7〜8年前、プレミアムフードと呼ばれる「ちょっとこだわり系」のドッグフードの8割くらいがグレインフリー(穀物不使用)だった時期がありました。
その頃に比べると、今は少し落ち着いてグレインフリーではないプレミアムフードも増えている気がします。
またグレインフリーと表示されていても、キヌアやアマランサスなどの雑穀が使われているフードもあります。(グレインフリーの明確な基準って規定されていないからね)
雑穀では他にさまざまな種類のアワやキビ、身近なものではオート麦が使われているフードも多いですね。
ドッグフード原材料シリーズでもこれらの名前はよく登場しています。
これは人間のためのキヌア料理。こういう細かい粒々です。
Bernadette WurzingerによるPixabayからの画像
キヌア、アマランサス、アワ、キビなどは古代から食用とされており、古代穀物とも呼ばれます。
干ばつなどにも強く肥料や農薬も少なくてもよく育つので、現代の地球環境にもってこいです。
ここ10年くらいの間では米や麦に代わる新しい穀物としても注目されています。古代なのに新しい(笑
これらの雑穀は人間のための食材としてスーパーフードと呼ばれたりしますが、犬にとってはどうなのでしょうか?
(人間にとってスーパーフードという科学的な根拠は無いけどね😝 )
消化吸収や従来の穀物との違い、ドッグフードの原材料として最適なのか?
これについて、リンダ・ケース氏のブログThe Science Dogで、アメリカのイリノイ大学アーバナシャンペーン校の動物科学の研究者チームの論文が紹介されていました。
リンダ・ケース氏は動物科学者/動物栄養士/ドッグトレーナーで、彼女のブログは犬の栄養学についてとても勉強になります。
↑オートミール(オート麦)で作った犬用クッキー
さて、犬と雑穀の研究についてご紹介していきます。
このイリノイ大学の研究では、アマランサス、白キビ、赤キビ、キヌア、オート麦の5種類の穀物のデンプンと食物繊維の組成、消化率が調査されました。
また対照としてセルロースとビートパルプが比較されました。
まず最初の実験では、これらの穀物を犬に食べさせるのではなく試験管内で酵素を加えての加水分解で調査が行われました。
犬の消化器官内で起こることを化学的に再現して観察するということです。
この最初の実験の結果は、難消化性デンプンや糖類の含有量に多少の違いはありましたが、5種類の穀物全て消化吸収しやすいものであることが分かりました。
また5種の穀物はどれも食物繊維を多く含むものですが、この食物繊維の発酵性が比較されました。
発酵性というのは、食物繊維が腸内細菌のエサとなり短鎖脂肪酸を産生する性質です。発酵性は食物繊維がどれだけ腸内フローラで利用されるかの指標となります。
発酵性は有効な特徴であり、食物繊維の種類によって発酵性に差があります。
(この実験で比較のための対照とされたセルロースは発酵性が低い)
同じく対照とされたビートパルプはドッグフードに使用される食物繊維の代表格で、犬にとって最適な発酵性を持っています。
5種の穀類はこのビートパルプとほぼ同様の発酵性を持っていました。
試験管内での実験では、これらの雑穀はどれも犬の炭水化物源として悪くない感じです。
次に犬による実食で、実験用に特別に作られたフードが使用されました。
炭水化物源として5種の穀類(米、アマランサス、白キビ、キヌア、オート麦)のうちひとつを40%加えて作られた総合栄養食のフードが10頭のビーグルに与えられました。
犬たちは5種のフードのうちどれかが割り当てられ、そのフードを10日間食べました。
その後4日間、分析のための尿と便のサンプルが採取され、最終日には食後血糖値反応も測定されました。
5種のフードの消化率はどれも82〜86%と中程度でした。米以外の4種の雑穀では白キビが消化率86%と最も高く、キヌアが82%と最も低かった。
キビは他の穀類と比較して食物繊維の消化率も最も高かった。つまりキビには水溶性または発酵性の食物繊維が多く、プレバイオティクス効果が高いと言えるようです。
便サンプル中の微生物の豊富さと多様性は5種類ともほぼ同様で、どれも健康的でした。
便の質は5種類とも全て正常でしたが、キヌアとアマランサスのフードでは便の量が多くなっていました。(白キビでは1日46g、キヌアとアマランサスでは1日68g)
「で、どうなの?どのコクモツが犬に良いの?」
リンダ・ケース氏によると結論は「あなたが何を期待するかによって答えは微妙に違う」
例えばドッグフードや手作り食の炭水化物源として、できるだけ環境への影響が少ないサステイナビリティ(持続可能性)の高い食材を選びたいならキビやアマランサスなどの雑穀は最適です。
またプレバイオティクスとして期待できる食物繊維を含み消化しやすい炭水化物を犬に与えたいなら、雑穀はやはり最適です。ただし小麦や大麦の全粒粉、玄米粉などでも同じ効果は期待できます。
小麦やコーンなど従来の穀類にアレルギーがある場合には、もちろんこれらの雑穀が最適です。
しかしメディアやメーカーが「スーパーフード!」ともてはやすように、これらの雑穀でバリバリに健康増進を目指すつもりなら、そこまではあまり期待しない方がいい😅
もちろん良質な食物繊維の摂取は犬にとっても良いことですが、それが全てではないからね。
ドッグフードの原材料一覧にこれらの雑穀の名前を見たら、今までよりも理解が深まりそうな気がします。
- アマランサスとキヌアはウンチの量が増える
- キビは消化率が高く、プレバイオティクスとしての効果も高い
- オート麦は全体的にバランスが良い
↑これらは手作り食の材料として使う時にも知っておくと良さそうですね。
オート麦の加工品であるオートミールは手に入りやすく調理も簡単でお勧めです。
キヌア、キビ、アマランサスは調理したものを挽肉に混ぜてハンバーグ風にすると、ポロポロしないので犬も食べやすいです。
犬と雑穀について、お役に立てば幸いです。
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