2016年・第69回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で男優賞と脚本賞を受賞
アカデミー賞で、外国語映画賞を受賞したイランとフランス合作映画。
アスガー・ファルハディ監督作の過去作は「彼女が消えた海辺」「別離」「ある過去の行方」
を観てるけど、どれもイランの社会を反映した考えられる作風。
本作でアスガー・ファルハディ監督は、ドナルド・トランプが発令した
イスラム圏7か国出身者の入国を禁止する大統領令への抗議で授賞式を欠席して話題にもなった。
さて、先月公開後すぐ観てたけど他のを優先してたらこんな時期に 笑
マリリン・モンローの3人目の夫でもあったアーサー・ミラーの戯曲、「セールスマンの死」
主人公はその「セールスマンの死」の公演を間近に控える夫婦エマッドとラナ。
ファルハディ監督作「彼女が消えた浜辺」でも共演したシャハブ・ホセイニとタラネ・アリドゥスティが夫婦で再共演。
ある晩、エマッドが帰宅すると、妻が何者かにレイプされていた。
が、妻は全く真相について語ってくれず、エマッドは自力で犯人捜しを始める。
お国柄、レイプシーンは出せないから観る側の想像になっている。
女性がそんな目にあったというとあちらでは女性にも問題があるということになるため、
警察にすら言えないということになる。
6/10(60点)
ネタバレあり
住んでいたアパートが崩れかけ、引っ越しを余儀なくされた夫婦。
やっとの事で知人からの紹介で借りた部屋は、前の住人の荷物が置かれたまま。
その住人も次の部屋が見つからず、とりあえず置いてあったような状況の中、
新たに住人となった夫婦が住んでいるとも知らず訪れた客。
それがレイプをした犯人。
実は前の住人は娼婦だった。
それで訪ねてきた客の男が入ってきて、シャワールームにいた女性(引っ越してきた夫婦、ラナ)が
あまりに綺麗だったためそのまま犯してしまった。
犯人探しに奮闘していた夫は、置いてあった車や携帯電話から
犯人に近づいていく。突き止めたと思ったパン屋の配達の男は実は結婚間近。
夫は配達をその本人に頼んで、本当のことを聞きだそうとするも、
忙しいということでその店のオーナーである老人が代わりに夫の前に現れる。
おたくの娘の婿がイカガワシイ娼婦の元に通っていて、自分の妻を、、、、と話す。
なんと犯人は、思っていた男ではなく、その妻の父親、つまりそこにいる老人=セールスマン だった!
と言ってもあっさりその真実がわかるというより、心臓の悪い老人を追い詰め、
家族に電話することで恥をかかせて復讐するというもの。
それを、舞台「セールスマンの死」の進行とリンクさせて見せるのがうまくできている。
「セールスマン」は最後の方で登場。
でもうーん。
当のレイプされた(であろう)奥さんは許している(というか沈黙)で、
なんだか問い詰めた夫が悪く、
そのお義父さんがかわいそうな風な構図になっているのが気になった。
簡単に自分がレイプされたことを公にできないししたくもない国の事情もあるけど
それを秘めたままにしようとする妻と、我慢ができない夫の対比。
家族には優しく、そんなことをするとは思えない老人。妻にも体のことを心配されている
この人がいないと生きていけないとまで言うほど夫を信頼し、愛してる老人の妻との対比。
そこのところが上手く描かれている。
けど、個人的には レイプしたのは絶対的に悪いし、許されるべきではない行為。
夫が復讐しようとする気持ちもわかる。
だけどそこで許してくれ自分は妻もいるし、娘がこれから結婚するのにそんなこと言えない。
なんて勝手過ぎる。
夫の性格についても前半で学校の先生である夫の様子や、他人との触れ合い方を見せることで
わかりやすくしているのだけど、
復讐心と、自責の念とを怖いくらいシリアスに描いた、わたしが大好きなミヒャエル・ハネケの
「隠された記憶」に通じる、ところもあるなと思えた。
夫婦で小さな劇団に所属するエマッドとラナ。上演を目前に控えたアーサー・ミラー原作舞台“セールスマンの死”の稽古で忙しいさなかに、自宅アパートに倒壊の危険が生じて立ち退きを余儀なくされる。2人は友人に物件を紹介してもらい、まだ前に住んでいた女の荷物が残る部屋に慌ただしく引っ越す。それから間もなく、ひとりでシャワーを浴びていたラナが何者かに襲われ、頭部を負傷する事件が起きる。以来、心に深い傷を負ったラナは精神的に不安定になってしまう。一方、犯人を捕まえるために警察に通報しようとしていたエマッドは、表沙汰にしたくないラナの頑なな抵抗に遭い、苛立ちを募らせるが…。
FORUSHANDE/THE SALESMAN 2016年 イラン=フランス 124min
6月10日より、公開中〜