「北部白山(加賀禅定道、楽々新道)を歩いてきました(その①)」からの続きです。
■ 2日目の行程 (奥長倉避難小屋→美女坂→百四丈滝展望台→加賀室跡・天池→四塚山→七倉ノ辻→大汝峰→室堂泊)
・奥長倉避難小屋
前夜、避難小屋には他の宿泊者はおらず、ぐっすりと眠れた。
朝、小屋横で鳴るクマ除けの鈴の音で目覚めた。朝5時にもうここまで登ってきている人がいる。すごい!
窓の外を見ると、眩しいばかりの陽が差している。前日とは100%違う、文句なしの晴天。
・美女坂
避難小屋からすぐに、このコース一番の難所といわれる急坂に取り掛かる。当初からゆっくり登るつもりだったので、辛さはなかった。
足元にたくさんのお花が咲いていた(後述)。
振り返ると、歩いてきた山々が見えた(もっとも手前が奥長倉山)。
・百四丈滝
落差90m以上の巨瀑である。この滝から流れ落ちる水は尾添川(おぞがわ)となり、手取川に合流し、日本海に注がれる。
前日、霧で全く視界がない中、轟々と音を立てて尾添川を流れる水流が聞こえた。それは怖いくらい迫力があった。
しかし、禅定に入るとその音すら覚えがなくなった。
・加賀室跡・天池
室は、かつて登拝者が宿泊した場所・施設で、現在の白山室堂は越前室が置かれたところだ。白山信仰が下火となり、加賀室は使われなくなった。
加賀禅定道は、昭和9年の大洪水で一時廃道となっていたが、昭和62年に復元されている。
加賀室跡は、ゲートボール場程度の広さの平地を石垣が囲んでいて、盛期の名残が感じられる。ここにはゼンテイカが群生していた。
天池は水のない加賀禅定道にあって、貴重な水場だったことだろう。加賀室がここに造られたのも、そのためだったと思われる。
水は澄んでいて、煮沸すれば飲用できる。周辺にはハクサンフウロの群落が見られた。
百四丈滝展望台を過ぎてからは、お花が途切れることなく見られた。中でも、天池近くでは標高も上がり、お花の種類も数も増えてきた。歩き疲れて休むことに加え、写真を撮るため立ち止まることが増え、なかなか前へ進めなかった。個々のお花については後述する。
・四塚山(よつづかやま)
四塚山までは長い坂を登る。この坂の名前を長坂という。長坂の手前に「室堂まで6km」の標識がある。1時間半かけて坂を登り、次の標識を見たら「室堂まで5.5km」とあり、とてもがっかりした。
さあ、長坂を登り切った。振り返ると歩いてきた道と山々が見える。
そして、四塚山まではもう少しだ。上空には雲一つない。なだらかな道が続く。
目標の石塚が見えてきた。
そして、やっと着いた。四塚山、標高2530mだ。石塚が4つ(?)ある。
ちなみにこの石塚、一般的にケルンと呼ばれているが、ただのケルンではない。昔、強欲で猫好きな老婆と猫とを、高僧が一緒に封じ込めた塚だそうだ。登拝者が麓から石を運んで積み上げたともいう。これは、白山にない種類の石が多く積まれていることから裏付けられているようだ。とかく、昔話ではお婆さんは評判がよくないことが多い。
さて、目の前に、次の山が見えていた。
・七倉ノ辻
四塚山を越えると、北竜ヶ馬場といわれる草原を抜けての道は、気持ちがよい。道脇にはお花が途切れることなく続く。
七倉ノ辻は登山道が交差するところだ。左へ折れると、明日歩く楽々新道。右へ行くと、まだ行ったことがない釈迦新道(現在通行止め)だ。真っすぐに大汝山へ向かう。
振り返って、四塚山方面。
・大汝峰
七倉ノ辻から先は、さらにお花畑が続く。写真を撮るのに忙しい。
途中に御手水鉢(おちょうずばち)を通る。自然の岩の窪みに水がたまったものだ。振り返って四塚山を観る(振り返り過ぎか?)。歩いてきた道が見える。
また、途中、火の御子峰と地獄谷が見える。白山は活火山でもある。
大汝峰には巻道(山頂部を通らずなだらかに設けられた道)がある。勿論、山頂を目指す。
さて、頂上の避難小屋が見えてきた。
そして、大汝峰(標高2684m)登頂だ。
頂上から観る御前峰(標高2702m)と剣ヶ峰(同2677m)。
剣ヶ峰の右に見える山は乗鞍岳だろうか。
誰もいない頂上でゆっくりしたいところだが、室堂到着が遅くなるといけないので、先を急ぐことにした。
大汝峰から下りて、何度も振り返って山を観た。
千蛇ヶ池の残雪は、今年はかなり溶けている。空がとても青かった。
今日泊る室堂には、15時30分、予定通り無事に着いた。その後、すぐに夕食(自炊)を食べ、ひと眠りした。
日没寸前の御前峰。撮影好時を逃してしまった。
そして、室堂から夕陽を観た。
■ 2日目に観たお花
・オンタデ(タデ科オンタデ属の多年草)
木曾の御嶽山で最初に発見されたことからこの名がついている。雌雄別株で、こちらが雄花。
こちらは雌花。花期は6~10月。白山の岩場などでよく見かける。
・ウメバチソウ(ニシキギ科ウメバチソウ属の多年草)
花期は8~10月。珍しい花ではないが、白山で観たのは初めてかもしれない。
・シモツケソウ(バラ科シモツケソウ属の多年草)
白山ではよく見かける。
・カライトソウ(バラ科バラ亜科ワレモコウ属の多年草)
このお花も白山ではなじみ。
・アザミの仲間(キク科アザミ属の多年草)
白山に咲くアザミの種類は多いので、品種は分からない。
・モミジバカラマツ(キンポウゲ科モミジカラマツ属の多年草)
このお花も白山の各地でよく見かける。
・イワショウブ(チシマゼキショウ科イワショウブ属の多年草)
花期は8~9月で、花茎の上に花被片が6枚の白色、ときに淡紅色を帯びた花を総状につける。花の中心に雌しべが、その周りには花被片と同長の雄しべが6本つく。
白山で観たのは初めてかもしれない。
・ミヤマダイモンジソウ(ユキノシタ科ダイモンジソウ属の多年草)
・ミヤマリンドウ(リンドウ科リンドウ属の多年草)
花期は7~9月で、茎の上部に長さ15~22mmの青紫色の花を4個ほど付ける。花冠は5つに裂けており裂片の間に小さく副片がある。
晩夏の白山で、なじみのお花。
・ゼンテイカ(ススキノキ科キスゲ亜科の多年草、別名ニッコウキスゲ)
白山各地で見かける。
・ハナニガナ(キク科ニガナ属の多年草)
白山各地で見かける。
・ハクサンシャジン(キキョウ科ツリガネニンジン属の多年草)
白山各地で見かける。
・ミヤマキンバイ(バラ科キジムシロ属の多年草)
・ミヤマダイコンソウ(バラ科ダイコンソウ属の多年草)
・ミヤマキンポウゲ(キンポウゲ科キンポウゲ属の多年草)
・ミヤマアキノキリンソウ(キク科アキノキリンソウ属の多年草)
・タカネマツムシソウ(マツムシソウ科マツムシソウ属の越年草)
白山ではなじみのお花。
・イワイチョウ(ミツガシワ科イワイチョウ属の多年草)
・チングルマ(バラ科ダイコンソウ属の落葉小低木)
ほとんどが果実となっていた。花の群生も見られたが、登山道から離れていて写真は撮れなかった。ようやく、登山道脇に一つのお花を見つけた。
・ゴゼンタチバナ(ズキ科ミズキ属ゴゼンタチバナ亜属の多年草)
・ハクサンフウロ(フウロソウ科フウロソウ属の多年草)
このお花は、虫たちにとって一番の人気。
・ハクサンシャクナゲ(ツツジ属シャクナゲ亜属の常緑低木)
花期を過ぎているが、まだ咲いているものがあった。
・ヤマハハコ(キク科ヤマハハコ属の多年草)
白山ではなじみのお花。
・ハクサンボウフウ(セリ科カワラボウフウ属の多年草)
やはり、白山でなじみのお花。
・ヨツバシオガマ(ゴマノハグサ科シオガマギク属の多年草)
・イワギキョウ(キキョウ科ホタルブクロ属の多年草)
白山では標高の高いところで観られる。
・イワツメクサ(ナデシコ科ハコベ属の多年草)
白山では標高の高いところで観られる。
・クルマユリ(ユリ科ユリ属の多年草)
花期は7~8月。葉が茎の中央部で6~15枚輪生し、その上部に3~4枚まばらにつく。
白山の各地で観られる。
・ノビネチドリ(ラン科ノビネチドリ属の多年草)
今回は、ハクサンチドリ、テガタチドリは観なかった。
まだまだお花があったが、気づかなかったり、写真を撮りそこなったり・・
室堂周辺のお花は、到着後寝ていたので撮れてない(ごめんなさい)。
■ おまけ
・百四丈滝展望台の近くで見かけたチョウ。遠くへは飛ばず登山道脇から離れなかった。数分間を一緒に遊んで過ごした。
他に、アサギマダラを含めいくつかのチョウを見かけたが、写真は撮れなかった。
・加賀室跡へ向かう途中、ハート形の池塘を観た。この池塘はけっこう有名なのかもしれないが、私は知らなかった。この辺りもお花が多いところだ。
「北部白山(加賀禅定道、楽々新道)を歩いてきました(その③)」に続く。