「道東内陸部の阿寒が隆起する一方、太平洋沿岸の釧路・根室は沈降し、境目に歪みが溜まっていると考えられます。道央の南部のえりも2も隆起が続いており、釧路・根室の沈降とのギャップが大きくなっている。
一方、道南を見ると、津軽海峡を挟んだ青森の黒石で隆起が始まっている。この地域は『水平方向の動き』でも周辺と異なる動きが見られるので注意すべきです」(村井氏)
【奥羽山脈警戒ゾーン】
東日本大震災以降、福島県沖を中心に地震の常襲地帯となっている。秋田の鳥海では7.11センチの以上変動も起こっており、警戒は依然として必要だ。村井氏は今回、この警戒ゾーンに茨城北部も含めた。
「茨城北部までゾーン全体に大きな水平方向の動きが確認されています。また岩手・宮城など太平洋側は隆起傾向にあり、秋田・山形など日本海側は沈降が進んでいる。境にある奥羽山脈を中心に歪みが大きくなっています」(村井氏)
【北陸・北信越警戒ゾーン】
前出の東北地方の動きと関連しているという。
「新潟南部の隆起が顕著です。特に12月には安塚、新潟下田が大きく隆起しました。奥羽山脈警戒ゾーンとの境目にある新潟北部は歪みが溜まって不安定な状態と言えます」(村井氏)
その新潟北部では、新発田Aや小須戸で5センチ以上の異常変動が起きている。
【首都圏・東海警戒ゾーン】
村井氏が今回も最警戒としているのが首都圏を含む南関東だ。
「昨年7月に2週続けて伊豆諸島から伊豆半島、富士山周辺までの『一斉異常変動』が確認されている。たとえば三宅2と三宅3で7センチ以上、中伊豆や初島でも、5センチ以上となっている。またこの地域を水平方向の動きで見ると、昨年10月に、東北や茨城付近と異なる動きが見られました。その中間に位置する首都圏には歪みが大きく溜まっていると考えられる。警戒を解くことはできません」(村井氏)
【南海・東南海警戒ゾーン】
「南海トラフ地震」の影響を大きく受けると予想されるこの地域では、広島の蒲刈で8.04センチ、高知の久礼で7.15センチの上下動があった。
「昨年10月下旬、紀伊半島から九州・大分までの地域全体が、水平方向に大きく動いた。これまで見られなかった動きで、注意すべきと考えている」(村井氏)
【九州警戒ゾーン】
熊本地震以降、震度5クラスの地震が頻発しているが、新たな大地震の兆候があると指摘する。
「熊本地震以降、福岡県で沈降が続いている。これが一転、隆起に転じた場合、要注意と見ています。2005年に最大震度6弱を記録した福岡県西方沖地震の前には、高さ変動に大きな揺らぎが起きていました。鹿児島と宮崎南部では水平方向で大きな動きが見られ、垂水の8.56センチをはじめ異常変動も多いことから警戒が必要です」(村井氏)
村井氏は予測の精度をより高めるため、今年からはAI(人工知能)などの最新技術も導入する予定だという。