号外08)アンズを育てる

 大同の小学校付属果樹園のアンズは、私の目からみて、ずいぶん丁寧に植えました。直径・深さともに70センチはある大きな穴を掘り、苗をまっすぐに置き、土をかけて水をやり、蒸発を抑えるためにしっかり踏み固めたのです。ところが夏に行ってみると、半分以上が枯れていました。地元の技術者は「干ばつがひどかった」と説明しました。
 植えたときのビデオを日本の専門家にみせると、「これではだめです。粒子の小さな黄土ですから、水をかけて踏んだりすると、土の中の空気が追い出され、根が窒息して枯れます。むしろ砂を加えて通気性を良くしたらいい」。その後、私たちの代表になった立花吉茂さん(花園大学客員教授)の提案です。
 口で説明しても、大同の技術者は納得しません。「ただでさえ水分がないのに、砂なんか入れたら乾燥してすぐに枯れる」と言って怖がるのです。彼らにも参加を求め、比較実験を現場で繰り返しました。
 実験結果に素直だったのは農民です。次回からはちゃんと砂を準備して待っていました。疑いの目で見ていた技術者が、その方法を採用するまでには3年近くかかりました。
 初期の「活着率」は向上しても、困難と失敗は続きます。よく育ち、花が咲いて、初収穫を目前にした6万本のアンズが全滅したこともあります。直接の原因は野兎の食害と虫害ですが、より根本的には、現場の農民の管理能力を超えたプロジェクトを作っても、必ず失敗するということです。
【写真】アンズを植える。植えたあとの管理がたいへんで、初期のプロジェクトには失敗するものも少なくなかった。
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