日本人は弱い人が多いから。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180505-00010543-nallabout-hlth
慶應義塾大学医学部整形外科学教室・宮本健史准教授グループの研究によると、遺伝的にお酒を飲んで赤くなりやすい体質の人は、そうでない人に比べて2.48倍、骨粗鬆症による大腿骨近位部骨折をおこしやすくなるということが明らかになりました(2017年3月27日、学際的総合ジャーナルScientific Reports誌に掲載)。
同大学によると、大腿骨近位部骨折をおこした92名を大腿骨近位部骨折群(骨折群)、大腿骨近位部骨折を起こしておらず骨粗鬆症の診断基準も満たさない48名を正常群として、ゲノムDNAを回収しました。
お酒を飲むと顔が赤くなりやすい人は、アルコール代謝の過程で発生し、二日酔いなどの原因になる「アセトアルデヒド」を分解するはたらきのある「ALDH2」という酵素タンパク質が、遺伝的に活性が弱いか、あるいは欠けていると考えられています。
今回の研究では、お酒を飲むと赤くなる体質の原因とみられる遺伝子多型rs671に着目して、その保有率を骨折群と正常群間で比較されました。
その結果により、
・骨折群では正常群に比べてrs671保有率が高いこと
・その保有により骨折のリスクが2.48倍高くなること
が明らかにされました。
今回の調査で注目すべき点は、特に「お酒を飲むと赤くなる人」は、骨折しやすい体質であること。そして、普段の飲酒量に関係なく、骨粗鬆症による大腿骨骨折をおこしやすいということが明らかにされたことだと思います。
大腿骨骨折は、遺伝性があることが知られていましたが、遺伝性についての検査を受けるハードルはまだ高いものです。今回飲酒後の顔色という誰にでもわかるチェックポイントとの関連性が明らかにされたことで、費用のかかる遺伝子レベルでの検査などを受けなくても、遺伝的に骨折リスクが高い体質かどうかということが推測できるようになりました。
もし家族や親しい人に飲酒後に顔が真っ赤になってしまう人がいたら、日頃から飲酒を控えたり、骨の健康を意識したり、生活の中で転倒防止することが大切なことを伝え、将来的な骨折予防につなげていくことには大きな意味があると思います。
以前から、アルコールと骨の健康に関する研究では、アルコールは適量であれば骨を強くし骨折保護作用があるといった報告もある一方で、過度なアルコール摂取は利尿作用によりカルシウムを排出するとみられ、骨粗鬆症予防には過度なアルコールの摂取は控えるようにと注意が促されていました。
また近年の研究では、アセトアルデヒドが蓄積され血中濃度が高まると、過酸化脂質が増え酸化ストレスにさらされることで、骨を生成する骨芽細胞の機能不全が生じるのではないかと考えられています。
このアセトアルデヒドは、アルコールを飲んで代謝過程で発生するだけでなく、タバコ煙にも含まれています。
また今回の研究では、試験管レベルですが、アセトアルデヒドによる骨芽細胞の機能障害はビタミンEにより回避できる可能性が示されました。
ビタミンEは、若返りのビタミンとも呼ばれ、ビタミンCとともに活性酸素などを除去すると考えられている抗酸化ビタミンの一つです。ビタミンEは、いくらやたらこ、うなぎの蒲焼、ゴマやアーモンドなどのナッツ類、抹茶などに多く含まれています。略
平均寿命が延びる一方で、自力で生活ができる健康寿命との差は、平均で約10年もあるのです。脳卒中や認知症のほか、骨折、特に大腿骨近位部骨折は寝たきりや要介護の要因となるため、その予防は重要です。
特に女性の場合は、閉経を迎えると女性ホルモンの減少により、骨の新陳代謝のバランスが崩れ、骨粗鬆症になりやすくなります。略
お酒を飲めば赤くなる体質は今さら変えられませんが、骨粗鬆症や骨折のリスクをできるだけ抑えるための配慮はできるはずです。栄養バランスのとれた食事をベースに、カルシウムやマグネシウムなどのミネラル、ビタミンD、ビタミンK、タンパク質などの栄養素を不足することなく摂取すること、喫煙や飲酒を控えるなどを心がけましょう。略
運動などで骨に負荷をかけることも骨芽細胞の骨形成を促すことに役立ちます。これらは骨だけでなく体全体の健康維持にもつながりますので、生活習慣を見直してみましょう。