思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『百万都市 江戸の生活』 江戸って地続きにある

2024-10-07 11:14:18 | 日記
『百万都市 江戸の生活』
北原進

ブクログ2.9でアマゾン4.1。
なんでこんなに評価が割れてるんだろ?

著者は近世民衆史が専門の大学教授。
いろんなところで書き散らした
江戸文化の小文を集めた一冊らしいけれど、
江戸っ子の銭湯、下水事情、生活、貨幣、料理
武家の財政、刃傷沙汰、等々…。
テーマごとに集めて構成もきれいにまとまっているので
あり物を再編した雑多感はあまりないかな。
最初から最後まで通しで、楽しく読みました。

ところで私は「甲乙丙丁」のこと、よくわかってなくて。
裁判とか契約書で「俺とお前」が「甲と乙」なんだな、くらい。
あと『鬼滅の刃』の隊員のランクかな?くらい。

なので、
「木火土金水」(五行)×「エト(兄=エ・弟=ト)」
で構成されているという説明に
心の「へえ」ボタン100連打でした。
へええええええええ!

何言ってんだって感じだと思いますが。

甲=木の兄(きのえ)、乙=木の弟(きのと)
丙=火の兄(ひのえ)、丁=火の弟(ひのと)
戊=土の兄(つちのえ)、己=土の弟(つちのと)
庚=金の兄(かのえ)、辛=金の弟(かのと)
壬=水の兄(みずのえ)、癸=水の弟(みずのと)

ということだ。
覚えやすい!
干支(十二支)と甲乙丙丁×兄弟(10)の掛け合わせで
60年一周期ができる。
明治元年は「戊」×「辰」=「つちのえたつ」だから
戊辰(ぼしん)戦争と言うんだな!
へえええええ!!!
(と良い歳して驚いているのは恥ずかしいことなのだろうか)
(今後は知っていたふりをして生きていこう)

あとは九六銭(くろくせん)の考え方もおもしろかった。
「96文をもって百文と勘定する」
何言ってるか分からないと思いますが、ありのままの話しだぜ。
96文=百文なんです。
穴あき銭に紐を通してまとめた緡銭(さしぜに)も、
96枚で百文として流通していたそうです。
わかったようなわからないような気もするが、
消費税で10%も持っていかれている現代の方が
腑に落ちない気もしてきたな。

紀尾井町は
御三家の紀伊家(紀)、尾張家(尾)、譜代の井伊家(井)の屋敷が
あった坂が「紀尾井坂」だったから。
三文字略語(TLA:three-letter abbreviation)じゃん。

江戸時代は上方からの「下り物(くだりもの)」が高級品。
下り酒とか、下り油とか。
対して、江戸近辺の安物を「下らない(くだらない)」物と呼ぶ。
え?そういうことだったの?

とかとか。
江戸時代の生活や文化風習もおもしろいし、
意外と現代まで続いているあれこれのルーツが学べたりして
お得。

神田上水を開いた大久保主水は、水が濁らないように
主水(もんど)と書いて「もんと」と読むように
家康に命じられたのとか、めちゃおもしろ。
いまだに橋の銘は「永代橋」=「えいたいはし」、
「日本橋」=「にほんはし」ですしね。
(これも水が濁らないための験担ぎ)。
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『日本の歴史をよみなおす(全)』 筑摩社員いいなあ

2024-10-04 08:43:31 | 日記
『日本の歴史をよみなおす(全)』
網野善彦

(全)って何?
と思ったら、正編(1991)と続編(1996)を一冊にして
刊行しなおしたものらしい(2005年初版)。

全編、講義口調になっているので
網野先生の授業を聞いている雰囲気。
読みやすくて良い感じです。

というか、筑摩書房の社員を集めて実際に講義をし、
その内容を元に書籍化したそうです。
そういう順番か!筑摩社員、いいなあ!

貨幣経済や、日本の差別の歴史、女性の立場や
中世日本の社会、などがテーマとなって章立てされています。

以下、メモ。

・和同開珎
貨幣経済が全然育ってなかったので、
商取引よりも呪術的に使われていたそうです。
おもしろ!
寺院の基壇に置くとかね。
社会で最古の和銭と習った和同開珎、色々と残念なやつだぜ…。

・日宋貿易と銭の病
平清盛が儲けていたので有名。
12〜13世紀に宋から銭が流入した際も
まだ貨幣社会は育ってなかったようで。
疫病が流行ると「銭の病」と言われたそうです。
土地の売買で銭が使われるようになるのが13世紀以降。
なるほど。

・中世の金融業者は神や仏の直属人
金融は、神仏に捧げられたものを人間世界で使い、
お礼に利息をつけてお返しする、という解釈。
祠堂銭(しどうせん)は寺に寄付された銭の貸し出し。
出挙(すいこ)は神物、仏物の貸し付けのこと。
神人(じんにん)が神の直属民、
寄人(よりうど)が仏の直属民、
供御人(くごにん)が天皇の直属民。

・鎌倉新仏教
非人の救済活動、放下(ほうか、芸能民)としての活動、
勧進聖、無縁所の運営など。
高校日本史でやったはずなのに、ひとつも思い出せない…。
(鎌倉新仏教は6個あるよ!1個も思い出せないけど!)

ちなみにこの本では時宗の『一遍聖絵』と『天狗草子』が
(前者は一遍の伝記的絵巻、一方で後者は一遍批判の絵巻)
挿絵としてたくさん引かれています。
ここらへん、もうちょっと勉強したいところ。

・「百姓」=農民ではない
百姓という言葉には、非農業民もかなり含まれていた説。
海民・山民や、商人・廻船人の実態が把握されていなかった。
田地制で戸籍管理しているから
「水呑」=貧しい、というイメージもあるけれど、
廻船業で豊かな「水呑」もいるとか。
米が育たない山間=貧村、かと思ったら
金や銅で生活が成り立ってましたとか。

・西日本と東日本
西日本:弥生文化、貴族、中国・朝鮮系の作物流入
東日本:縄文文化、武家、シベリア・ヨーロッパ系の作物流入
これは建築でも東西の文化の差の話しがあったな。
色々なジャンルで分析できそう。
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『太陽と乙女』森見登美彦 読書ノートは大事である

2024-10-03 11:18:45 | 日記
『太陽と乙女』森見登美彦

先日出社の際に通勤読書用と思って
本棚から井伏鱒二の『川釣り』を持って行きました。
古本市か何かで買い置いていた積読エリアから。

『川釣り』は釣りにまつわる小品を集めた一冊。
いくつか読んで30ページ過ぎた辺りで思ったね。
「これ、読んだわ…」と。

さて、
大好きな作家・森見登美彦氏のエッセイ集『太陽と乙女』です。
デビュー以来14年分の全エッセイだそうで
400ページ超え。
ちょこちょこつまみ食いしながら
長いお付き合いで読むべき一冊です。

しかし私は所用で立ち寄った図書館で
ついつい借りてしまった。
初手から間違いです。

でもまあ、あとで買うとして、
二週間はお付き合いさせてください。
って感じでつまみ食いして楽しんだ。

そして思ったね。
「これ、前も借りたわ…」と。

(図書館の貸し出し履歴見たら2000年11月に借りてた。
 便利な機能だな)

まあ、そんな感じで読んでもやっぱりおもしろいので
登美彦氏は凄いな!という話しです。
あと読書メモって大事だよなあ、という。
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木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』

2024-10-02 14:05:59 | 日記
行ってきました木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』

木ノ下歌舞伎は、歌舞伎の演目を現代劇の手法で演じる集団。
主宰の木ノ下裕一氏の役割は監修・補綴。
「ほてい」って読むのかな?
脚本ではないんですね。

なので、筋書きもセリフも原作に結構忠実です。
でも聞きやすいし、わかりやすい。
良い意味で現代演劇フィルター越しに味わえる歌舞伎。

今回の『三人吉三廓初買(さんにんきちさ くるわのはつがい)』は
河竹黙阿弥による安政7年(1860)の作品。
(時代としてはまだ江戸だけど、ペリーはもう来てる)
和尚・吉三、お嬢・吉三、お坊・吉三の三人吉三の物語。

木ノ下歌舞伎は原本を大事にするらしく、
一般に流布している書籍では全カットされている
「地獄正月斎日の場」も込みで、演じに演じて
上演時間はなんと5時間(!!!)
何と戦っているんだ?!
そして客は何と戦うんだ?
私は中年だから尿意と空腹との戦いになりそうだな!

って思って挑んだのですが、
ぜんぜん大丈夫だった。
5時間、超余裕だぜ!!!
楽しかったぜ!!!

と、あほみたいな感想しか残らないくらい、
あっという間でした。ほんと楽しかった。
(脱落者も見かけなかったな。
 お着物で悠々と観劇しているマダムには尊敬の念を抱いたが)

ちょうど三浦しをんさんのエッセイで串田和美演出の
『三人吉三』のエピソードを読んだばかりだったので
和尚吉三の立ち位置が気になったけれど、
フル観劇するとあまりボッチ感は無いですね。
むしろお嬢の出番が少なくないか?
お嬢の活躍もっと見たかったな。

あとは土左衛門伝吉の業が深すぎですね笑
ぜんぶお前のせいやぞ!ってなる笑
おとせが可愛そすぎるでしょ。

いやあ、楽しかったなあ。
これは古典歌舞伎への良い第一歩にもなる気がする!

今度は歌舞伎座に行きたい!
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『寿宴』 何事も腹八分目だぞ

2024-10-01 11:28:49 | 日記
『寿宴』
南條竹則

上海出身の先輩と数人で
上野の本格中華に行くことになりました。

楽しみすぎて、何か中華料理っぽい本を読もう!と思い
この『寿宴』を読んだ次第。

帯に「本格中華料理小説」と書いてあるのですが、
本格中華に詳しくなる内容ではないなあ。

おもしろくないわけじゃないんですけどね。
なんか不思議な本だな。

まず、小説というよりも
虚構エッセイっぽいテイストですね。
主人公は英文学者の南條、ではなく南蝶氏。通称でふ氏。
他にも実在のモデルがいるであろう登場人物の名前は
どれもふざけていて、良い。
(丘君、とるきんさん、のたい君…)
百閒(もしくは漱石)のこと好きなんだろな。
(なにしろ恩師の名が甘木先生だ)

で、中国に行って本格中華を食べて食べて食べまくる。
昼を食べて散歩して夜食べる、みたいな食べ方。
ずーっと食べてるのですが、クライマックスの寿宴は
朝食の部から夕食の部まである。
踊りや寸劇を見ながらずーっと食ってる。

食材もすごい。
すっぽんの足をハモの干物で巻いたもの。
鹿の胎児と冬虫夏草の煮物。
山椒魚(食べて良いんだっけ?)
ヤマネコの丸ごと煮(おい)

ちなみにこれで「山八珍」を制覇した、という
セリフがありまして、
熊の掌、ラクダの瘤、鹿のペニス、飛竜鳥、
猴頭(猿の脳みそ)、四不象の鼻、穿山甲、山猫の子供
だそうです。
食ったらあかんくない?
倫理的にも衛生的にも法律的にも。
と思う食材だらけですな。

なかなかおもしろい中国の食の歴史が垣間見える本ですが、
正直に言うと、「ぜんぜんおいしそうじゃない」です。
みなさん健啖ですが、
食ってる量が異常というか
古代ローマ帝国の貴族が吐きながら食ってた
みたいな感じなんだよなあ。
食材に失礼じゃないか、と。

なにごとも腹八分目がいいですね。

ちなみに先輩と行った雲南料理のお店は
めちゃくちゃ美味しかったです。
中国語母語の先輩にオーダーを丸投げしてしまったので、
料理の名前をひとつも覚えていないのだが。。。
(マグマで煮立てた鶏の骨付き肉みたいのが旨かった)
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