思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

ハインライン『月は無慈悲な夜の女王』

2018-05-17 16:42:19 | 日記
ロバート・A・ハインラインの『月は無慈悲な夜の女王』です。

1966年に発行され、1967年のヒューゴー賞長編小説部門を受賞。
アメリカSFの第一人者と言われるハインラインは、
ヒューゴー賞を4回受けており、
その中でも評価が高いのが、この作品である、とかなんとか。

「読んでおくべき古典SF◯冊」みたいな特集で
よく見かけるタイトルだな〜と思っており、
以前から気になってはいたのです。
ようやく読了。

ざっくり言うと、2076年の月が舞台。
地球の植民地的な月世界の独立に至る顛末を
主人公の一人称で回想する物語。

革命をひっぱっていくのは、
主人公の師でもある「教授」と
自意識を持ったコンピューターの「マイク」。

AIとかネットとかがほぼ無い1966年に
機械が持つ「知性」とはどんなものか
細かく、面白く、描いていて、すごいなあと思いました。

とはいえ、全体的にあまり楽しめなかった。

「革命もの」としてのベースがアメリカ独立戦争や
その当時の人々の意識にリンクしているようで。
私のそこらへんに関する基礎知識が足らないのかもしれません。

また、主人公マヌエルの一人称で語られているのですが、
革命の細部に至るまでの作戦立ては「教授」と「マイク」が
考え、仕込み、実行しているようなのです。
なのでマヌエルに隠されていることや、後から推測されたことが多く、
全貌がちょっとわかりにくい。

訳者の矢野徹氏は自身もSF作品を書いている作家さんらしいのですが、
日本語として理解しにくい箇所も多いんですよね。
ちなみに私が読んだほなハヤカワ文庫で
1997年発行の十八刷だったのですが、
誤字が多くてびっくりしました。
十八刷まで誰も指摘しなかったのか!
日本語が怪しい箇所の多さも相まって
なんか、読んでいていろいろと不安になりました。
求む新訳!!!

同じハインラインでも『夏への扉』はすごくよかったんだけどなあ。
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【読書メモ】2008年2月~5月

2018-05-16 14:57:36 | 【読書メモ】2008年
<2008年2月~5月>
なんとなーく読みたい本が見当たらなくて、
なんとなーく売れているらしい本をミーハーに読んだり
会社で本を拾ったり、
人の薦めにフラフラ従ってみたり。
ちょっと、本との出会いに右往左往していたようです。
井伏鱒二は良かったけどね!
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。


『鴨川ホルモー』万城目学
売れてるみたいですが、あんまり面白くなかった。

(バッサリ!!!
 そうなんです。私、万城目学のおもしろさが全然わからないのです。
 何がダメなんだろう。わからないな。
 でも、なんか、ダメだなって思ったんですよね。
 という直感だけは覚えている)


『ネジ式ザゼツキー』島田荘司
会社で拾って読んだ。
初めて読んだ島田作品で、この作者のジャンルが
ミステリなのかエンタメなのか文学なのかも知らなかった。
奇想天外のトンデモ小説だなあ、と思いつつ、結構面白く読んだ。
ビートルズのルーシーインザスカイ(?)と
人類祖先の化石(ルーシーちゃん)と、
長々とした作中作が印象的で、御手洗探偵の影は薄かった。


『永遠の1/2』佐藤正午
人違いをされまくる男の話し。
自分よりモテて、自分より社会性が無さそうなもう一人の自分。
もう少し上手に「人違いですよ」と言えそうなもんですが。

『ジャンプ』佐藤正午
(メモなし。
 一応、人に薦められたので読んでみたものの……という。
 『鳩の撃退法』でメタくそに書きましたが。
 合わない)

『駅前旅館』井伏鱒二
こういう旅館商売があったのか、と新鮮だった。
語り口が軽くて読みやすい。
井伏鱒二を食わず嫌いしてたと反省。

『ジョン萬次郎漂流記・本日休診』井伏鱒二
本日休診の産科医が良かった。もう少し長くてもいい。

(井伏鱒二2連投は、佐藤正午とは別の先輩の影響です。
 こちらは、もっと早く読んでおくべきだった!!!
 と思うくらいに好きでした。今も好きだけど。
 ちなみに先輩は、私に読書を薦めたわけではなく
 「生まれ変わったら何になりたいか?」という飲み屋の話題で
 「井伏鱒二の駅前旅館の番頭みたいになりたい」と答えて
 その場にいた全員の酔いを醒ましたのでした)


『婦系図(おんなけいず)』泉鏡花
どんでん返しが良かった。
途中で飽きたけど、読了して良かったと思えました。

(1907年の作品。
 新進のドイツ語文学者 早瀬主税(ちから)と芸妓お蔦の悲恋のお話し。
 って、うろ覚えなので検索して書きましたが。
 掏摸をやっていた少年(主人公)が師匠に拾われて、
 恩義を感じている師に逆らえず、泣く泣く恋人を諦めて……
 みたいなストーリーは印象に残ってます。
 そもそも、それって泉鏡花と尾崎紅葉じゃん!って思いましたし)
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堀江敏幸『熊の敷石』 2001年芥川賞受賞作

2018-05-15 17:46:55 | 日記
堀江敏幸氏の作品は、初めて読んだのが『めぐらし屋』で
「好きだな」と思ったのですが、
それ以降、なぜか縁遠いままでした。
なぜだろう。

と、思い立ったが読み時、ってことで。
芥川賞受賞作『熊の敷石』です。

単行本には『熊の敷石』『砂売りが通る』『城址(しろあと)にて』
の3本を収録していますが、
表題作がページ数の3分の2ほどを占めています。

もちろん表題作が2001年芥川賞受賞作でもある。
うん、とても良い。
他の2作も良い。
解説が川上弘美なのも良い。
好きな小説です。

難しい言葉は大して使っていないのに
教養を感じさせる文章で、でも読みやすい。
読んでいて気持ちいいです。

でもね、なんていうんですかね。
清冽さのような魅力を感じるのだけど、
その魅力に、ちょっとだけ、不安を覚える感じ。
好きだけど、好きだと言いたいけど、
一定の距離以上に近寄ると戻れなくなりそうな感じというか。
川上弘美は解説で「いろっぽいのだ」と言っています。

あと、オノマトペを使う際に(あまり多用しないけど)
独特な表現をするのも良いですね。
「その大半がぷつぷつと宙に消えたのを見届けてから」
「ぺなぺなした航空便の封筒」とか。

ちなみに作者は仏文学者でもあるそうです。
ちょっと変わったタイトル
『熊の敷石』『砂売りが通る』は、
フランス語での格言や喩えだそうです。へえ~。

フランス語で眠くなることを「砂売りが通る」と言うとか。
「熊の敷石」はいらぬおせっかいという意味だとか。
へええ~。

何はともあれ、この作者は好きな作者だ!

次は川端賞・谷崎賞受賞の『雪沼とその周辺』を
読もうと思います。
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熊谷達也『氷結の森』森シリーズ三作目

2018-05-12 22:20:16 | 日記
熊谷達也の”森シリーズ”三作目である
『氷結の森』を読みました。

個人的には、『邂逅の森』
(第17回山本周五郎賞、第131回直木賞ダブル受賞)
に続く、熊谷達也作品の、二作目の読書です。

”森シリーズ”または”マタギシリーズ”と銘打っている
マタギをテーマにした三部作ってことは知っていました。

しかしこれ、三部作の三作目であったようです……。

あれ?
また読む順番間違えちゃったかな?

そうです。
そもそもの熊谷作品入門書であり代表作である
『邂逅の森』が、森シリーズ二作目なのである。
誰か先に教えて〜。

森シリーズは
『相克の森』
『邂逅の森』(山本周五郎賞、直木賞)
『氷結の森』
という順番らしいのです。

未読の方は要チェック!
と言いつつ、実は、順番はそんなに影響無いです。
個人的な感想では、やはり、作品の魅力として
一位の『邂逅の森』から熊谷作品に触れたら良いと思います。

三部作という売り文句に惑わされるな!!

応援したいのかディスりたいのか、謎なテンションですが。
応援しております。

で、『氷結の森』ですね。

おもしろかった。
と言いつつ、
『邂逅の森』がずば抜けてるので、
どうしても辛口の採点になりがちです。

(主人公が無双すぎ!)

とはいえ日露戦争直後の樺太の政治情勢や
樺太での一般市民の暮らし、ギリヤーク、ニブヒ、
ロシアの赤白、ニコラエフスクとその悲劇……
歴史の勉強だけではなかなか深く学べない
当時の人、風俗、時代や社会が、細やかに骨太に描かれていて
なんとういか、逆に、自分は物知らずで申し訳ない!
と思うくらいに勉強させられます。

尼港事件についても、私はまったく知りませんでした。
もっと現代において議論されていも良いと思うのだけど。

小説としては、ちょっと矢一郎がハードボイルドすぎな気はしますが、
とはいえ読んどくと良いと思える為になる小説でもありました。

まあ、森シリーズの完結編、というような繋がりはないけどな。
良作である。


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