思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『怪しいシンドバッド』

2024-12-10 08:54:36 | 日記
『怪しいシンドバッド』高野秀行

毎度おなじみ辺境ライター高野さんの
19歳から20代後半、若い時代の旅をまとめた一冊。
日本の所在地が『ワセダ三畳青春記』の頃でもある。

第一部第一章、
インドで知り合った青年に騙され荷物も財産もパスポートも
ぜーんぶ盗られるところからスタート。
初速がはやすぎる笑

第二章のアフリカ編は、
「なるほど!ザ・ワールド」のロケハンを手伝う
バイト時代のこと。
早稲田探検部にはそんなバイトがあるんだな…。
ガボンで入国拒否されたり、
コンゴでぶらぶらしてる間に諜報活動を疑われたり。
短い旅行記でも、エピソードが濃いのよ笑

私は最近の著作から読み始めたので、
高野さんは意外と中国に行ってないのかな?と思っていたのですが、
この本で何度も行っていた。
20代で履修済みだった。

異国トーキョー漂流記』に登場した達夫くんのお父さんで
大連の恩師・魯先生も登場。
というかこちらが初出か。
先生を駆り出して中国奥地でも野人探しをしています。
恩師の使い方よ…笑

個人的にいつか行ってみたい世界遺産・客家
(高野さん的には観光地化しすごて興味なかったエリア)
の話しがおもしろかった。
一族で住むから、社風ならぬ「楼風」があるとか。
「文化程度が高い」とか「酒タバコはやらない」とか。
いいなあ、行ってみたいなあ。

そして真逆の、個人的に行きたくないけど興味はあるのが
コロンビア。
幻の「ヤヘイ」という幻覚剤を求めて奥地まで行くのですが、
あらゆる人に真顔で「危ない」と止められながらも
ずんずん突き進む高野さん。なんでやねん。
読者の方がハラハラします。
挙句の果てには「あとは金の問題だけだ」って、
違うそうじゃない。
人の話しを聞け。

ヤヘイの記述よりも高野さんの言動の方が
よっぽどスリリングである。

そんなこんなで行きたい場所も行きたくない場所も
楽しく追体験させてくれるお得な冒険野郎の辺境探検記。

ちなみに私はインフルエンザに罹っている際に
療養のお供で読みました。
なんか元気出た笑
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『自然科学の歴史』 高校理科の通史

2024-12-04 12:50:24 | 日記
『自然科学の歴史』端山好和

自然科学の通史を、
宇宙・地球観の歴史/物質観の歴史/
技術の歴史/生命観の歴史
四つに分類してガーッと教えてくれる本です。

たとえば宇宙・地球観の始まりは、
バビロニア人の天体観測まで遡る。
紀元前2000年には、1年を360日とし、
1時間を60分、1分を60秒とした。
バビロニア人、すげ〜!!!
日食がほぼ18年周期であることも知っており
これをカルデア周期とも呼ぶ。
(カルデアは新バビロニア王国の人々のこと)

ギリシア・ピタゴラス学派になると、
宇宙は3つに分類される。
しかも「高貴と完全の程度を増す順」に並んでいるらしい。
なんそれ。
大地ウラノス、恒星区域コスモス、神々の住居オリンポス。
もちろん高貴なのはオリンポス。
宇宙は「幾何学的に完全な形」である球体、
天体は「完全な形」である円運動をする。
(楕円運動じゃない?と気づくまで数百年かかるのは、
 完全=円という「なんか正しそう」な意識から逃れられなかったから)

なにげにギリシア時代に地球球形説が提唱されてるんですよね。
それが一般知識になるのに1000年以上かかっちゃってる。
キリスト教のせいだな。

物質観でも、古代ギリシヤはすごくて
暇だったから数学や哲学ばっかしてたんだろうな)
「この世界の成り立ちの根源、すなわち原質は何か」
という問いをずーっと突き詰めている。
すごい(あまり褒めてない)。
いや、すごいんだけれども。
紀元前6世紀、タレスは水、アナクシメネスは空気と言い。
(ヘラクレイトスは万物は変化する派)
紀元前5世紀、デモクリトスが
分割(tom)できない(否定のa)もの=atom(原子)から成る、
と言いました。
おお、すごい!(ちゃんと感心している)
しかしアリストテレスが否定的だったので
原子論は栄えなかった。
このおじさん、そういうムーブするんですよ。ほんと迷惑。
(という「ゆる哲学ラジオ」の話しがおもしろいので是非)

1869年、メンデレーエフの周期律発見。
8番ごとに並べると化学的性質の似た元素が縦に並びます。
不思議だね。
そしてめっちゃ忘れてた(高校理科)。

1932年に中性子発見。
陽子+電子 = 中性子+ニュートリノ
めっちゃ忘れてた(高校理科)!

あとまあ、西洋は中国から遅れること数百年、みたいな
3代技術(羅針盤、火薬、印刷術)とか。

大航海時代に至って天文学→望遠鏡→光学技術→顕微鏡と
玉突きのように科学技術が進展するとか。

生物学での誤説「自然発生説」「前成説」とか。

ちょっとずつあちこちで齧った知識も、
知らなかった知識も、
きれいさっぱり忘れていた知識も、
いろいろな事がちょっとずつ整理できた気がします。

まあでも、理解度で言うと、
「私、ほんとに理系だったっけ…?」
と自分の学歴に疑問を持つレベルだと告白したい。
学生時代の勉強って、ほんと大事!大事だよなあ…。(しみじみ)
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『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』 情報量!

2024-11-29 12:19:18 | 日記
『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』
高野秀行×清水克行

『世界の辺境とハードボイルド室町時代』
意気投合しまくったお二人の第二弾。
ただ対談するだけだと二匹目のドジョウにしかならぬ
ってことで、お互いのオススメ本をテーマにした
読書リレーゼミみたいな形式に。

なんでハードル上げていくのか笑
その姿勢が好きだけれども。

全8回の対談を3ヶ月ごとのペースで開催したそうです。
イブン・バットゥータ(全8巻)とか、
3ヶ月で読み込んで来いと言われても無理でしょ。
いやもう、ドMだよねえ笑

以下、読書メモ

『ゾミア 脱国家の世界史』
ゾミアは民族ではなく、エリアの呼称。
歴史的に政府に属さない(もしくは支配が難しい)山塊を指す
地理学用語。
ゾミアは、高野さん曰く「アジアの納豆地域」と重なっているそう。
納豆本、まだ読んでないわ。読まねば。

『世界史のなかの戦国日本』
中国銭は平地より山間部の方が普及が早かったそうです。
直感を裏切る良い事実。
山間部では共通交換ツールである「コメ」がなかったからとか。
銭の普及については網野先生の本にもあったけれど
現代の常識から考えると謎の動きをしていておもしろい。
また、非日常的なものほど、流通範囲が伸びるという話しも。
(ラッコの毛皮みたいな珍品は交易距離が長い)
(貨幣の役割も担うコメは消費されちゃうので短い)
この本、おもしろそうだな。読もう。

『大旅行記』
イブン・バットゥータによる30年の見聞記。
全8巻!!
こんな機会でもなければ通読しなかったと
高野さんも清水先生もポジティブに取り組んでいて
ほんと偉いなと思います笑
イブン・バットゥータの出身はマリーン朝(現モロッコ)。
14世紀のインド・トゥグルク朝にも8年滞在。
トゥグルク朝2代目のスルタン・ムハンマドに仕えた。

あれ?
この人、コテンラジオのインド史で言及されていた
「銅でつくった貨幣を「銀貨」って言おう!」
「地図を格子状に割って農地にしたら税金増える!」
「豊かな土地は税金20倍にしたろ!」
とか言ってた“どうかしてるぜ”王じゃないか。

イブン・バットゥータのインド出国経緯も
「あいつやべえ」みたいな感じだ笑

『将門記』
日本で最初に書かれた軍記物。平家物語よりも太平記よりも。
平将門は939年に関東を平定して「新皇」を名乗った人。
そして日本で始めて獄門晒し首になった人。
いろんな日本初をやらかしておる。

『ギケイキ』
これは町田康による小説。『義経記』の現代版。

『ピダハン』
ピダハンは数の概念がない。時間感覚も持たない。
「直接体験の法則」で自分が経験したことしか話さないので
儀式・口承が成り立たない。
そんなピダハンの集落に行った伝道師件言語学者が
信仰を捨てる話し笑
あと、小ネタで
「懈怠」は今日やることを明日やる
「懶惰」は明日やることを今日やる、
という怠け方だそうです。おもしろ〜。
ブリコラージュ(器用仕事)はレヴィ・ストロースがよく言うやつ。
有り合わせのもので適当に道具をつくること。

『列島創世記』

『日本語スタンダードの歴史』
鎌倉以前は地方ごとの連なりが緩かったので言語風俗に「訛り」がきつい。
室町時代に流通が発達したことで、「スタンダード」ができるという話し。
時代はもうちょい後ですが、
伊達政宗は濁点がみっつだったそうです。
「だ」を書く際に、「た」に点をみっつつけるってこと。
で、朝鮮出兵で日本各国の武将と交わり、
「濁点ってふたつなのがスタンダードかも?!」
と気づいちゃったそうです。
以降、伊達政宗も「だ」が点ふたつになったとか。
なんか勿体無いな。

と言う感じでめちゃくちゃ情報量が多くて
お得な一冊。
これ、続けてくださらないものか。大変そうだけど。

ちなみにですが、この対談って
「ゆる言語学ラジオ」の水野さんの「ゾミア」「ピダハン」語りの
種本だよねどこをどう見ても(そして初出の時期を見ても)。
他人が隠していた(わけではないかもしれないが)ネタ帳を
読んでしまったような気恥ずかしさがあった笑
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『ジャムぱんの日』 良い意味でヘンテコな人だ!

2024-11-28 09:53:11 | 日記
『ジャムぱんの日』
赤染晶子

ちょっとヘンテコで面白い思考するタイプの
妙齢女性が頻出する短編集。
いや、エッセイか?
作者そのものか?

めちゃくちゃおもしろい人じゃないですか、
この作者さん!
なんで今まで知らなかったんだろ?

数ページ程度の掌編と言える小説(小噺)っぽいものから、
幻想エッセイ?嘘か真かわからないとぼけたエッセイまで。

表題作の『ジャムぱんの日』は凄く良い。
一応オフィスなのに、給水室にガスを引いてなくて、
そこで働く妙齢女性が勝手に脳内で「新婚ごっこ」を
延々とやってます。
何言ってんだって概要ですが、マジでこれ。
そしておもしろい。
天才か。

この作家さん、寡聞にして存じ上げなかったのですが
2010年芥川賞受賞とのこと。
確かにお名前の文字面だけ覚えている…。
うーん、こんなにおもしろい人だったとは!
読まねば!
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『温泉天国 ごきげん文藝』 温泉入りたい

2024-11-26 18:45:46 | 日記
『温泉天国 ごきげん文藝』

「ごきげん文藝」は、河出書房による
“おとなの愉しみを伝えるアンソロジー”。
その第一弾が、温泉にまつわる随筆を集めた『温泉天国』。

掲載順は、温泉地を北から南下しているっぽいかな?
どう読んでも良い並びだなと捉えてつまみ食い読みを
しています。

嵐山光三郎、井伏鱒二、太宰治、武田百合子、
つげ義春、荒俣宏
あたりをまず読んだかな。

あ〜あっつい温泉に入りたい〜(草津は熱々で好き)。

このシリーズ、
ほかに「にゃんこ天国」「ほろ酔い天国」などがあるようで、
河出書房は良いフォーマットをつくったな、という感想。

以下、掲載作。

湯のつかり方(池内紀)
カムイワッカ湯の滝(嵐山光三郎)
ぬる川の宿(吉川英治)
湯船のなかの布袋さん(四谷シモン)
花巻温泉(高村光太郎)
記憶(角田光代)
川の温泉(柳美里)
美しき旅について(室生犀星)
草津温泉(横尾忠則)
伊香保のろ天風呂(山下清)
上諏訪・飯田(川本三郎)
村の温泉(平林たい子)
渋温泉の秋(小川未明)
増富温泉場(井伏鱒二)
美少女(太宰治)
浅草観音温泉(武田百合子)
温泉雑記(抄)(岡本綺堂)
硫黄泉(斎藤茂太)
丹沢の鉱泉(つげ義春)
熱海秘湯群漫遊記(種村季弘)
湯ヶ島温泉(川端康成)
温浴(坂口安吾)
温泉(北杜夫)
母と(松本英子)
濃き闇の空間に湧く「再生の湯」(荒俣宏)
春の温泉(岡本かの子)
ふるさと城崎温泉(植村直己)
奥津温泉雪見酒(田村隆一)
別府の地獄めぐり(田辺聖子)
温泉だらけ(村上春樹)
温泉で泳いだ話(池波正太郎)
女の温泉(田山花袋)
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