号外04)大地の上を土が舞う

 黄土高原にある大同市では「一年に一度風が吹く」と言います。風がないのではなくその逆で、春先に吹き始め、翌春まで続く。要するに年中、風が強いのです。特に春がひどい。
 前年の10月以降は雨も雪もなく、大地はカラカラです。春の耕作で砕かれた土が風に煽られて舞い上がります。渦をまきながら迫ってくるのが見えると、あわてて背を向け、目をつぶってしゃがみこみます。口のなかはザラザラ。
 運転手が急ブレーキを踏み、路側に車をとめました。周囲が黄色いもやに包まれ、何も見えません。フロントガラスがサンドペーパーをこすりつけるように「泣き」ます。このタイプの風砂は、今いる場所から土が巻き上げられるもので、感じは強烈ですが実はかわいいもの。
 本格派は別タイプです。晴天なのに日暮れのように暗く、白っぽい太陽が時おり見え隠れします。低空の風はさほどでもない。ゴビ、タクラマカンの砂漠で巻き上げられた土が、偏西風に乗って、上空を東へ移動するのです。通過した後は車の屋根などにうっすらと白い土。日本にも飛んでくる「黄砂」です。
 黄土高原はその土が降り積もってできた大地で、面積は52万平方キロ、日本の国土の1.4倍です。黄土の粒子は100分の2ミリ前後と小さいのですが、厚いところでは200メートルも積もっています。飛び始めたのは200万年近く前ですから、1万年で1メートル、100年で1センチ、1年で0.1ミリ。まさに地球的時間の産物です。
【写真】激しい風砂。一帯が黄色いもやに包まれ、まったくといっていいほど視界がきかなくなる。
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