森岡 周のブログ

脳の講座や講演スケジュールなど・・・

日記:再試験と学習性無力感

2011年08月10日 06時35分46秒 | 日記
この時期,奈良にいるのははじめてで,
いつもならよさこいで7月末には帰省しています.
今回はまだ仕事をしており,
高知に行くのも仕事の関係でのことになります.

同じように,学生も再試験に追われているのが実情で,
お盆前に大学で勉強とは,
ちょっとかわいそうだなと思います.
うちだけかと思えば,
先日名古屋で,盆明けに再試験という大学もあったので,
似たようなものか,
それよりはましかと思うのでした.

ただ,学生の顔をみれば,
切迫感があるものがほとんどですが,
中には,もはやなれというか,
落ちるという痛みに対してhabituationが起こっている者もいそうです.
慣れにより,あまり情動が反応しないというものです.
落ちることを学習してしまっているというか,
本来,努力と成績は相関するものだと思いますが,
ある程度努力したにも関わらず,
落ちてしまったということは矛盾であるために,
受け入れられないのですが,
それが続くと,その矛盾を脳がいつも消化することはできないので,
努力しても無駄ということを形成してしまいます.

すなわち学習性無力感です.
一度,これにはまるとなかなか視点を変えないと上昇気流に入れません.

努力しても報われないのではなく,
まだ努力が足りないと思って叱咤激励を自分自身にしてもらいたいものです.



日記:日本ペインリハビリテーション学会の船出

2011年08月09日 21時34分32秒 | 日記
先週末は名古屋で学術集会のシンポジウムでした.
ペインリハビリテーションを発刊して
はじめての学会であり,
いつもに比べて,どことなしか,
決意をもった集会でもありました.

この会を主宰する松原先生とは,
私が24歳の時にはじめてお会いし,
そして,一緒に執筆した沖田先生とは,
25歳以来の友人です.
とはいっても,24歳,25歳の時は,
それほどしゃべらず,
どちらかといえば,変った人だなとお互いに
けん制し合っていたのも事実です.
なんとなく,けん制する時期ってありますよね.

それが30歳をすぎ,
なんだかんだいって,学会でいつも一緒に行動するようになって,
おおよそ10年ほどでしょうか.
その10年の歩みが先日のペインリハビリテーションになるのでしょう.

痛みを20年以上研究してきた松原氏,
そして関節可動域を生涯の研究テーマとしている沖田氏,
そして,脳をそれなりに研究している私が
松原氏を軸として,
末梢と中枢で脇を固めるという構図の本になります.

なんというか,別分野の統合であるがゆえに,
広く読まれており,
これからを展望するものとなったのも事実です.

それは症候をベースに学問していく,
ひとつの方向性です.
意外とこの視点はなかったと驚きです.

例えば,骨折や,脳卒中と疾患がそのほとんどです.
痛みは末梢だけでも解決できない,
中枢だけでも解決できない,
ましてやメソドロジーだけでも難しい.
社会も含んだものとしてとらえていこうというのが,
コンセプトなわけです.

だから,麻痺という症候でも十分なのです.
それがきわめて今のリハビリテーション治療学には少ないと感じます.

ペインリハビリテーション学会がひとつの起爆剤となって,
このリハビリテーション業界,
そして患者さんに対して光を指す方向が打ち出さればいいかなと思っています.

今後とも日本ペインリハビリテーション学会(旧 痛みを基礎から臨床まで考える会)をよろしくお願いします.
日本学術会議への登録を終え,船出をします.

第16回痛みを基礎から臨床まで考える会学術集会のご案内

2011年08月03日 06時05分54秒 | 日記

第16回痛みを基礎から臨床まで考える会学術集会

8月6日(土) 
16:00 受 付

16:30 イブニングセミナー「ペインリハビリテーションの途について ~ヒトを対象として~ 」

イブニングセミナー1 「 基礎研究における痛みの病態と評価 」
    日本福祉大学 健康科学部 坂野裕洋
イブニングセミナー2 「 臨床研究における痛みの病態と評価 」
    長崎北病院 リハビリテーション部 西本加奈

18:30 懇親会

20:30 終 了


8月7日(日)
9:15 受 付

9:55 開会の挨拶

10:00 シンポジウム 「ペインリハビリテーション」
(途中休憩10分)

司会  長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科  沖田 実
     日本福祉大学 健康科学部   松原貴子

シンポジウム1 「 痛みの解剖生理学 」  (30分)
     名古屋学院大学 リハビリテーション学部 肥田朋子
シンポジウム2 「痛みの末梢機構」  (30分)
     長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科      中野治郎
シンポジウム3 「痛みの中枢機構(認知面)」 (30分)
     畿央大学大学院 健康科学研究科 森岡 周
シンポジウム4 「痛みの中枢機構(情動面)」 (30分)
     甲南女子大学 看護リハビリテーション学部 西上智彦
総合討論 (30分)

12:40 定例総会

12:55 昼休憩

13:40 研究発表1 (5題程度を予定)

14:30 休 憩

14:40 研究発表2 (5題程度を予定)

15:40 閉会の挨拶

会場案内
1日目:伍味酉 名古屋駅前店 4階プレミアムルーム EN

2日目:名古屋国際会議場 会議室234

申込・問い合わせ先
メールタイトルを「学術集会参加登録」とし,①氏名,②所属,③会員種類(会員:一般,学生,非会員:当日入会予定,非会員),④参加予定日(1日目,2日目,両日)を明記して,8月1日までに以下のアドレスにお知らせにお知らせください.

事務局:坂野裕洋 itamikaijimu@ml.n-fukushi.ac.jp
         (@を小文字の@に変更してください)



日記:十数年たって活かされる経験

2011年08月02日 06時35分10秒 | 日記
先週末は,福井での講演でした.
福井駅には修士課程2期生の民平が,出迎えてくれました.
Ⅱ期生は7名が修了しましたが,
この河村民平は,
大学院修了後,研究の面白さに取りつかれ,
母校の付属の福井県高次脳機能障害支援センターに移動し,
現在は,福井医療短期大学のST学科の講師をしています.

Ⅱ期生7名とも,各地で活躍し,
論文が掲載されたもの,
社会人大学院でなく,
大学院オンリーで他の大学院にいったもの,
大学院受験を考えている者,
県士会の役員として活躍している者,
そして結婚して,主婦プラス臨床をしているもの,
とそれぞれがおそらく大学院で得た経験を活かしていると思います.

経験とは論文という結果ではなく,
そこまで到達する努力です.
臨床との二足のわらじは
彼らにかけがえのない経験を残したでしょう.
そのような経験は血となり,肉となり,
とっさに活かされる知恵となるでしょう.

さて,講演前には,医師で医学博士であるリハ科部長の小林先生,
富山県高志リハ病院の院長で医学博士の野村先生にご挨拶し,
最近の動向などお話を伺いました.
やはり,医師はクレバーであり,
考え方に無理がなく,
話しててとても心地よい感じをしました.
セラピストに望みたいのは歩行訓練士でなく,
機能回復を求めるセラピストであるというお言葉をいただきました.
また,様々な治療テクニックに分解しすぎで,
自己満足になっているのかもしれない,との意見もいただきました.
それについては近い将来,なんとかしたい.

講演は2時間で
対象者がセラピストだけでなく,
医師,
看護師,
ワーカー
そして患者さんに家族と幅広く,
悩み,前半が表情から難しいと察知したため,
後半は,平易に解説しようと同じスライドですが,
変えていきました.
編に意識しすぎるとだめで,
そのままを表現しないといけません.
その表現は,経験が活かされるのです.

内容は,身体失認,半側空間無視,失行の
神経科学と臨床の考え方で,
やはり,半側空間無視が経験上,
よく理解されているため,
一番,受入れがよかったのではないかと思います.
終わってから,患者さんの家族からもそのような意見をいただきました.
・難しい内容でしたが、とても分かりやすかった。
・例えが分かりやすく楽しかったです。
・脳神経と実際の症状やアプローチ方法を関連付けたお話しで、大変勉強になりました。他の講演もぜひ聞きたいです。
・難しい内容を解りやすく、簡潔に話して頂けました。
・とても分かりやすく、面白い講演で良かったです。有名な方の講演を聞けて良かったです。
などなど,とその他にも多くの肯定的な意見をいただきました.
否定的な意見があったのかもしれませんが...

時に否定的意見が自分を成長させることが多々あるので,
そういう意見が必要です.
ただし,否定的意見の質があり,
その意見を無視する場合,つまり意見を述べている側に問題がある場合は,
そのコメントをもとに次回の修正をしようとも思いません.
このあたりは経験でしょうか.
そういう意見を聞いてもあまり凹まなくなりました,
心はだいぶ強くなってきたのでしょう.
学生のコメントの方がもっとヘビーなものもありますから.
もっぱら学生の授業評価も悪いことは最近ほとんどないので,
それなりに年をとってきたのだと,
自分を評価することもできます.

患者さんが社会復帰して,自分自身をそのように省みて,
自分の人生まんざらでもないと,評価できるように,援助したいものだ.




帰りも民平に送ってもらい,
サンダーバードに飛び乗りました.
福井での講演は4年連続かもしれません.
今度はゆっくりしたいと思います.
まだまだ小林先生や野村先生からも示唆に富むご意見を伺いたいと思います.
いつも講演に来ていただいている城鼻さんともゆっくり話ができませんでしたし...

しかし,帰りにいただいたお餅はおいしかった.
福井でしか手に入らないようなお土産でした.

私は甘党なので.
酒は好きだが,甘党.
ワインは好きだが,チーズは嫌い.

土産は甘党に限る(笑)