思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『物語 ヴェトナムの歴史』 安南!大越!知ってる!!

2024-12-20 15:14:52 | 日記
『物語 ヴェトナムの歴史』
小倉貞男

中公新書の<物語歴史>シリーズのヴェトナム篇。
正直、ヴェトナムの歴史?自分には関係ないかな〜?
などと思っていました。
が、「安南」「大越」と書かれると、
途端に「中国史でよく見るやつ〜!!」となる。
勉強不足ですみませんでした。

そんなヴェトナム。
なんとな〜く、ず〜っと、中華帝国の一部だったり
朝貢関係にあったり、というイメージではある。
(あながち間違ってはいない)
が、面従腹背というか、意外としたたかに生き、
独自の文化を紡いでいる。
いいですね!

ヴェトナム人の始祖伝説をたぐっていくと、
中国でおなじみ「神農」と言われるらしいです。
その子孫が仙人やら龍やらと結婚して
100人子供が産まれて(百越)
(って、どういうことかよくわからん。百人兄弟なの?
「百越」という紀元前の国(群れ)の名前なの?)
第一子の「雄王(フンヴォン)」がつくった「文郎(ヴァンラン)国」が
ヴェトナム最初の国家だそうです。

そんな文郎国を西甌(たいおう)が滅ぼし甌貉(おうらく)国をつくり、
秦の始皇帝から派遣された趙佗(ちょうた)が甌貉を陥落させて
南越国を創建。
秦の後の漢は「南越ってうちの国の一部だよね!」と考える。
なるほど、もうわからん。

漢字のふりがながヴェトナム読みなので、
固有名詞がまったく覚えられない笑
貉(むじな)の音読みってなんだっけ〜!?と。
(音読みは「カク」だが、ヴェトナム語だと「ラク」と読むっぽい。
領主は貉侯(ラクハウ)、将軍は貉将(ラクトゥン)。
うむ、覚えられん)

えっと、なんだっけ。
ヴェトナム(ハノイ近郊)は、
西暦43年あたりから漢の直接支配下になって。
唐の時代には安南都護府ができた、と。それはわかる。
8世紀には中国留学中の阿倍仲麻呂も赴任しているそうです。
へえ。

939年、とうとうゴ・クエンが中国軍を破って独立(ゴ王朝)。
おお。おめでとう。
1009年にリ・コウ・アンから始まるリ王朝は初の長期政権。
一応、宋に朝貢したりして上手くやっている。
リ朝時代に孔子廟を建てたり、ヴェトナム最古の大学ができたり。
1225年にはチャン(陳)王朝スタート。
モンゴル(元)が3回も攻めてきてぼこぼこにされるが、
なんとか撃退する。すごいぞ!
チャン氏は元々は漁民で、艦隊が強かったようです。
元は日本でも船が沈んじゃったからなあ。
騎馬民族と水は相性が悪いんだな。

15世紀のレ朝時代、中国は明の時代。
相変わらず面従腹背。
南進して領土を拡げ、「ヴェトナムが最も発展した時代」だそうです。
16世紀はヴェトナム南北200年戦争。長い!
ケンカしてる場合じゃ無いぞ、世界は大航海時代で
帝国ムーブかましにあいつらがやってくるぞ!
というわけで1847年、フランス軍がダナン砲撃。
フランスの植民地支配時代が1世紀つづき、
1945年にホ・チ・ミンがヴェトナム民主共和国の独立宣言。
知ってる名前きた!

まあ、すぐには独立も統一もできず。
南部にヴェトナム共和国(サイゴン政府)ができ、南北ヴェトナム戦争、
1975年のサイゴン陥落によりようやく
現在も続く「ヴェトナム社会主義共和国」へと統一されます。

長かった…。
いあや、前半、漢字が読めなくてへこたれそうでしたが、
おもしろかったな。
そして大変勉強になりました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『イスラム飲酒紀行』 酒飲みの鑑であり、見習えない筆頭でもある

2024-12-19 16:06:25 | 日記
『イスラム飲酒紀行』
高野秀行

毎度おなじみ辺境探検家の高野さん。
こちらもインフルの名残で寝込んでいる際に読みました。
元気もらった笑
心身ともに疲弊している際には、
インゼリーと昼寝と高野本に限ります。

高野さん、通常運転だと年間数日しか休肝日のない
ほんまもんの酒飲みだそうですが、
(私もその点では仲間意識を持っている)
そんな酒飲みがイスラム圏に行った際のルポ。

いや、まあ、飲みたいけれども。
無いならしょうがないよ。
飲まないというか、飲めないでしょ。

と思った時点で私の酒飲み仲間意識は消え、
清々しい敗北感だけが残ったのであった。

飲むんだよなあ、高野さん。
いやもう、かっこいいよ。
普段のルポだとどんなに大変な目に遭っても
逆境に苦労しても、余裕があるというか、キレたりしない人がですよ。
お酒が無いだけで下戸の後輩に秒でキレてるんですよ。
お酒を売ると言って「ない」という現地人にも
キレ散らかすんですよ。
沸点低すぎ笑
いつもの不屈の探検魂はどこに行っちゃったのよ。

とはいえイランやシリアなど、
ちょっと複雑な状況下の国でも
現地の人と一緒にお酒飲むと(という状況に
たどり着くまでが大変なんだが)
意外な本音が聞けたり、発見があったり。
そこらへんはさすがである。

でもまあ、概ね、お酒を探して四苦八苦しているんだけど。
痺れるし憧れるけど見習えない笑

最高である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『物語 イタリアの歴史』 人生があると歴史に共感できるんだな

2024-12-18 11:45:31 | 日記
『物語 イタリアの歴史』
藤沢道郎

中公新書の<物語歴史>シリーズのイタリア篇です。
このシリーズで最初に読んだのは『物語 中国の歴史』である。
これは、とってもコスパの良く中国史を概観できる一冊なのですが、
強いて言うならば「物語ではない」のである。

そしてこの『物語 イタリアの歴史』では藤沢先生が
物語を紡ごうと正面から取り組んでいらしたので、
ちょっとびっくりした。
いや、こういうことですよ、企画主旨は。
びっくりじゃないのよ笑

というわけで10人の人生に絡めながら
イタリアの歴史をなぞっていく一冊です。
『ルネッサンスの女たち』でも思ったけど
生身の人間が垣間見えると、
歴史がめちゃくちゃ身近に感じられますよね。
おもしろい。

最初はローマ帝国の皇女ガラ・プラキディア。
フン族(超強い)が西進して、ゲルマン民族が大移動して、
ゲルマン系ゴート族にローマが悩まされる時代。
410年ローマ陥落(しょっちゅう陥落してないか?)

個人的には、第二章の女伯マティルデが興味深い。
この人はトスカーナ女伯で、カノッサの領主なんですよ。
聞き覚えがある地名!
ローマ帝国崩壊後は、イタリアは名目上は神聖ローマ皇帝の領土。
実質は伯が領有して代官支配をしている時代で、
マティルデは父が神聖ローマ皇帝と戦って敗れたり
色々と辛酸を舐めさせられたわけです。
恨むわけですな。
そんなマティルデと仲良し&崇拝しているのが
グレゴリウス7世で。
1075年、グレゴリウス7世と神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世
の間で叙任権闘争勃発。
とくれば、次は有名なアレです。
1077年、カノッサの屈辱。
なんでカノッサ?と思っていたけれど、
グレゴリウス7世は以前からトスカーナ伯の後見をしていたので
「謝りたければカノッサにいるからおいでよ」的な
ことだったようです。
マティルデの高笑いが見えるぜ…!!

グレゴリウス7世はこの後ハインリヒ4世に負け負けして、
ローマにノルマン人(すでに南イタリアでぶいぶい言ってる。つよ〜)
を引き込んでローマ略奪されて(ほら、まただ)、
人生の後半は逃げ回るハメになります。
あまり人をいじめてはいけないな。

あとは皇帝フェデリーコ(フリードリヒ2世のこと)の
シチリアにおける文化の開花、
作家ボッカチオを通じてのナポリ・シチリア事情から
(ナポリはフランス、シチリアはスペインに取られる)
北イタリアの自治都市国家が小領邦君主国家へ移行する時代へ。

14世紀は黒死病、15世紀はメディチ家の時代。
16世紀は宗教改革(1527年ローマ劫掠。ほんと災難)、
17世紀になるとヴェルサイユが最先端で
イタリア文化は流行遅れみたいな時代になり、
18世紀は啓蒙主義が大流行しつつナポレオン爆誕、
皇帝に就任したついでにイタリア国王も名乗る。そうなの?
で、フランス工兵隊の遺産である道路や橋梁、ナポレオン法典、
徴兵制などを活用してイタリア国家意識と近代化がようやく始まる。
(イタリア統一運動を「リソルジメント(覚醒)」と言うらしい。
どんだけボーッとしてたんだ)

1861年、統一イタリア王国宣言へ。

神聖ローマ帝国とか、十字軍とかの単位ではなく
イタリア半島の歴史という視点で見たことはなかったので
なんだか新鮮でした。
(ナポレオンってイタリア王だったんかーい、とか)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『英仏百年戦争』 100年かけて国家をつくろう!

2024-12-12 16:59:16 | 日記
『英仏百年戦争』佐藤賢一

昔々、英仏のあたりはヴァイキングに年がら年中
襲撃されておったそうな。
10世紀、フランスはノルマンディをヴァイキングに差し出して
陸に上がってもらいました(ノルマン人)。
11世紀、イングランドはノルマン系デーン人のヴァイキングに
ぼこぼこにされた挙句、デンマーク王がイングランド王を
兼ねる時代もありました。
うーん、ノルマン人強いわ…。

という話しではない。
英仏百年戦争です。

始まりはフランスのいち豪族である
ノルマンディ公ギヨームが、
ヘイスティングスの戦い(1066年)において
イングランドを征服してしまったことである。
やっぱりノルマン人強いな…。

(同時期に南イタリアに行く勢もいて、そっちでも
ぶいぶい言わせる。ノルマン人大移動!)

当時のイングランドは王国とはいえ田舎。
ノルマンディ公領の一部が「王国」みたいな状態で、
イングランド王なのにフランスに住んでフランス語を話しています。
そんなプランタジネット朝の有名人といえば
リチャード獅子心王(フランス名リシャール)。
ですが、英仏百年戦争で重要なのは弟のジョン失地王。
フランス領土を失地しまくった結果、
イングランドを本拠地にせざるを得なくなるという。
都落ちじゃあ…。

そんなジョン王から4代下って、エドワード3世。
フランスではカペー朝からヴァロワ朝へ代替わり。
エドワード3世のフランスでの立場はアキテーヌ公。
地元じゃ王様なのに。
母ちゃんフランス王の娘なのに(つまり俺はフランス王の孫)。
もうフランス王になってもよくない?

というわけで王位継承権を主張して百年戦争スタート。

歴史って突然始まるわけではなく、
それなりの積み重ねがあって始まるんだなあ、と。
コテンラジオで学びましたが、本題に入るまでがそこそこ長いね笑

あとはイギリスで人気の黒太子(ブラックプリンス)が活躍したり、
フランス王ジャン2世が優雅な捕虜生活送って
息子のシャルル5世が苦労したり。

後半に登場するヘンリー5世は、
もはやフランス語を解さない英語オンリーの
イングランド王。
狂王シャルル6世の娘と結婚したことで
フランス王の王位継承者となり、
百年戦争もここに終結となったそうです。
そうなの?!

シェイクスピア『ヘンリー5世』の影響だそうで、
作者はこれを「シェイクスピア症候群」と呼んでいます。
司馬史観みたいなものかな。

歴史を見れば英仏二重王国にはなっておらず、
もちろんヘンリー5世はフランス王ではない。
シャルル6世より先にヘンリー5世が亡くなっちゃったので
条約が反故になったんだな。
歴史の不思議よ。

で、ジャンヌ・ダルクが登場して退場して、
シャルル7世がノルマンディ、アキテーヌ占領。
百年戦争も終了!
うーん、長い戦い…。

当初はイングランドもフランスも「国家」という意識はなく、
軍資金の調達もできない有様。
イングランドはヘンリー5世がフランス王になりそびれた辺りで
アンチ・フランス、イングランド万歳的な流れで
ナショナリズムが誕生したそうです。
(この時期に、チョーサーが英語で『カンタベリー物語』を執筆。
ラテン語からも卒業し、英語が母語である意識も高まる)

フランスはもうちょい遅く、
ジャンヌ・ダルクが「フランスを救え!」と叫ぶ辺りで
ナショナリズムが芽生え始めたのではないか、と。

結論として、英仏百年戦争を通じて
イングランドとフランスは国家になったのだという話しでした。
納得感がすごい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『エレンディラ』 最後に老け込むのが良いんだよね

2024-12-11 13:10:52 | 日記
『エレンディラ』
G・ガルシア=マルケス
鼓直/木村榮一:訳

南米コロンビアのノーベル賞作家ガルシア=マルケスの短編集。
『百年の孤独』の後に書かれたので、
前作と共通する登場人物やモチーフもちょろっと登場。

が、私の記憶がポンコツなため、
『百年の孤独』の記憶がゼロである。
何が共通モチーフかはわかりません笑
読書メモを見返したら情報量もゼロで泣けた笑)

書籍紹介で「大人のための残酷な童話」と銘打たれていますが
どの作品も自然な語りで不思議が登場する。
海から漂う「バラの香り」や、カンテラに誘導される幽霊船、
海底で日々を営んでいる「沈んだ村」…。
「いま、ふつーの流れで人が溶けたよね?」
と、二度見(二度読み)する自然さで、不思議が常駐している。
たのしい。

どれもこれもタイトルが長いんですが、それも良い感じ。
表題作のエレンディラは略称で、本来のタイトルは
『無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語』。
冒頭の『大きな翼のある、ひどく年取った男』や
『世界でいちばん美しい水死人』も良い。
どちらも、想像以上にタイトル通りのお話しです笑

内容では『失われた時の海』が好き。
訳者あとがきで補足されていますが、
トビーアスとハーバート氏が海に潜った際に見かける海底村は、
フランスに似た民話があるそうです。
ガルシア=マルケスの祖母がスペイン・ガリシア地方出身。
欧州から南米への移住とともに、民話も移動しているのでしょうね。
おもしろいな。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする