思惟石

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『京都守護職始末 1―旧会津藩老臣の手記』

2023-10-13 19:02:03 | 日記
『京都守護職始末 1―旧会津藩老臣の手記』
山川浩

幕末の会津藩士による当時の記録。
著者の山川浩氏は、
会津藩主・松平容保の側近だった人らしい。

維新の数十年後に記録をまとめ始めたけれど、
すぐ亡くなってしまって、仕上げたのは弟さんらしいです。

それもすぐには出版できず(薩長勢力がそれを望まない時代だった)、
ようやく出版されたのは明治44年。
東洋文庫版は、書簡などは原文まま、
地の文章は詩人金子光晴による口語訳(読みやすくて助かる〜)。
遠山茂樹氏の解説が当時の世相なども俯瞰してわかりやすく、
ありがたい一冊。

本文は「会津は朝敵ではない」という視点で書かれているので
そこらへんは差し引いて読むべきだと思うけれど、
薩摩や土佐の重鎮が会津に出入りして親交を結んでいたり
単純な敵味方に分かれていない当時の複雑さが分かります。

あと、当時の孝明天皇にとても心を寄せていて
攘夷過激派で天皇を軽視する公卿に対しては
めちゃくちゃ厳しい。
ついでに慶喜にも厳しい笑

個人的には、読んでいたらシレッと
「柴太一郎が三条実美卿に謁する」とあって、
これ、柴五郎翁の親戚じゃない?と。

調べたら、柴五郎翁の長兄でした。
何かと苦労して裁判沙汰になったりしたお兄ちゃんだ!
本当に会津藩の重臣だったんだね!おつかれ!!

遠い親戚の足跡を見た気がして勝手にしみじみしました。
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『世界の辺境とハードボイルド室町時代』

2023-10-12 17:38:30 | 日記
『世界の辺境とハードボイルド室町時代』
高野秀行/清水克行

辺境探検家の高野さんと、
室町時代が専門の清水先生の対談。

どういう接点?
と思ったけれど、本人たちも出会って会話して
あまりにも噛み合うことにびっくりしたらしい。
(編集者曰く高野さんの目がハートだったらしい。
いいエピソード笑)

ソマリランドと室町時代の共通点から、
日本の中世の文化と、高野さんが巡った辺境国家の文化の共通点
(もちろん正反対なこともある)を語り合う。

驚いたのは、高野さんがとにかく博識で
日本史の文献にも強いこと。
経験に裏打ちされた大乗仏教と上座部仏教の違いや
イスラムの特徴(ヒゲ生やしがち)もおもしろい。
本当に凄い人である。

あと、表紙や中表紙に使われている山口晃画伯の絵が
ぴったりすぎて興奮しました。
室町の軽トラ、超かっこいい。
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『カテドラル―最も美しい大聖堂のできあがるまで』

2023-10-10 14:57:57 | 日記
『カテドラル―最も美しい大聖堂のできあがるまで』
デビッド・マコーレイ
訳:飯田喜四郎

大人向けの絵本というか、
子どもと一緒に眺めるだけでも楽しめる一冊。
建築の基礎学習に良いので、
世の建築学科専攻学生は愛読すると良いと思います。
(と、学生時代の私に時空を超えて教えてあげたい)

フランスの架空の町、シュトローに大聖堂ができるまで。
基礎づくりから竣工までの施工風景を、細密なペン画で
描いている絵本です。
もうね、線の一本一本を見ているだけでも楽しい。
何ならトレースしたい。いや、しないけど。

着工が1252年で、完成が1338年という設定です。
数百年単位で時間とお金をかけて、巨大な聖堂をつくるって、
すごいことだなあと思います。

石切場の風景とか、基礎づくりや
巨大アーチの施工風景とかのイラストを見ていると、
もうね、壮大すぎて完成する気がしない。
でも完成させます。
人類の力なのか、宗教の力なのか、とにかくすごいなあ。

意匠は、パリのノートルダム寺院を彷彿とさせる
ゴシック式カテドラル。
尖塔がたくさん組み合わさっていて、
個人的にはサグラダ・ファミリアに似ていると思いますけど。

いやあ、良い絵本ですよ。
全ページ分解してトレースしたいよね。
しないし、できないけど。
(私はステッドラーのロットリングペンも好きだけど、
 Hi-tecの0.3を愛しています)
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『少年時代』 郷愁が欲しい大人のための一冊

2023-10-06 18:11:25 | 日記
『少年時代』
ロバート・マキャモン
訳:二宮磬

1964年、
アメリカ南部の小さな町ゼファーで暮らす
12歳のコーリー少年の物語。

「郷愁!!」って感じの一冊ですね。
ロバート・B・パーカーの『初秋』を思い出したけれど、
それよりも真っ直ぐと言うか、素直というか、
健やかな郷愁だな!って感じです。よくわからんけど。

文庫上下巻。
コーリー少年12歳の、春夏秋冬に分かれています。

冒頭で父と共に殺人事件(?!)を目撃し、
それが底に流れつつの1年間。
小さな町での人間関係やいじめっ子との対決、
小さな事件、不思議な出来事等々。

謎の生命体や、黒人の老女ザ・レディなど、
ちょっと昔のちょっと不思議が詰まっているのも良い。
現代よりちょっと昔には、居たのかもしれないな。
という絶妙な不思議たち。愛しいね!

もうね、郷愁を掻き立てられまくるエピソードが
てんこ盛りの一冊です。
いや、アメリカに住んだことないけど。
1964年は生まれてすらないけど。
という一冊。

殺人事件が出てきたり人種差別が出てきたりするけれど、
コーリー少年と父親は
「完全な悪人はいない」と信じている。
とにかく平和で平凡な幸せを追う、
そのスタンスも、良い感じ。

個人的には、コーリー、なかなかハードな
経験をしてるよ…!と思いましたけど笑
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『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』

2023-10-05 18:38:08 | 日記
『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』
川上和人

鳥類学者のエッセイ。
とにかく文章がめちゃくちゃおもしろい。

白鳥の渡来を告げる新聞はモノクロで良いじゃないか
(大抵はカラー写真だけど)とか。

小笠原諸島の離島でフィールドワークすることが
多いみたいです。
大陸分離ではなく、海岸がせり上がってできた島には
哺乳類はいないらしい。
言われてみれば、となるけれど、驚いた。

夜中の調査でヘッドライトに
蝿が集まって口に入ってくるとか、
うわあと思ったけれど、
鳥の死骸を食べる蝿は、つまり、鶏肉だ、
という思考法で笑ってしまった。

優秀な頭脳を駆使して、アホな文章を書くなあ。

リアルキョロちゃんの生態を
まじめに考察するのも笑ったし、
その挿絵が妙にリアルで実在してそうで、良かった。

章のタイトルも装丁もデザインも、ぜんぶ良い一冊。
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