医師不足、公立病院の閉鎖や縮小など医療基盤の崩壊が進む一方、高齢化の進行などで医療需要が高まる中、開業医が病院に入院を依頼する際、支障をきたすケースが35.5%に上ることが、全国保険医団体連合会(保団連)の「開業医の病診連携に関する実態調査」で明らかになった。救急搬送依頼の受け入れ困難も34.5%に達しており、保団連では、「病診連携の上で、病院の医師不足や病床数不足が困難に拍車を掛けている。行政を含む解決への取り組みが急務だ」と指摘している。
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同調査は、地域医療に不可欠な病診連携の現状や課題を把握するため、保団連に加盟する会員8465人を対象に実施。仙台市でこのほど開かれた保団連の「医療研究集会」で発表された。
開業医が病院に入院を依頼する際、「(入院先が)見つかる」が62.5%だった一方、「見つからない場合もある」27.5%、「見つけるのに苦労する」8.0%の合わせて35.5%が入院に支障をきたしていることが明らかになった。
救急搬送時にも、「(受け入れ先が)見つかる」が64.5%だった半面、「見つからない場合がある」20.8%、「見つけるのに苦労する」13.7%の計34.5%が“困難”を経験していることが分かった。
また、診療所がある市町村で、心筋梗塞や脳梗塞などの重危篤患者や高度先端医療を扱う第三次医療機関が「ない」ところが30.7%に上った。さらに、地域の救急搬送システムについて、開業医の24.3%が「十分とは言えない」と受け止めていることも分かった。
保団連では、「このような実態の背景には、病院経営の悪化や勤務医の過酷な勤務実態がある。これらの改善が医療基盤の整備に不可欠で、国民の命と健康を守るためにも、診療報酬の適正な改正と社会保障重視への国政の転換が求められている」と強調している。