宋斤の俳句「早春」昭和十一年二月 第二十一巻二号 近詠 俳句
近詠
日脚やゝ伸びたり旅を思ふのみ
一帆にひたと凍雲逮びけり
宿墨に水を足しては寒二句
隙間風頬をもてゆきてあたりけり
牧場や欄の根侵す寒の水
大寒の月西となり藪がしら
蓮骨に涸れのひと橋辨才天
寒凪の水の闇こそ蕩ぐかな
笹鳴や日南の沈む枯れの中
寒燈の窗々兵舎宵のほど
風花やなほ朝顔の枯れの葛
凍江や旦の鳥舞ふて往く
野施行の遅れ挑燈消えにけり
冬眠や鉢をまはすに河鹿の眼
寒雁のまぎれて雲のあきらかに
雁山君令妹逝く
通夜更けぬ北國びとの雪語る
御佛の國にも降るや雪散華
正月
正月の伊勢路に得たる古鈴哉
正月やひと日泊れば二日經つ
早春社一月本句會
初渡舟入江の凪をすべり出づ
初雲のそよぐとばかり上がりけり
行く年を野の一平に枯れ果てゝ
から風の吹いて青しや竹筏
闇汁會
闇汁へ遅參を入るゝ一包
早春社六月十月例會
臼の音障子貼る手に來りけり
近詠
日脚やゝ伸びたり旅を思ふのみ
一帆にひたと凍雲逮びけり
宿墨に水を足しては寒二句
隙間風頬をもてゆきてあたりけり
牧場や欄の根侵す寒の水
大寒の月西となり藪がしら
蓮骨に涸れのひと橋辨才天
寒凪の水の闇こそ蕩ぐかな
笹鳴や日南の沈む枯れの中
寒燈の窗々兵舎宵のほど
風花やなほ朝顔の枯れの葛
凍江や旦の鳥舞ふて往く
野施行の遅れ挑燈消えにけり
冬眠や鉢をまはすに河鹿の眼
寒雁のまぎれて雲のあきらかに
雁山君令妹逝く
通夜更けぬ北國びとの雪語る
御佛の國にも降るや雪散華
正月
正月の伊勢路に得たる古鈴哉
正月やひと日泊れば二日經つ
早春社一月本句會
初渡舟入江の凪をすべり出づ
初雲のそよぐとばかり上がりけり
行く年を野の一平に枯れ果てゝ
から風の吹いて青しや竹筏
闇汁會
闇汁へ遅參を入るゝ一包
早春社六月十月例會
臼の音障子貼る手に來りけり