なぜ、戦わなくてはいけないのか。
と戦争映画を観るたびに思う。本当に、人と人が殺し合い、勝っても負けても双方に悲しみが残る。
俳優、メルギブソンの「パッション」「アポカリプト」に続く監督3作目は
アメリカVS沖縄戦を描いた衝撃の実話の映画化。
重い気持ちになりたくなくてしばらく観ないでいたけど、メルギブの監督作は前二作とも好み。
今回も楽しみにしてた。アカデミー賞作品賞、主演男優賞、監督賞ほか、5部門でのノミネート作品。
受賞したのは、編集賞と録音賞。
武器を持つことを拒否しながらも、地獄の戦場で75人もの命を救い、終戦後、
良心的兵役拒否者としてはアメリカ史上初めての名誉勲章を授与された実在の衛生兵デズモンド・ドス。
彼を演じるのは、最近では「沈黙 -サイレンス-」も印象深い演技力を見せつけたアンドリュー・ガーフィールド。
相変わらず長い首が目立つ。
戦場へ赴く前に出会う運命の人、ドロシーにテリーサ・パーマー。
この子のデビュー時から言ってるけど、ほんとクリステン・スチュワートそっくり。
もっと聡明な美人にした感じ。(右、テリーサ)
なんと軍を仕切る怖いハウエル軍曹に、普段コメディばっかりのヴィンス・ヴォーン。でびっくり。
最初はヤなヤツ。大尉にサム・ワーシントン。こちらもハマってた。
父親にヒューゴ・ウィーヴィング。
8/10(80点)
原題の「ハクソーリッジ」とは、沖縄での戦闘地だった前田高地での切り込まれた崖のこと。
やっぱり実在の人物、そして実際の出来事の映画化は興味深い。
ましてや、日本の沖縄戦での話。
戦争ものというと、重いし敬遠する人もいるだろうけどそこはメルギブソン監督の手腕。
戦場へ突入するのは中盤以降で、 敬けんなクリスチャンである彼がどうして武器を持たないという信念に
至ることになったか、愛する人との出会い、軍隊に入ってからのいじめ等、、、しっかり見せて惹きつける。
一瞬にして、仲間の、自分の、腕や脚や身体、頭、すべてが飛ぶ。(そしてそれは敵も同じ)
そんな現状を目の当たりし、戦争の恐ろしさを改めて映像の中に見る。
コンシェンシャスオブジェクター。
これは、要約すると良心的兵役拒否。
一般的には戦争に行きたくない人が使う言葉らしいけど、デズモンドは戦争行きを志願する。
初めて聞いたけど、お国のために戦うことを志願しながらも拒否することができるんだね。
自分も若い頃に戦場で大事な友人たちを失った父親は行くなという。
それでも皆が行って戦うのに、自分だけが残ることはできない。
(もちろん強制的に兵役に行かされるというところもあっただろうけど)
愛する人とやっと結ばれて、これから幸せな人生が始まるというタイミングでの辛い別れ。
彼は結局、衛生兵として、武器を持たずに戦場で仲間を助けるという道を希望する。が、戦場ではそう簡単にはいかない。
武器を持たないなんて認められないと上から言われ、仲間にも迷惑をかける。
どんなに嫌な奴や上司である軍曹からいじめを受けても耐え、曲げない意思と信念。
そして何より そんな相手たちだったのにいざ戦争になると 自分のことは考えず
まずより多くの仲間を助けたいという思いで戦場で皆と共に戦う。
武器を持たないというのは丸裸で戦場にいること。
よく生き延びて、75人もの命を救ったなとその凄まじさと生命力信念の強さに圧倒させられる。
敵は日本兵たちだけど、日本をもちろん悪者に描くでもなく、
とにかくリアルに描き出した群臣の一作。
「神様、あともう一人だけ助けて」と言いながら 一人でも多くの人の命を救った。という彼の言葉が印象的だった。
アメリカの田舎町で育ったデズモンド・ドスは、看護師のドロシー・シュッテと恋に落ちるも、激化する第2次世界大戦に心を痛め、衛生兵になるべく陸軍に志願する。しかし基地での訓練で銃に触れることを拒絶し、上官や他の兵士たちから執拗ないやがらせを受けるようになる。それでも決して信念を曲げないデズモンド。とうとう軍法会議にかけられてしまうが、ついには彼の主張が認められ、晴れて衛生兵として戦場に立つことを許可される。こうして日本軍との激戦の地、沖縄の前田高地、通称ハクソー・リッジ(のこぎり崖)へと赴くデズモンドだった…。
HACKSAW RIDGE 2016年 オーストラリア=アメリカ 139min
6月24日より、公開中〜
実際のデズモンドとドロシーご夫妻。
プレミアにて。
先日のアカデミー賞レッドカーペットでのメルギブソン監督。
おおとりでの登場で大歓声。大人気でした〜。 撮影 mig