淡い乳青色のお風呂につかって、雨の音を聞いていた。
浴槽の縁に「旅の宿 奥飛騨」の袋が立てかけてあった。
そうですか、今夜は奥飛騨ですか...
昔、会社の旅行で家族全員参加で行ったよね
出発の朝、お父さんの顔が片頬落ちて歪んで、急遽、お父さんは
行けなくなった。
体はなんの異常も無いのに、顔だけがゆがんで....
俊と菜見子と3人で出かけた。
その頃、お母さんは閉所恐怖症気味で飛行機に乗るのも怖かったんだ~
そのことを知っていたのはお父さんだけだった。
2泊3日の旅行の幹事はお母さんだったから、絶対に行かなければいけなくて..
気持ちは大変だった。
お父さんの心配より、自分のことが正直心配だったの。
1泊めは奥飛騨温泉、
バスが宿泊ホテルに着いたとき、
「会社の方が到着されています」とお迎えのホテルの人に言われて
? ? ?
部屋に向かう長い廊下の向こう側から、お父さんが歩いてきた...
眼帯をして、左手を頬に当てて...
みんな、みんな、びっくりしたよねえ...
お父さんはお母さんのことが心配で来てくれたの、
そんなお父さんだったよね...
キミが入れてくれた入浴剤、奥飛騨のおかげで
寒い夜が思い出とともにほっこりしました。