https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170824-00010001-nknatiogeo-sctch
確かに「痛みがあるから眠れない」だけだと単なる「原因と結果」になってしまうのだが、痛みと睡眠との間にはもう少し深い双方向的な関係がある。「眠れないことが逆に痛みを強くする」そして「眠れれば痛みが軽くなる」ことが最新の研究から明らかになってきたのである。
短時間睡眠で生じた痛みに効果があったのは、意外にも一見鎮痛とは無縁なカフェインとモダフィニルであった。カフェインは脳内の催眠物質アデノシンの作用をブロックすることで眠気を抑える(参考記事:「眠気の正体」)。モダフィニルもドーパミン系神経の活動を促進して覚醒効果を発揮する医薬品で過眠症の治療薬に用いられている(参考記事:「頭が良くなるドーピング「スマートドラッグ」」)。
作用機序の異なる二つの覚醒促進薬がともに疼痛効果を発揮したメカニズムは、どうやら「眠気の解消(覚醒度の上昇)」にあるらしい。睡眠不足や不眠によって覚醒度が低下すると痛みを感じやすくなり、そしてその疼痛過敏は眠気をとることで回復できる、と研究者らは主張している。睡眠不足で日中の痛みが増すことは知っていても、痛みの感受性に眠気が関連しているというのはその筋の専門家にとっても全く想定していなかった新発見で、権威ある医学誌に掲載されたのもむべなるかな。