KADOKAWA発の文芸情報サイト「カドブン」で、
東田直樹さんのエッセイ(毎週水曜更新)
「東田直樹の絆創膏日記」が掲載されました。
ご興味のある方は、 ここをクリックしてくださいね。
KADOKAWA発の文芸情報サイト「カドブン」で、
東田直樹さんのエッセイ(毎週水曜更新)
「東田直樹の絆創膏日記」が掲載されました。
ご興味のある方は、 ここをクリックしてくださいね。
ミノ君(高2)は最近、また学校に行けなくなりました。
心配したお母様が、カウンセリングに連れていったようですが
「学校に行かなくても死にはしない。」とか、
「母親のせいでこうなった。」等と答えるだけで、何の進展も無かったそうです。
お母様からは、昨日のレッスンの直前に、
「それでもピアノには行くそうです。どうぞ宜しくお願い致します。」
と連絡がありました。
しかし私は、何も知らない振りをしてミノ君を迎えました。
ミノ君は、穏やかな表情でレッスン室に入って来ましたので、
私は少し安心して、オリンピック等の話をしました。
そして「今週は練習出来た?」と聞いてみました。
前回のレッスンの時に、次回までには、ちゃんと練習するように約束したからです。
ミノ君は「それが。。。ちょっと忘れていまして。」と答えました。
最近は、練習した日にちと、時間を書かせるようにしているのですが、
メモ帳に記されていたのは、前日の20分と、当日の30分だけでした。
「2週間で50分は、ちょっとがっかりだねぇ。」と言いましたら
「レッスンの間が開くと、つい後回しになってしまって。。。」と答えました。
ミノ君は高校生になってから、1ヶ月に2回だけレッスンに来ています。
高校生は忙しいので、無理のないように~という配慮です。
しかし、レッスンとレッスンの間が開いてしまうのが難点なのです。
「そうだね。 間が開くと、つい練習を後回しにしちゃうよね。
だったら、今度から毎週来る? その方が練習するんじゃないかな。」
と提案してみましたら、
ミノ君は驚くほどアッサリと「はい、そうします。」と言いました。
一昨年、ニノ君は数ヶ月間、学校へ行けませんでした。
その頃に、度々家庭訪問をして励ましてくれた担任の先生が
「ミノは、学校にも、どこにも行かず、ずっと家に居て楽しいのか?」と聞いた時、
ミノ君は「ピアノには行っています。」と答えたそうです。
そして「ピアノの先生は、こう先輩(仮名)のお母さんです。」とも言ったそうです。
その担任の先生は、偶然、次男が高校2~3年の時の担任の先生だったので、
私にその様子を知らせてくださったのです。
それから程なくして年が改まり、ミノ君は再び学校へ行けるようになりました。
留年の危機を、ギリギリのところで食い止められたのです。
そんな経緯もありましたので、
毎週レッスンに来てもらうことは、ミノ君にとって意味のあることになるかもしれません。
そうだといいな~と思います。
昨日は、テツ君(3年生)のレッスンでした。
「練習はしたんだけどなぁ~」と言いつつ弾き始めた宿題は、
やはり残念な仕上がりでした。
「あれっ? 頑張るテツ君なのに、どうしたのかな~?」と言うと、
すまなそうな顔で神妙にしています。
なので、何度か片手ずつ練習させると、テツ君は、正確に弾けるようになりました。
「ほらね、ちょっと練習したら、テツ君は弾けちゃうんだよね。」
「うん。」
「でも、お家での練習が少なかった罰ゲームとして、もう1回お家で練習してきてね。」
「うん。。。」
「さて、それでは、発表会の曲も練習しよう」
「出来ないよ。」
「えっ? 何で?」
「今度の曲は、長いから、間違えるかもしれないし。」
「テツ君なら、大丈夫だよ。」
「やっぱり、この前練習した曲にする。」
1月17日の記事にも書きましたが、
テツ君は、最初に予定していた発表会の曲を、たった1週間で仕上げてきたのです。
それに感動した私は、
少しだけ難しい曲を、発表会の曲としてテツ君に与えたのでした。
「ららみ先生は、テツ君ならば、この難しい曲を弾けると思うんだけど?」
「無理だよ。」
「何で?」
「難しい曲を弾いて、間違えたら嫌だから。 前の発表会の時、僕、間違えたから。」
去年の発表会の時、
テツ君は1カ所だけつまずいた箇所があり、その事を気にしているのです。
間違えた~と言っても、普通の人には分からない程の音の擦れがあっただけなのですが、
テツ君は、ずっと気にしていたのでしょう。
「テツ君は間違えた、と言っているけど、先生も気が付かない程だったよ。
それに、テツ君は、あれから随分と上手になっているから、
今度は大丈夫なんじゃないかな?」
「無理」
う~ん、困ったな~
テツ君には「来週、もう1回話し合おうね。」と言ってレッスンを終えたのですが、
私の中には、大きな宿題が残ってしまったのでした。
最近流れているCMで、かなり気になる物があります。
◯ルーチェのCMです。
男の子とお母さんが、一緒に◯ルーチェを作っているCMなのですが、
放送を見る度に、少し暗い気持ちになります。
CMの中では、牛乳をボールに注ごうとしていた男の子が、牛乳を大胆にこぼしてしまいます。
画面の外に居る私ですら「あ~あっ」と思うレベルの量の牛乳が、テーブルに
でも、CMの中のお母さんは、それを咎めもせず、大らかに笑っているのです。
もし、私があの男の子のお母さんならばどうしたでしょうか?
きっと「もおっ」とか、
「だからゆっくり注ぎなさいって言ったでしょ」と言ったに違いありません。
いえいえ、言ったに違いありません~ではなく、
似たような場面の時、私は確かに息子達を叱っていました。
今思うと、小さい息子2人を育てていた時は、心に余裕が無くて、いつも怒っていたように思います。
息子達には、きっと怒りっぽい母親に見えたことでしょう。
お母さんは、いつも怒っているなあって。
それでも無事に大きくなった息子達に、私は心の中で「ごめんね。」と呟きます。
至らないお母さんで申し訳なかったね、と今頃になって反省しているのです。
ただ、あのCMには、ひとことお伝えしたいです。
子どもにお料理のお手伝いさせる時は、台所でした方がいいんじゃないかな?
だって、あのCMのテーブルの下、高価そうなフワフワの絨毯が敷いてありました。
フワフワの絨毯に牛乳をこぼしたら、後始末が本当に大変ですよ~
一昨日は、マサ君(6年生)のレッスンもありました。
マサ君は最近本当に大きくなって、今は160センチ以上あります。
声も男の子の声になり、春からは中学生になるのだな~としみじみと思います。
でも、雰囲気は可愛らしいマサ君のままなので、
そのギャップが何とも言えず微笑ましいのです。
一昨日も、入って来るなり
「こう君は、何時に帰りますか?」と、満面の笑顔で私に尋ねます。
こう君(仮名)と云うのは私の次男です。
何時もマサ君のレッスン中に部活に出かけるので、
帰宅時間が気になって仕方がないのです。
「こう君は、12時半に帰ります。」と私が答えると、
マサ君は嬉しそうなお顔で、
「そんなに遅く帰ってはいけません」と言うのです。
この会話が、最近のマサ君のお気に入りのルーティーンです
さて、そんなマサ君ですが、最近は8分の6拍子を、よく理解してくれて、
初見でも間違いなく弾けるようになりました。
それでも、両手で弾くときは、時々突っかかってしまいます。
するとマサ君は「やっちまったなぁ~」と大きな声で言うのです。
そして、大きな声で笑うのですが、そのお顔は本当に嬉しそうです。
30分間のレッスン中に、マサ君は
「やっちまったなぁ~」と、5~6回は言ったでしょうか。
マサ君が帰った後。。。
私の頭の中は「やっちまったなぁ~」と言うマサ君の声が響いていて、
独りで笑ってしまうのでした。