約束した時間を守らないとイライラされますが、その最大の原因は「先の見通しが立たない」のが理由です。本当にくるのか?いつまで待てば良いのか?アポは中止になったのか?など今後の見通しが立たないと自分がどうすべきかを判断することができず、不安になります。優秀なツアーガイドなら「バスが遅れておりますので10分遅れます。ですが休憩時間を調整しますので問題ありません」と教えてくれます。これと同じです。アポの時間に遅れる場合は、たとえ3分の遅刻でも「3分遅れます」と電話を入れる。上司に頼まれた企画書の提出日が遅れるなら「1日伸ばした金曜日にしていただけませんか?」と事前に相談する。このように事前に時間を知らせれば、相手に先に情報を与えるためイライラされる確率は下がるものです。
時間を知らせることに加えて気を付けたいのが「理由」です。例えば電車の遅延。「電車が10分遅れております」と言われるよりも「電車が『大雪のため』10分遅れております」と言われた方が、受け手の印象が大きく変わります。人は遅れるという事実も知りたいですが、その理由を知ることで安心し納得するものです。ビジネスシーンで言えば、「会議に出席できなくなりました」ではなく「A社のトラブル対応のため会議に出席できなくなりました」。「頼まれていた企画書ですが、金曜日提出にさせてください」ではなく「頼まれていた企画書ですが、もっと練りこみたいので金曜日提出にさせてください」の方が相手も納得するものです。ぜひ「なぜ自分が待たないといけないのか」という正当な理由を相手に知らせてあげてください。
物理的に相手を待たせる場合は、場所を変えると相手の不快を排除できます。例えばツアー先のトラブルで待たされることになったとします。その際、寒風吹きすさぶ外で待たされるのと、温かいホテルのロビーで待たされるのでは印象は大きく変わりますよね。相手をどうしても待たせなくてはいけない場面では、相手が快適に待てる場所に気を配り、移動してもらうのが正解です。ビジネスシーンで言えば、訪問客を受付で待たせるのではなく、応接室で待っていていただく。社内会議に遅れるときは、そのまま会議室で待たせるのではなく、一旦解散し自席に戻ってもらうなど、相手にとって快適と思える場所に移動してもらうだけで、相手の印象は変わるものです。
第28代アメリカ大統領ウッドロー・ウィルソンが「空腹では隣人は愛せない」と言っているように、同じ待つという状況でも空腹と満腹の状態では感じ方も変わります。海外旅行で言えば、飛行機の大幅な遅延。何らかの理由で飛行機が大きく遅れる時はエアライン会社が飲み物や食べ物を配ってくれます。やはり胃袋の状況と怒りは少なからず関係があるとエアライン会社は知っているのです。ビジネスに置き換えれば、お待たせするならお茶やお菓子をお出ししておくなどのちょっとした工夫をしてみましょう。昔から「食べ物の恨みは恐ろしい」と言いますが、逆に「食の恩」は人間関係を円滑にしてくれます。
手持ち無沙汰という言葉があるように、何もやることがなく、間が持たないのもイライラさせる原因となります。旅行先で長い待ち時間ができると、普段読まないフリーペーパーに目を通したり、地元のチラシを読んだりするように、何か読むものがあるだけで間を持たせることができるものです。ビジネスシーンでお待たせする場合は、雑誌や新聞を用意しておくのが有効です。それもスポーツ系からビジネス系まで複数用意するのがベター。手持ち無沙汰なときは、いつもと違う情報に触れてみようと思うもの。色々なジャンルの読み物を用意する方が気が利く対応です。
イライラされるのは、相手を待たせたことが原因ではありません。その待たせ方に原因があったのです。ツアーガイドのように「相手が不快に思わない待たせ方」をすれば、私の経験でお話すると、相手のイライラの9割は回避できます。誰でも相手を待たせる状況は起こるものです。だからこそ、ちょっとした待たせ方の工夫を仕掛け「待たせるけど、この人は悪い人ではない」と思われる工夫をしてみませんか。略