思惟石

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朝井まかて『御松茸騒動』

2018-05-28 16:25:36 | 日記
算術が得意で頭でっかちな若き尾張藩士、榊原小四郎が主人公。

江戸藩邸で育ったものの、亡父の悪友トリオ「三べえ」の不始末に
巻き込まれて、「御松茸同心」として尾張の山奥に左遷されます。
たったの19歳で。

小四郎は才気煥発なものの、何かと上役や周囲の人間をバカにして
人間関係を築けないような未熟な性格です。

舞台となる尾張藩は、財政難が続くし、藩士の士気は低いし、
特産品のはずの松茸は不作つづきで
役所が堂々と産地偽装をしているし、という有り様。

というわけで、青臭い若者の成長物語です。

お勉強ばかりやっていた小四郎が、
山の生活に触れて、理屈では説明できない松茸の生態や
自然との共生生活を経て成長していく過程は、
共感しちゃったり、温かく見守りたくなったり。
時代設定がまったく違うけど、瀬尾まいこの『天国はまだ遠く』や
三浦しをんの『神去なあなあ日常』を思い出しました。

まあ、とはいえ、私が読み始めに予想した「劇的成長!」や
「劇的サクセス!」は、この小説にはないんですよね。
松茸の栽培って現代でもできてないみたいで、
とても難しいようですが、
小説内でも山の手入れをこつこつ10年続けて、
ゆるやかに収穫量が上向きになった、みたいな。
ふんわりした感じ。
尾張藩の財政も、小四郎の立場も、同様で、
なんとなく一歩を踏み出したかな?どうかな?という。

それが地続きな物語ということなのかもしれません。

ベースの文章や登場人物のやりとりが軽快でサクサク進むので、
気楽に読めるのは良いと思います。


個人的には、もうちょっと、ドラマチックな展開があっても
良かったかなあと思いました。
コメント
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