-以下、アマゾンへの寄稿・投稿文。
二〇一七年九月二十日発売 柴田淳「私は幸せ」CD音楽楽曲集・通常盤3,000円(+消費税)
5つ星のうち5.0
投稿者福島のあまっこ2017年9月20日
形式: CD
ヨドバシのネットで買ったら発売日の一日前に届いた。嬉しかった(アマゾンさん御免)。
しかし、「私は幸せ」というアルバムタイトルの割には、結構ヘヴィーでビターな大人の魅力といった曲達が並ぶ。三曲目の「轍」は、柴田さんも自身のラジオ番組「柴田淳のドクハク(東京エフエム)」で語っていたが、彼女が生徒だった時分に確かクモ膜下で若くしてお亡くなりになられた恩師がいらして、「轍(わだち)」とはその恩師の学級通信紙の名前。担任教師が「ほら、お前らこれを書け」と言って教室の机にバンと原稿用紙を大量に持ち込み置いて、柴田さんはワンワン泣きながら、何枚も何枚も亡き先生の棺に入れるべく、原稿用紙に別れの言葉を書き殴った。正にその若い先生と、今以上に若かった柴田さんとの、別れの歌がこの曲のモチーフである。
「助けてよ お願い連れて行って 何故私を一人 置いて行ってしまったの?」悲しい程に美しい詩。これは心して聞き手は聴かなくては、と思わせられた。一人のうら若き乙女の女性にとっては、過酷な体験。この事が、彼女のその後の生き方、歌の作風にまで多大な影響を与えたのは想像に難くない。
「嫌いな女」なんかも、ラジオで、本当に嫌いな女の人がその時浮かんだが誰だかは忘れたのか、兎に角、この曲もビターでヘヴィー。この柴田淳さんと言う方は、今作のアルバムでは容赦なく聴く者を刺激し、手厳しい。正に愛の鞭かも知れぬ。しかし、お声から、しばじゅんさんのやさしさは十分伝わって来る。そして、アルバム名「私は幸せ」の意味も、逆説なのか、うっすらと浮き彫りにされて来る。こんなに悲しい人生を生きる私、それでも、幸せ、と。
「いくじなし」は男として聴いていて辛かった。柴田さんは、今までお付き合いのあった男性で、決断力のない、勇気のない、思い切りの弱い、「いくじなし」の男は、バッサリ切って、「ハイ、次の人」と付き合いを止めて来たそうな。けれど、私は男として言うが、決して、世の男達が、そんな都合よく、思い切りの良い人ばかり揃っているのかな、と正直不思議に思う。恋愛においても、女性より男性が女々しい、生物学的にも女性の優位は証明されている。女性のが長命だ。そんな中で、果たしてしばじゅんさんのお眼鏡に叶う人はこの世にどの位いるのか。
本人の好みがそうなのだから、しょうがないが、結局、そんな欠点を補って余りあるものを身に付けていれば、合格点じゃないのか。各論で不足があっても、総合点で合格、とは行かないのか。
私は、まだまだ、しばじゅんさんも若いな、青いな、とそのラジオを聴いて思った。しかし、ラジオの柴田さんは、かなり面白い。楽しい話題の振り方をする方として、尊敬している。CDとは全然、人格が違う。これは、譬えは適当かは知らぬが、中島みゆきといい勝負だ。
「~拝啓、王子様☆」シリーズも佳境を迎え、今回はミステリータッチ、殺人事件を描き、今迄とは異色の出来栄え。この王子様シリーズをこれからも続ければ「王子様CDベスト」一枚が当然出来上がり、あと、彼女のインストゥルメンタルのオリジナル楽曲集もそのCD制作の一翼を担い得る。出たら私は買うよ。まだまだ話題提供に事欠かない柴田淳さん。
私は彼女の歌作りに於ける壮大な世界観、世界を高みから俯瞰するようなカメラアングルの、壮麗な詩の世界が大好きだ。詩の言葉が上品で綺麗。一種のファンタジーであり、しかし、現実を決して忘れてはいない。リアリティーもあり、研ぎ澄まされた詩の世界、柴田淳さんの(女優壇れいさんに似た、否、より以上に美しい)ビジュアル面での際立った美的なルックス、立派で綺麗で美しいその素晴らしい歌声、全てが彼女の魅力となって、私以外のファンの方々は、皆異口同音にその素晴らしさを語る。天は二物も三物も与える証左だ。
私も御多分に漏れず、一枚一枚と、しばじゅんさんのCDを買い集める旅にまい進中だ。それだけの絶対的な魅力が彼女にはある。しかし、余りメジャーじゃなく、ひっそりと活動している謙虚な柴田さんがまた堪らなくいい。女性にも男性にもコアなファンには人気があるのも頷ける。
柴田淳さんの歌の世界は、美しく、儚く、哀しく、せつなくて、聴いているこちらが不覚にも涙に溢れ濡れてしまう。その綺麗で壮麗壮大な世界観にいつも私は圧倒される。柴田淳さんは本当に強い人、けれど女性としてたおやかで、柔和で、芯のある、菩薩のような人なのかも知れぬ。
どんなに褒め上げ、褒め殺そうとも、微動だにしない柴田さん。意外に、これだけバイタリティ溢れてCDを提供し続けて下さるしばじゅんさんは、心は「諸善男子」(法華経寿量品)のボーイズメンズの、本当は男っぽい人なのかな?その華奢な姿からは一切が謎だが。
閑話休題。このCDは、辛口だが、大人の女性の独白に満ちた、芯の強い、本音の強みがある。私は、限定盤のジャケットは、黒の喪服みたいな感じで、こちらの盤は清新な白の普段着であり、只の私の好みから、この廉価盤通常盤のCDを購入したが、別にどっちでも良かった。音楽CDの中身はおんなじで、まあ、写真ブックレットは限定盤の方がお得でボリューミーで良かったかな。
この貴重なCDを、柴田淳さんの私達への不定期のポートレートとして、大事に、自分の人生の糧として聴き込んで行きたい。私の大好きな季節、秋。今年の秋・冬は、この一枚と共に過ごして行きたいと思う。
柴田淳さんの今回の立派で素晴らしい歌唱・楽曲に触れられて、私は幸せ、だよ。