songbookの自己回顧録

「教えて!goo」で見つめてきた自分自身と、そこで伝えられなかったことを中心につづってきましたが、最近は自由なブログです

ちりとてちん ソナタ論4

2009-05-11 05:29:37 | マスコミ関係
【勝負の展開】
展開部分は、音楽もドラマも、一番肝心なところです。

ちりとてちんでは、本格的に物語が動き出すのが2週目以降です。
ソナタ形式の音楽でも、この展開の仕方に、曲の善し悪しがかかってきます。

しっかりと提示部で示された主題(メロディの動機)が生かされているか
二つの主題はからみあうのか、その絡み合い方は美しいか
作曲的ないろんな手法が、効果的に駆使されて、主題がいろんなところで形を変えて顔を出しているか

など、できるだけ少ない素材をあらゆる手法で料理してからませ、一つの世界を作り上げていくところが展開部です。

ちりとてちんにおいては、この部分が秀逸でした。
ほとんどのエピソードに、無駄がない。どこかの部分に対応していたり、かなりの時を隔てて再現されたり。

いつしか、ちりとてちんの代名詞ともなる言葉が、放送中も、その後も多用されるようになりました。
「伏線を張る。」
これなくして、このドラマを語ることはできません。
この、伏線の張り方と対応の仕方こそが、ソナタにおける主題の展開、再現をほうふつさせるものなのです。

具体例をあげたいと思ったのですが、枚挙にいとまがない。ほとんどこれでできているドラマといってもいいぐらいです。
何気ないシーンが、小道具が、セリフが。どこかへの伏線として生かされてくる。
その絶妙さは芸術的と言ってもよいほどであります。オタクを呼ぶ要素でもあります。

ソナタは、その展開を繰り返しながら「再現部」へとつながっていきます。
ちりとてちんにおける「再現部」は、伏線に対する対応でもありますが、ここでも多用される言葉が出てきました。
「回収」です。
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ちりとてちん ソナタ論3~ソナタなのに序曲、第1週

2009-05-01 03:54:02 | マスコミ関係
ソナタ、ソナタとはいっても、もちろんテレビドラマですから、完璧にあてはまるというわけではありません。

第1週目は、ソナタのモチーフととらえることもできますが、もしかしたら、オペラの「序曲」ととらえたほうがしっくりと来るかもしれません。
序曲というのは、それほどはっきりした定義を持つ音楽ジャンルではないのですが、一応は、オペラなどの音楽の冒頭に流されるもので、そのオペラで使われる、おもな音楽のエッセンスを凝縮した、ちょっとオムニバスっぽい音楽です。劇全体の性格や粗筋を予告するように作曲された、種明かし的な性格を持つもの。

ただし、放送時は、この第1週目がそのような役割を果たしていたことなど、誰一人気づいていなかったはずです。後追いで見始めた私はもちろんのこと。

すべて、後で見返した時に気付くのです。「ああ、すべての要素は、1週目に暗示されていたのだ」と。
書き始めたら枚挙にいとまがないのですが、
・A子、B子の登場とキャラクター(最後まで展開します)
・塗り箸への哲学(最後まで、骨組みとなります)
・落語(声が渡瀬恒彦であることは視聴者にはすぐわかってしまうのですが、一応大いに絡んでいきます。このテープが、あちらこちらで大きなカギとなります)
・2件の和田家(23週にわたって展開)
・何があっても天災(少なくとも16週までは展開)
・友春を殴りつける出会い(小草若に対応していく)
・箸で作る恐竜(恐竜も、結構絡みます)
・スカートやぶれとぱんつ(こんなものがまさか、テープ入れとして最終週まで絡んでいくとは)
・鯖を焼き損ね、一升瓶を落として泣く喜代美(喜代美の性格を語る上で、実は重要な布石)
・「喜代美、おまえは笑って暮らせ」→梅丈岳のかわらけなげ(言わずと知れた名シーンであり、以後すべての喜代美の人生を支え、苦しめていく重要な約束)

まだまだありそうですが、さっと思い出すだけでもこれだけ。

もしかして、その後の展開や結末を知っている私たちからすれば「宝の山」のような第1週も、もしかしたら放送当時は、「なにこれ?」だったかもしれませんね。ポイントポイントに感動的な話は盛り込まれてはいるものの、「どうしてこういう場面が放送されているのか」と疑問視されたところもあったかもしれません。

たとえば、ぱんつ。
車のドアに挟まれたスカートが破れてしまうシーンは、放送当時は「喜代美のどんくささ」を表すための描写を、ちょっと危ないとも解釈されるサービスシーンのようにして放送したのかな?と、微妙な疑問を残したのではないかと思われます。

ところが、この破れたスカートを基にして作られた小袋(カセットテープが入ります)が、喜代美の人生を支えるアイテム、多くの登場人物をつなげていくアイテムとして、最後まで絡んでいくのですから、わからないものです。

たとえば、吐き気。
第1話、始まってわずか数分で、車内で喜代美が「気持ち悪い」と言ったのを両親が車酔いと勘違いして、車から降ろして吐き出させようとするシーンがありますが、朝ドラマとしては疑問視されるほど、ちりとてちんにおいて「吐き気」というのは結構重要なアイテムとして物語のあちらこちらにちりばめられていきます。

まあとにかく、見返せば見返すほど新たな発見で舌を巻くばかりの、第1週における序曲ぶり。

そしていつしか番組のファンは、「伏線」という言葉のとりことなっていくのであります。
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