Men's wear      plat du jour

今日の気分と予定に、何を合わせますか。 時間があれば何か聴きましょう。

着心地

2011-06-03 | Jazz
 借りた傘を返しにいったはずが、帰りにはまた同じものを持たしてもらって、子供の遣いみたいな気分です。
つぎつぎ湿った靴がたまって、気持ち良く乾くような晴れ間が待ち遠しくて仕方ありません。

と書いておいたら、火曜日は寒いくらいに涼しくて湿度の低く快適な、梅雨の中休みとなりました。



先日、あまり試したことのないブランドのスーツに、誘われるまま袖を通してみました。
どことなく違和感を覚えながら鏡を覗くと、私の体型の悪さを差し引いても、その製品がどちらかというと横にふくらむ扁平なパターンなのだと気づきました。
極端にいうと、身体の前後に張り付いて、脇腹のあたりには隙間がある感じといったら伝わりますでしょうか。

そうした服に出会うと、普段着ているものが別段意識しなくとも十分ゆとりを感じるようどちらかというと前後にふくらみ、脇が廻り込むよう立体的に身体に沿った設計であることを再認識させられます。

ここ二十年近くの間に、優れた海外の製品がいろいろ紹介され、メーカーには良い見本となって、実際にすばらしい着心地をもつ商品へと昇華させた会社もあります。
一方、何故それらが優れた製品なのか、蘊蓄をかたむけた記事をまだ雑誌で見つけることの出来る現在でも、意外に反映されていない商品があるのは不思議な気がします。

イタリア北部の街に比較的マイナーですが優秀な工場があり、好みは別にして、そこのオリジナルには、十年以上前から既に身巾・袖巾が他社より細い商品もありました。
細くともこなれたパターンは、体操出来そうなくらい動き易いものです。
コストもこなれていた事から、数年すると大手アパレルや若年層にも人気の店が発注するようになりましたが、自社のパターンを持ち込むようになると、折角蓄積されている工場のノウハウが活きない凡庸な着心地の製品になっていました。

こうなると、ただMade in Italyのタグが付いただけで、内実はさほどのものはなく質を伴っていません。

そうした一昔以上前の理論ではカバーしきれない、優れたパターンをもつ海外の既製品も存在する現在、教育者の方は、良いパターンをひける人の育成がとても大事と口を揃えます。
日本にも経験豊富で優秀な技術者が活躍する工場がまだあるので、経験を補おうと積極的に勉強する気さえあれば、何とかなるような気もします。

いつか雨後の筍みたいに、その分野でも優秀な人材が多数輩出され、何処で何を着ても日本製は着心地最高なんていう日が来るといいです。韓国が今、盛んに芸能関係を強化しているみたいに。
着心地が完璧に近づいていけば、既にたいてい細かい仕事は丁寧ですから、あとは服としての全体の雰囲気だけです。うーん、これがそう簡単でないというより一番難しいか。

そういえば冒頭のスーツは、袖もただ安直に細くなっています。
ふとした瞬間に肩先から袖にうまれる空間が醸す、何とも言えない柔らかな笑みのような、そんな口で説明するのが難しい何でもない部分、そういう風情はまだ望むべくもありません。

またまたそういえば、十年くらい前の話でしたか、オーダーの際にデジタル・スキャナーみたいなもので身体をスキャンして採寸するというシステムを採用したアメリカの会社がありましたが、それと従来のアナログなメジャリングでは出来上がりがどう違ってくるのか興味あるところです。
またこの春くらいに、3D立体スリムだったかの商品名でCMがながれていた品も、服としての魅力は感じませんが、もし完璧ならそれはそれですごいことです。

半裸ですがレディー・ガガじゃありません。


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