号外03)ダーダオリーベン

 「ダーダオリーベン、ダーダオリーベン……」と節をつけて歌いながら、数人の男の子が私の後を追っていたそうです。中国語で「打倒日本!」。時折、小石を拾って投げるまねをする。緑化協力を始めた92年の秋、大同の農村でのことですが、私は気づきませんでした。最近になって地元の青年から聞かされたのですが、彼もその悪童の一人だったのかもしれません。
 行く村行く村で「日本軍以来の外国人だ」と言われました。それはそうでしょう、何もない貧しい農村に、外国人が用のあるはずがない。「日本の鬼」と呼ばれたこともあります。植林協力の記念碑に、泥で大きくバツ印、「打倒日本」と書かれたこともあります。
 大同は日中戦争で大きな被害を受けました。中国最大の石炭の街で、それが標的になりました。「蒙疆連合自治政府」といった第2の「満州国」が日本によって計画され、大同もその一部に組み込まれました。長期間にわたって、戦闘が繰り返され、人々は大きな犠牲をしいられたのです。
 戦争は過去のことでも、人びとの記憶は、容易には風化しません。日本にとっては都合が悪く、早く忘れてほしいと思うことでも、ここでは「苦難の末の勝利」であり、現在につながる最大の出来事。親から子へ、孫へと語り継がれる対象です。
 「ゼロからの出発」とよく言います。けれども、私たち(NGO「緑の地球ネットワーク」)の場合は大きなマイナスからのスタートでした。
【写真】とても人なつっこくて、礼儀正しい農村のこどもたち。文章のこどもたちとはべつのグループです。
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