「悪人」(10)の原作・吉田修一✖︎李相日(り・さんいる)監督再びタッグ。
「悪人」はそんなに好きじゃなかったけど、気になってたので初日に鑑賞。
随分とまた豪華キャスト揃えたなーと思ってたら
配役には「映画 『オーシャンズ11』のようなオールスターキャストを配してほしい。」と原作者・吉田修一からの要望に応えたとのこと。
「悪人」に続き出演の、妻夫木聡はじめ
森山未來、松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず、宮崎あおい、渡辺謙と本当に豪華。
他、原日出子、高畑充希、池脇千鶴、ピエール瀧、佐久本宝、三浦貴大ほか。
豪華キャストだから良いってもんじゃなく、さて内容はどうでしょう。
ある夏の暑い日に八王子で夫婦殺人事件が起こった。窓は閉め切られ、蒸し風呂状態の現場には、『怒』の血文字が残されていた。
犯人は顔を整形し、全国に逃亡を続ける。その行方はいまだ知れず。
事件から一年後。千葉と東京と沖縄に、素性の知れない3人の男が現れた。
千葉。
3か月前に突然家出をした愛子が東京で見つかった。彼女は歌舞伎町の風俗店で働いていた。愛子を連れて帰った父・洋平は、千葉の漁港で働く。8年前に妻を亡くしてから、男手一つで娘を育ててきた。愛子は、2か月前から漁港で働きはじめた田代に出会った。
東京。
大手通信会社に勤める優馬は、日中は仕事に忙殺され、夜はクラブで出会う男と一夜限りの関係を続けていた。彼には末期がんを患う余命わずかな母がいた。ある日、優馬は新宿で直人に出会った。
沖縄。
また男と問題を起こした母と、夜逃げ同然でこの離島に移り住んできた高校生の泉。ある日、無人島でバックパッカーの田中に遭遇した。
殺人犯を追う警察は、新たな手配写真を公開した。その顔は、出会った男に似ていた。
よく見たら結構系統は同じ?
(いや同じではないけど、整形前や整形後の写真を見ると、ちらっと映る映像では明らかにこの右二人の顔だったよ)
指名手配中の殺人犯である男は誰なのか、それを突き止める話ではない。
愛した人が殺人犯だった時、赦せるか。そういう話でもない。
怒りはどこへ向かうのか。
愛する人を心から信頼するということは。
8/10(83点)
ネタバレあり
展開を先読みしながら見て、同時進行のはずなのに、
この3人が同一人物で、整形しながら少しづつの時間差での出来事を並べてるのでは?とか
もしかして多重人格系?とか逆に深読みしてた 笑
犯人は確かに一人。
でも、犯人探しの映画ではない。
3つの土地で、それぞれの多様な愛の形を描く。
どんな出会いでも最初はどんな人なのか、わからない。
素性がだんだんと見えてきたとしても、嘘かもしれないしすぐに信用できるのかわからない。
付き合いが深く長くなっていく中で、それが愛に変わっていっても、
相手をどれだけ信用していくことができるのか信頼しあえるか。
それは付き合った年数の問題でもないし、お互い心をどれだけ開いて見せ合うか。にもよる。
長く付き合っていたって、全てを見せあうのが理想的な関係だとは言えないけど、
「信頼している」と思うのであれば、嘘やごまかしは良くないし、後々の関係の中で大なり小なり亀裂の原因にもなりかねない。
殺人事件が起きた後、それぞれのパートで
千葉、東京、沖縄での愛や信頼関係が描かれていくけれど
たとえ小さくても「秘密」を持った関係はうまくいかないし、「信頼」や「愛」を求めるなら
丸ごと自分自身を見せないといけないと思う。
秘密を持ってしまう関係に理由があったとしても、、、。
3つのうち、2つは悲劇に終わる。
実際、過去に殺人を犯した男は、3人のうち誰でもおかしくないように
過去が不明瞭だったり、怪しい雰囲気から引っ張られていく
わたしの予想は普通に外れて、こんな無人島に住んでる人、すぐにホイホイ会いに行ったりしないよなー
って思いながら見てたけど、その後のいい人っぷりですっかり騙された。
見かけは普通の人、いい人。そんな人が、殺人を犯したりでニュースになったりもする。
一見優しい感じの森山未來くん演じた男が。
人って本当に見かけじゃわからない、簡単に信じちゃいけない。そんなことを教える作品では、もちろんない。
悲しいのは、愛してたのに最後まで信じきれなかった妻夫木聡と綾野剛の関係。
優馬と直人、優馬の母親との別れ含め、悔やんでも悔やみきれない後悔。
とても悲しい結末になっていた。
女の子と一緒にいる時に偶然見かけて受けた誤解、
不信感からあっという間に信頼が崩れていき思いが揺らいでくる。
しかも指名手配犯に似てるとなれば誰だって怖くなる。
そこで本当に愛しているなら、もっと突き詰めるべきだったのかもしれないし
逆にそれをできなかった。信じてやれなかったことへの後悔。
それを描いてるんだから仕方がないけど。。。
沖縄でのパートは森山未來くん演じる、田中の本性が徐々に見えてくる時の怖さは格別だった。
人間の持つ本性が見えるその時。
簡単に信用して慕っていた気持ちが音を立てて崩れ去る。
壁に描かれた二つの「怒」の文字。
事件そのものより、
彼のような人間を生んでしまった背景がすごく気になってしまうわたし。
やっぱり家庭環境もあるだろうし、全てが許せいという、満たされない思いかそれとも。
優しくされてもそれを憐れみだと感じ、怒りに変わる。
しかし沖縄って本当に海が綺麗だな。
キャストは皆さんよかったけど、
渡辺謙さんはいつも演技が力みすぎてなんとなく自然な感じがしないのよね、、、
そんなに泣かなくてもって思っちゃった
ここ感動するとこだね、 ごめん
特に森山未來くんと妻夫木聡くん、控えめ演技が静かに寂しかった綾野剛さん。よかったな。
BLシーンばかり注目されてる気がするがそこももちろんよかった 笑
ある一件によって
無邪気な笑顔が消えてしまった、、、、、。
劇場で是非ておくべき作品。
怒り 2016年 日本 141min
9月17日より、公開中〜