8月13~15日(今回)、加賀禅定道登拝で、漸く3つの禅定道を歩くことができた。
■ 今回歩いた道
1日目: 石川県道53号岩間一里野線一里野ゲート→ハライ谷登山口→檜新宮→シカリ場分岐→長倉山→奥長倉山・奥長倉避難小屋泊
2日目: 奥長倉避難小屋→百四丈滝展望台→加賀室跡・天池→四塚山→七倉ノ辻→大汝峰→室堂泊
3日目: 室堂→大汝峰巻道→七倉ノ辻→清浄ヶ原→小桜平避難小屋→楽々新道登山口→新岩間温泉
出発点の一里野ゲートの標高が610m、1日目に泊った奥長倉避難小屋が1711m。標高差およそ1100mを雨の中歩く。しかもアップダウンがあり、まさに修行であった。
2日目は目覚めたら快晴。気持ちよく出発した。標高2000mから上は天上の楽園。高山植物の宝庫。百四丈滝、四塚山、大汝峰など見どころ満載。
最終日の3日目は、標高2450mの室堂から2570mの千蛇ヶ池まで登り、その後標高800mの新岩間温泉まで楽々新道を激下り。七倉ノ辻から小桜平まで、4kmほどの間はお花が絶えることがなかった。
■ エピソード1
前日からの雨のため、石川県道53号岩間一里野線が通行止め。止む無く一里野ゲートからハライ谷登山口まで歩いた。

帰りは新岩間温泉から一里野ゲートまで、1時間半かけて歩くことを覚悟したが、同時刻に下山した登山者の車に同乗させていただいた。神様のようなお方であった。
■ エピソード2
1日目、雨は時に雷雨、土砂降り。登山道に滝のように水が流れた。雷を避けるため樹林帯の中で停滞。

大きなホオノキの葉も雨よけには役立たず。

ブナの木が雨水を集めて、太い幹を伝って地面に流れ落ちる様には驚いた。幹伝いに流れる水の量は、きっと読者諸氏の想像をはるかに超える。
■ エピソード3
加賀禅定道は途中に水場がない。奥長倉避難小屋で自炊することもあり、真水4L、野菜ジュース等飲料2Lを用意。ザックの重量は出発時17kg。
途中で水分補給し、ザックが軽くなるはずがならない。原因は雨でザックの中の衣類が濡れて重くなっていた。普段、衣類は防水のスタッフバッグに入れるが、旅行用のメッシュの袋(洗濯ネットのようなもの)に入れていた。結局、濡れた衣類を3日間運ぶハメになった。大失敗であった。
下りに使った楽々新道も水場がない。猛暑に備え室堂で真水4L、スポーツドリンク1L、お茶0.9Lをザックに入れ出発。途中の小桜平避難小屋で、1Lの水を捨て、最後は残った水を頭から浴びたりしながら下山したが、それでも2Lが余った。
■ 1日目に観たお花
●標高610~680m
・オオハンゴンソウ(キク科オオハンゴンソウ属の多年草)
外来種で特定外来生物に指定され、地域によっては駆除対象ともなっているオオハンゴンソウ。白山にも侵入しているとは恐るべし。

・クズ(マメ科クズ属の多年草)
晩夏から秋にかけて咲くお花。山はもう秋の気配。

・キンミズヒキ(バラ科キンミズヒキ属の多年草)
夏から秋にかけて咲く花。

・ヒメジョオン(キク科ムカシヨモギ属の越年草)
山野草に混じるとヒメジョオンも風情がある。

・キオン(キク科キオン属の多年草)
花期は8~9月。晩夏の花。

●標高680~1550m
・オトコエシ(スイカズラ科オミナエシ属の多年草)
花期は8~10月。やはり晩夏の花。

・ノリウツギ(アジサイ科アジサイ属の落葉低木)
花期は7~9月。かなりの標高の幅でたくさん咲いていた。

●標高1550~1700m
・ミヤマホツツジ(ツツジ科ホツツジ属の落葉小低木)
花期は7~8月。実際は9月にも咲いているのを見た覚えがある。白山で多く見かける。

・アキノキリンソウ(キク科アキノキリンソウ属の多年草)
花期は8~11月。Wikipediaによると亜種のミヤマアキノキリンソウと比較して、花は散房状で総苞片は4列であることが異なるが、中間型もあり厳密な区別は難しい。

・ミヤマアキノキリンソウ(キク科アキノキリンソウ属の多年草)
花期は8~9月。高山型のアキノキリンソウだが、厳密な区別は難しい。

・ミヤマコゴメグサ(ハマウツボ科コゴメグサ属の一年草)
花期は7~8月。高山に咲く植物としては珍しい一年草。下唇の形が図鑑とは少し違うようで、自信がない。

・カニコウモリ(キク科コウモリソウ属の多年草)
花期は8~9月。葉の形がカニの甲羅に似ているのが名前の由来。この辺りでは濃い霧のため画像がボケている。

・オヤマリンドウ(リンドウ科リンドウ属の多年草)
花期は8~9月。標高1700mより上でも数多く観た。晴天時にしか花は開かない。

・ヨツバヒヨドリ(キク科フジバカマ属の多年草)
花期は7~9月。多く見かけたが、全体的に盛期を過ぎた花が多かった。

・ツルアリドオシ(アカネ科ツルアリドオシ属の多年草)
※なつみかんさんに名前を教えていただきました(2020/08/18)。なつみかんさん、ありがとうございました。


・アカモノ(ツツジ科シラタマノキ属の常緑小低木。別名イワハゼ)の実

・シラタマノキ(ツツジ科シラタマノキ属の常緑小低木)の実

・ゴゼンタチバナ(ミズキ科ミズキ属ゴゼンタチバナ亜属の多年草)の実

・マイヅルソウ(スズラン亜科マイヅルソウ属の多年草)の実
実は熟すと深紅色になる。

・オオカメノキ(レンプクソウ科ガマズミ属の落葉低木)の実

・名前不明の木の実

・名前不明のイチゴの実

■ その他の写真
・ヒノキの巨木

・檜の新宮

・奥長倉避難小屋

「北部白山(加賀禅定道、楽々新道)を歩いてきました(その②)」に続く。
(翌日は驚くような好天になった。)